1977年に打ち上げられたNASAの無人宇宙探査機のボイジャー1号は、2024年時点では地球から約240億kmの距離に位置し、最も地球から遠い宇宙探査機として距離を伸ばし続けています。そんなボイジャー1号で2024年10月16日に原因不明のトラブルが発生し、一時は通信が完全に停止したように見えましたが、24日にはNASAのエンジニアチームが通信を再接続できたことを報告しています。

After Pause, NASA’s Voyager 1 Communicating With Mission Team - Voyager

https://blogs.nasa.gov/voyager/2024/10/28/after-pause-nasas-voyager-1-communicating-with-mission-team/



ボイジャー1号はNASAのジェット推進研究所(JPL)のチームがディープスペースネットワークを介して通信を管理しています。ボイジャー1号は地球から約240億kmというはるか遠くに位置しているため、JPLチームがコマンドを送るのに約23時間、コマンドを受け取ったボイジャー1号がエンジニアリングデータを送信してから地球にデータが戻るまでさらに約23時間かかります。

以下は、NASAのボイジャーに関する公式ページで動かしながら全方位から見ることができるボイジャーの3Dモデルです。



2024年10月16日に、JPLチームはボイジャー1号のヒーターの1つをオンにするコマンドを送信しました。その結果、ボイジャー1号には十分な電力があるはずにもかかわらず、ヒーターのコマンドによって障害保護システムが作動したそうです。コマンドの送信からデータの応答まで約2日かかるため、JPLチームがこのトラブルに気付いたのは、10月18日にディープスペースネットワークがボイジャー1号からの信号を検出できなかったときでした。

その後、10月19日にボイジャー1号からの通信は完全に停止したように見えました。JPLチームは、「ボイジャー1号の故障保護システムがさらに2回起動し、これによって地球と通信するための『Xバンド』という送信システムがオフになり、代わりに消費電力の少ない『Sバンド』と呼ばれるサブ送信機に切り替わったのではないか」と推測しました。SバンドはXバンドに比べて弱い信号で、1981年以来通信に使用していません。

結果として、40年以上使われていなかったサブ送信機にアクセスすることで、エンジニアはボイジャー1号からのSバンド信号を見つけることに成功します。コマンドで再度Xバンドに切り替えることも可能ですが、ボイジャー1号で障害保護システムが起動してSバンドに切り替わった原因が、10月22日の時点では特定されていません。そのため、JPLチームは再び障害保護システムが作動するリスクを取る代わりに、Sバンド送信機にコマンドを送ってボイジャー1号との通信を復旧させました。

ボイジャー1号の通信トラブルは過去にも起きています。2023年11月から約5カ月間、ボイジャー1号は解読不可能なデータを地球に送り続けていました。解読不能なデータは主に測定値や探査機の動作状況を報告するデータで、この結果ボイジャー1号が現在どのような状況にあるのかがわからなくなっていましたが、最終的にNASAは「ボイジャー1号の観測データや動作状況をパッケージングする『フライトデータサブシステム(FDS)』の1つに不具合がある」ことを突き止めました。

解読不能なデータを送り続けていたボイジャー1号が5カ月ぶりに解読可能な信号を地球へ送信、現在の動作状況の確認が可能に - GIGAZINE



今回のトラブルを受けてNASAは「ボイジャー1号とボイジャー2号は47年以上飛行しており、恒星間空間で運用されている2機しかない宇宙船です。これらの宇宙船は老朽化しているため、技術的な問題が頻繁に発生し複雑化しており、ミッションエンジニアリングチームにとって新たな課題となっています。ボイジャー1号は無線通信機2つのうち1つをオフにした状態のため、チームは現在、問題の原因を突き止めるために尽力しています」と述べています。