山田孝之が東京国際映画祭初日の“顔”に、軽妙話術で観客と世界の映画関係者沸かす
今年で37回目を迎えた東京国際映画祭が28日、都内で開幕した。オープニング作品「十一人の賊軍」(白石和彌監督、11月1日公開)主演の山田孝之(41)が、軽妙かつ作品の本質を伝える話術で観客と世界の映画関係者を沸かせ、作品のみならず映画祭初日の“顔”となった。
女優デビュー23年の綾瀬はるか(39)と同25年の菊地凛子(43)は、意外にも初参加の同映画祭で、華やかな衣装で鮮烈な1歩を踏み出した。
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奔放ながら的を射たトークが魅力の山田の舌は、世界の映画人を前にキレを増した。オープニングセレモニーで見どころを問われると「大役だな」と笑みを浮かべた。そして「時代劇ですけど、現代に置き換えると、やっている行動、考え方は同じ」と口にした。
「十一人の賊軍」は、1868年(明元)に勃発した戊辰戦争の際、新発田藩(現・新潟県新発田市)で起きた奥羽越列藩同盟(旧幕府軍)への裏切りのエピソードを描く。山田は女房を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害も、とりでを守り抜けば無罪放免の条件で決死隊として戦場に駆り出された罪人を演じた。
オープニングセレモニーで「私は、ただ逃げるだけの役です…さようなら」と言い、会場を沸かせた。世界最速上映でも「私が山田孝之です」と5回も名前を言い、通訳に訳させて笑いを取った。一方で「ただ、妻の元に帰るのが正義という男。悪だというのはあるんだろうけど周りの人を少しでも良い状況にしようとして生きている。今に落とし込んで、重ねて見てもらったら響く」と役どころと作品を端的に伝えた。
国内の映画賞を席巻した13年の主演映画「凶悪」以来、11年ぶりにタッグを組んだ白石和彌監督(49)との勝負作。加えて、罪人とともに戦場に身を置く剣術道場の道場主を演じた、ダブル主演の仲野太賀(31)が、都内で上演中の主演舞台「峠の我が家」出演のためレッドカーペット後、会場を後にした。その中、1人で会場の空気を変えた。
昨年は、同じくオープニング作品の「PERFECT DAYS」が、世界的巨匠のヴィム・ヴェンダース監督と主演の役所広司ら豪華俳優陣で初日を沸かせた。それにも負けない熱を山田が巻き起こし、東京国際映画祭は幕を開けた。【村上幸将】
○…綾瀬は、ガラ・セレクション出品作「ルート29」(森井勇佑監督、11月8日公開)主演として、黒のドレス姿でレッドカーペットに登場。国道29号を進んでいく2人を演じた、大沢一菜(13)を伴い「一緒に旅した一菜ちゃんと監督と一緒に歩けることを、お祭り気分で楽しみたいと思います」と笑みを浮かべた。フェスティバル・ナビゲーターの菊地は、グリーンのシースルーの妖艶なドレス姿で登壇。「初参加で身に余るお仕事。映画を通じ多くの方とつながって行きたい」と抱負を語った。