自民党の総裁選には敗れたが、その人気ぶりは健在。
小泉進次郎氏が現れると、取り囲む警察官やSPも手を焼くほど人が押し寄せる。

「今回の選挙で、自民党には政治とカネの問題で厳しい、そんな風や批判がありますが」、「後ろのデッキからも、本当に皆さんありがとうございました」などと演説した進次郎氏。周囲の歩行者デッキは、さながらオペラハウスの観客席のようだった。

候補者からすれば、これほど心強い応援はないだろう。

その話術に酔った聴衆たちからは、「次の総理大臣になってほしいです」「やっぱり総理です」「将来リーダーで、ぜひぜひ」などの声が聞かれた。

しかし、その期待とは裏腹に、この選挙は自民党に向けられた厳しい目との戦いだ。

進次郎氏は「私は選挙対策委員長という立場で、対象となる議員の12人の非公認、そして対象となった議員全てを比例の名簿から外すという断腸の思いで、重い判断をさせていただきました」と訴える。

そんな中、1時間ほど地元・横須賀に戻り、自分の選挙活動をするという進次郎氏に、舞台裏の撮影を許された取材班は「自民党に吹いてる逆風、どれくらいの風なんですか?」と尋ねた。

この質問に進次郎氏は、「そうですね、私が初めての選挙の時は、野党に転落したあの逆風とは、別の種類の逆風じゃないですか。強さはどちらかと言うと、両方強い。15年前は怒りや不満、そういったものが分かりやすい形の逆風でしたよね。今回は、より静かな怒り、そういったものが、すごく見えない形で流れていて、ふたを開けてみると、厳しい結果になりかねない」と答えていた。

2009年、進次郎氏が初当選を果たした衆院選では、政治不信の高まりから自民党は大敗…。野党に転落した。
あの時と、逆風の強さは同じだと言うが…。

進次郎氏は、「完全に払拭するのは時間がかかると思います。やはり信頼回復というのは、それぐらい厳しいですから。ただ、自民党自らが身内に対して厳しい対応をする。そういった姿を持ってこの選挙に向かわなければ、信頼回復のきっかけ糸口すらつかめない」と語る。

まさに、逆風吹きすさぶ中、選挙戦がスタート。
しかし、ひとたび聴衆の前に立てば、舞台裏で見せた厳しい表情とは一転…。

有権者から「小泉さーん、男前!」との声が飛び、進次郎氏は「これが大阪ですね、本当にありがとうございます。終わったらのどあめ、アメちゃんくださいね」と話しかけていた。

さらに、若者への選挙アピールはSNS。
「これ食べやすい。栄養補給はピンククラウンのクラウンモナカ。さすがは豊田(市)です」など、行く先々でいただく、ご当地おやつを発信している。

こうして自民党の若き改革者は、勝利の方程式を模索する。

一方、総裁のイスにあと一歩まで迫った高市早苗氏にも全国から応援依頼が殺到。
高市氏は「ご依頼が130カ所を超えてしまいましたが、全ては伺えませんので、移動時間もありまして。ギリギリあと一押しという方々、決められた所をしっかりと回ってまいります」と述べた。

街宣車から「レッツゴー!高市早苗でございます」と声掛けをする高市氏。さすが、「腐っても鯛」。その応援先も一筋縄ではなかった。

高市氏がまず遊説1カ所目に訪ねたのは、564万円の裏金問題で自民党から非公認とされた細田健一候補だった。
「深く深く反省をし、二度と同じことを起こさない」と呼びかけた細田健一候補。

演説で高市氏は「幸い、私は党の役職も無役でございますので、公認が得られなかったというお話ではございますけれども、私にとっては大切な同志でございます」と訴えた。

さらにこの後も、同じく544万円の裏金で比例復活の道を絶たれた高鳥修一候補の応援へ。
「私には比例復活がございません」と訴えた高鳥修一候補。

一体ナゼ?と思えば、この2人は総裁選で推薦人になってくれたいわば、大恩人。

高市氏は「政治家にとって推薦人として名前を出すっていうのは、負けたらもう完全に干される、なんの肩書きももらえない」と語った。

高市氏の応援演説に細田候補は「非公認という立場にも関わらず、快く駆けつけていただいたので、私にとってはありがたい限りです」と感謝し、高鳥候補も「感激ですね、やっぱりね。政治の世界というのは、最後は義理人情だと私は思うんですね。仲間を大切にしない政治家はダメ」と話す。

さらに、こうした“応援行脚”は続き、萩生田光一候補(裏金額2728万円)、小田原きよし候補(裏金額1240万円)、裏金額ナンバー1、三ッ林裕巳候補(裏金額2954万円)など、応援に入った候補の裏金総額は、分かっているだけで、実に1億958万円。

こうした異例の選挙戦、非公認候補の応援について選対委員長の進次郎氏はどう考えているのか?

直撃に「今回は非公認の方は党執行部、そして閣僚、これは応援には入らないという統一的な対応が出てるので、その対応の中で」「(Q.逆風はおさまってますか、変わりませんか?)最後まで気を引き締めて頑張ります」と語ると、進次郎氏は次の応援演説へ消えていった。