大同生命SVリーグ男子開幕戦のサントリー対大阪B、ファンが見守る中、アタックを打つサントリーの高橋藍=11日

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 世界最高峰を目指すバレーボール新リーグ「大同生命SVリーグ」が、10月11日に大きな注目を集めて開幕した。サントリー・高橋藍(23)や大阪B・西田有志(24)、山内晶大(30)らパリ五輪で活躍した選手らは、開幕前からメディアでの広報活動に奔走。彼らがバレー人生をかけて真剣に考えるリーグのビジョンに迫った。

 開幕カードは日本中の注目を集めて行われた。11日に行われたサントリー−大阪B(東京体育館)は6513人を動員。サントリー主催となった14日の同カード(エディオンアリーナ大阪)は入場券が発売50分で完売し、1973年のチーム創立以来最多の5020人を動員した。パリ五輪後、長いオフを取ることもなくSVリーグの宣伝活動にシフトした代表組の努力が実ったと言えそうだ。

 高橋はイタリアで実績を残しながらも日本に戻る決断をした理由をこう説明する。「自分が日本のリーグを盛り上げていくことが、今後イタリアリーグを超えるリーグを作っていくために重要だと感じた。一番は自分の成長のために帰ってきたが、そういう(活性化の)部分をやっていく思いもあった」。マスコミやSNSでアピールする役割を買って出ると、開幕前にサントリーのファンクラブ会員数が昨年比10倍以上となるなど“藍効果”はてきめんだった。

 彼らが本気で考えるのはSVリーグを日本のプロスポーツとして定着させること。19日の大阪B−広島T(パナソニックアリーナ)も2796人が入場した。主将の山内は「新しく興味を持ってくれた方もたくさん来てくれた」としながらも「席が空いていたので、もっと来てくれるとうれしい」と、入場券完売とされながらも空席があったことを気にかけた。

 西田も「空いている席は選手も気になるので、チケット販売のやり方も改善した方がいい。僕はSNSで何度も言っているが、売り切れているならそういう見せ方をしないといけない。多くの方が見に来たいと思ってくれるリーグなので、うまくやっていかないと」と率直な考えを口にした。

 シビアな意見はリーグを盛り上げたいという強い意思の表れ。人気を一過性で終わらせたくない。そこには19年W杯や21年東京五輪の盛り上がりをVリーグで維持できなかった悔しさがある。SVリーグは外国籍2人、アジア枠1人と海外選手の出場枠が増え、世界最高峰のプレーが売りでもある。「始まったばかりでトライアンドエラーは続く。うちのホームが一番盛り上がる会場であり続けるよう努力しないと」と西田は言う。

 日本のプロスポーツでは野球のNPBやサッカーのJリーグが歴史を築き、熱烈なファンやサポーターを開拓してきた。SVリーグが今後、男女ともに安定した観客動員を維持するには企画、会場の整備などソフト・ハード両面の取り組みが不可欠だろう。(デイリースポーツ・中野裕美子)

 ◆SVリーグ 将来の完全プロ化を念頭に結成された新リーグで、2030年までに世界最高峰のリーグを目指している。2024−25年シーズンは男子10クラブ、女子14クラブが所属。Vリーグは外国籍1人、アジア枠1人の制限があったが、SVリーグでは外国籍2人、アジア枠1人と拡大。同時にコートに立つことも可能で、よりハイレベルな試合を繰り広げることができる。各クラブがホームアンドアウェー方式で計44試合(うち22試合がホーム)を行い、上位6クラブがチャンピオンシップに進出する。