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 女優の北川景子(38)主演で山崎豊子氏の小説「花のれん」がドラマ化される。テレビ朝日で来年放送。吉本興業の創業者・吉本せいをモデルにした作品で、北川は「女手一つで寄席を大きくしていった商売人としての顔と、妻としての顔、また母親としての顔、女性としての生きざま、いいあんばいで描かれています。涙あり笑いありのあっという間の2時間になると思います」とアピールした。

 山崎氏の生誕100周年記念で、直木賞を受賞した初期の代表作を30年ぶりに映像化する。北川は「大地の子」や「二つの祖国」など山崎作品の大ファンで、中学時代には実家にある文庫本を夢中になって読んだという。山崎作品は初挑戦で「まさか自分が山崎先生の作品に出演できるなんて…と驚きましたし、とてもうれしかったです」と心躍らせた。

 明治から昭和という激動の時代に、日本のエンターテインメントの礎を築いた女性の一代記。主人公は場末の寄せ小屋を買い、夫を亡くしながらも持ち前の根性と商才で小屋を拡大し、希代の女性興行師となっていく。

 物語では21歳から晩年まで40年間を演じる。撮影は怒濤(どとう)の日々だという。「朝夕で一気に年齢を重ねる状況があるので、毎日が“激動”です。1シーンごと体当たりで挑むのが精いっぱいの日々ですが、それだけ多加(役名)の人生が激動かつ濃密だったんだなと感じています」と全身全霊で作品に取り組んでいる。

 主人公が話すのは上方文化発祥の地、大阪・船場の言葉。神戸出身だが「私たちが知る大阪弁でもなく、京都の言葉とも違って、初めて聞くイントネーションもありました。船場の言葉は大切な要素。できるだけ丁寧にやりたいと思って気をつけています」。言葉を忠実に表現したいと方言指導の先生が吹き込んだ船場言葉の音源を完璧に覚え、現場でも先生に何度も確認しながら取り組んだ。

 原作では初期の吉本を支えた横山エンタツと花菱アチャコ(エンタツ・アチャコ)や、桂春団治ら芸人も描かれる。山崎作品ゆかりの俳優陣のほか、お笑い界からも個性豊かなキャストが集結するという。誰がどの役を演じるかも見どころになりそうだ。

 ≪せい役、過去に宮本信子、葵わかなら≫吉本せいがモデルの主人公、河島多加はこれまで何度も名女優が演じてきた。58年には菊田一夫が演出の舞台で三益愛子。翌59年の映画では淡島千景さんが演じた。95年にドラマ化されたときの多加役は宮本信子(79)だった。17〜18年のNHK連続テレビ小説「わろてんか」もせいをモデルにしており、葵わかな(26)が演じた。23〜24年の同「ブギウギ」にもせいをモチーフとする興行会社の女性社長が登場。こちらは小雪(47)が演じている。

 ≪「白い巨塔」など数多くドラマ化≫山崎氏の小説は多くがドラマ化されている。大学病院の権力闘争と腐敗に斬り込んだ「白い巨塔」は78年に田宮二郎、03年に唐沢寿明(61)、19年に岡田准一(43)が主演。大富豪一族の富と野望がテーマの「華麗なる一族」は07年に木村拓哉(51)が主演した。戦後の商社を舞台にした「不毛地帯」は79年、09年にドラマ化。09年版では唐沢が主演。映画化も多数あり、航空会社の事故と人間模様を扱った「沈まぬ太陽」は09年に渡辺謙(65)主演で、3時間を超える大作として上映された。