2024年10月19日、第101回箱根駅伝予選会、日本人トップでトラックを快走する中央学院大・吉田礼志 写真/スポニチ/アフロ


(スポーツライター:酒井 政人)

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中央学大・吉田礼志が日本人トップ

 10月19日に行われた第101回箱根駅伝予選会は酷暑のレースになった。スタート時の天候は晴れ、気温23.2度。強い日差しが選手たちの体力を削っていく。

 そのなかで“強さ”を見せたのが、中央学大の絶対エース・吉田礼志(4年)だ。

「暑かったので留学生の入りの1kmを見て、ついていくのか決めました」と今回は留学生へのチャレンジは控えたが、ひとりで攻め込んだ。5kmを14分46秒で通過すると、後続の大集団に20秒以上の差をつける。

 吉田は10kmを29分36秒で通過。後半はペースダウンするも、最後まで日本人トップを死守して、1時間03分29秒の10位でゴールに飛び込んだ。中央学大は近田陽路(3年)が1時間04分08秒の18位で続く。チーム10番目の選手も立大に次ぐ143位(1時間06分30秒)で走破して、総合5位(10時間56分01秒)で通過を決めた。

 日本人トップに輝いた吉田だが、「全体トップを取れなかった悔しさがあるので、最低限ですね」と本人は納得していない。それでも川崎勇二監督は、「留学生に無理につかなかったのはいい判断だったんじゃないですか。吉田は暑さと単独走が苦手なので、そういう意味ではよく粘ったと思います」とエースを評価した。

 前回の箱根駅伝は1区が20位と出遅れたこともあり、吉田は2区で区間14位と本領を発揮できなかった。それだけに最後の箱根で“大勝負”をかけるつもりだ。

 将来はマラソンで世界を狙う中央学大のエースは、「自分は2区を走るつもりでいるので区間賞を目指していきたい」と力強かった。

前回18位の専大が「サプライズ」の2位

ゴール手前を力走する専大・新井友裕 写真/日刊スポーツ/アフロ


 トップ通過は立大で合計タイムは10時間52分35秒。酷暑のレースで全体的にタイムは伸びなかったが、今回の悪条件を味方につけたのが専大だ。

 スタートラインに並ぶ直前まで選手たちは氷をつかってカラダを冷やした。

「首から下を時間ギリギリまで冷やしました。同じことをやっているチームもありますが、うちが一番、氷の量が多かったんじゃないですか」(長谷川淳監督)

 氷でクーリングした成果もあり、初ハーフとなったダンカン・マイナ(1年)が3位(1時間01分47秒)、新井友裕(3年)が21位(1時間04分22秒)に食い込むと、10番目の選手も170位(1時間06分55秒)でフィニッシュ。前回18位、参加資格の上位10人10000m平均タイム15位のチームが総合2位(10時間53分39秒)で大混戦を突破した。

「目標は7位通過だったのでいいサプライズになりました」と長谷川監督。「暑さで波乱が起きる」と読んで、「後半勝負」を徹底させたのも大きかった。

 3人はフリーで残り9人が集団走を実施した。設定ペースは5km「15分20秒」だったが、選手の判断で少し落として、グループは5kmを15分33秒で通過。その後もさほどペースを落とすことなく突き進んだ。10km通過時9位から、15km通過時で5位、最後は2位まで浮上する。チーム戦略の“勝利”だったといえるだろう。

「本戦は前半から行くしかありません。もっと力をつけて、力のある選手から並べていきたい」と長谷川監督。専大は2年ぶりとなる箱根駅伝でも“サプライズ”を演出するつもりだ。

1年生5人を起用した中大が6位通過

 吉居駿恭(3年)、溜池一太(3年)、柴田大地(2年)というエース格3人が登録外となった中大も強烈なインパクトを残した。3年ぶりの予選会となったが、今大会では最多タイとなる1年生5人を起用。フレッシュなメンバーで臨みながら、合計10時間56分03秒で6位通過を果たしたのだ。

 白川陽大(3年)が17位(1時間03分58秒)、岡田開成(1年)が24位(1時間04分28秒)に入ると、阿部陽樹(4年)、原田望睦(1年)、佐藤大介(1年)も36位、40位、47位と続いた。想定から遅れる選手もいたとはいえ、ルーキー5人を起用しながら、大きく崩れることはなかった。

「暑かったので、タイムは全く指示していないです。とにかく順位だ、と。白川と岡田は30番以内、真ん中のグループ5人はできたら50番以内。最終ラインは100番前後でと考えていました。そのなかで1年生は学内10位以内に4人が入り、阿部の復調も印象的でした。箱根に向けて視界は良好かなと思います」(藤原正和駅伝監督)

 予選会を難なく突破した名門・中大だが、気になるのは予選会を欠場したエース格3人の状況だ。

「第100回大会で区間賞(7区)を獲得している選手に予選会を走らせるのはちょっと違うんじゃないのか? という話をしていましたので、駿恭を起用する気持ちはありませんでした。溜池と柴田は故障してしまった部分があったので、本戦ではふたりに奮起してほしいなと思っています」(藤原監督)

 他に日本インカレ3000m障害2位の浦田優斗(4年)も予選会は登録外。今季5000mと10000mで自己ベスト(13分44秒96、28分33秒76)を更新している本間颯(2年)はエントリーされたが、あえて起用を見送っている。これは11月3日の全日本大学駅伝を見据えての戦略だった。

「浦田はハーフ向きの選手ではないですし、本間もどちらかという全日本に向けて作ってきた感じです。全日本は今日のダメージもありますが、予選会を走っていない浦田、本間、駿恭を軸に面白いレースができるんじゃないかなと思っています」

 全日本で「5位以内」、箱根で「3位以内」を目指す中大。本当の戦いはこれからだ。

筆者:酒井 政人