『民王R』©︎テレビ朝日

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 あの“入れ替わり”ドラマの令和版『民王R』(テレビ朝日系)第1話が10月22日に放送される。

参考:遠藤憲一、誰かと入れ替わるなら“あのちゃん” 急逝した西田敏行さんとの思い出もポツリ

 もちろん元祖は、2015年に放送され、遠藤憲一と菅田将暉がW主演を務めた痛快政治エンターテインメント『民王』(テレビ朝日系)だ。総理大臣の父・武藤泰山(遠藤憲一)と息子・翔(菅田将暉)という正反対の親子の心と体が入れ替わってしまうという設定は非常に見応えがあった。

 『民王R』では、泰山に再び総理の打診が入ると同時に、またしても“入れ替わり”が起こる。さらに今回の入れ替わり先は壮大で全国民、しかも毎話ランダムに入れ替わるようで、泰山役の遠藤が老若男女あらゆる人物になり切るお芝居が楽しめそうだ。

 “入れ替わりもの”の面白みは、入れ替わった後も続いていく日常を何とかこなそうと入れ替わり先の人間になり切ろうと四苦八苦する姿だろう。もちろん無理が出てきたり、意外にも入れ替わり先で誤魔化しきれず素が出たのが功を奏したり。『民王』でも政治討論番組で、翔が語った若者の貧困についての背景や現状についての言葉が国民に響き、支持率回復に繋がっていた。

 『天国と地獄 ~サイコな2人~』(TBS系)でも刑事・彩子(綾瀬はるか)とサイコパス殺人鬼とされている経営者の日高(高橋一生)の“入れ替わり”が見られた。男女、かつ追う側の刑事と追われる側の犯人が入れ替わるというかなり難易度の高い設定だったが、綾瀬と高橋が見事に中身が入れ替わっていることを視覚的にさりげなく見せてくれた。

 “入れ替わりもの”ならではの醍醐味は、入れ替わった者同士がいつの間にか互いに強い信頼を寄せ合い、最も近い味方になっていくところにもある。入れ替わってその人の生活を生きてみたことで、周囲の人間から掛けられる言葉や接し方に触れ、本人が周りと築いてきた信頼や人望を直に体感し、誰よりも身近なサポーターのような関係になっていくのがまた趣深い。日高がひた隠しにしてきた秘密や孤独に、彩子だからこそ気づけたし触れられていた。

 男女入れ替わりは、『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系/以下『あのキス』)も同じだ。しかし、『あのキス』では入れ替わり先は見知らぬ人同士で、人気漫画家の唯月巴(麻生久美子)とさまざまな問題を抱え生きる気力をなくしていた清掃員・田中マサオ(井浦新)の魂が飛行機事故をきっかけに入れ替わる。ただ、巴のオープンマインドさゆえに入れ替わりを隠すのではなく、周囲の大切な人たちには早々に打ち明け、協力を仰いでいく。全く接点のなかった人たちが“入れ替わり”をきっかけに繋がり、それぞれにとっての大事な人の魂が元々の体には戻らないことを嘆きつつも、新しい形の姿から本人の面影を見つけようとする。形は変わってもその中に光る“変わらぬもの”を何とかなぞろうとする周囲の反応に涙腺を刺激された。

 さて、本作でも何ら関わりのないどこの誰かわからぬ国民と総理が入れ替わる。そうなると周囲の人間はもはやサポートのしようがないと思うが、令和版としてどんな国民のどんな声が届くのか楽しみだ。(文=佳香(かこ))