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紛れもない走りのホンダ・イズムの伝承者

ホンダのスポーティハッチバック『シビック』がマイナーチェンジを受け、2024年9月12日より販売開始された。最大の目玉は、東京オートサロンで初披露された新グレード、『RS』の追加だ。既に受注の7割を占めるという人気車となったRSを中心に、改良型のレポートをお届けする。

【画像】11代目"爽快"ホンダ・シビック 全46枚

2021年に販売を開始した11代目となる現行型は、心地良い走りに拘った『爽快シビック』とし、ホンダ・ファンの心を狙い撃ちするモデルとした。世間の話題は、フラグシップモデル『タイプR』ばかりに集中してしまったが、スポーティタイヤを履きこなす走りのハイブリッド『e:HEV』や、MTを操る楽しさも提供する1.5Lガソリンターボ車もなかなかのもので、紛れもない走りのホンダ・イズムの伝承者であった。


マイチェンを受けた11代目ホンダ・シビックに追加された新グレード『RS』。    佐藤亮太

しかしMT車に関しては、ハイブリッドよりもマイルドなコーナリングフィールや、走行シーンによってはCVTよりも繊細さを感じるエンジン特性など、ちょっと物足りなさを感じていたのも本音だ。そんな私の心を見透かしたかのように、初投入された新グレードがRSである。

RSは、従来型から受け継ぐガソリン車の標準グレードをCVT専用とすることで、MTシフトで操る楽しさを重視したモデルだ。RS専用装備について解説すると、外観上の違いは、スポーティかつクールさを演出する各部のブラック化に加え、前後にRSバッチを装着し差別化。

インテリアは他モデルと基本的には共通だが、ドアトリムやシート、ステアリングなどに赤のステッチが追加されるほか、ダッシュボード上にも赤のアクセントを追加する。さらに乗車時には、メーターパネル内にRS専用アニメーションが映し出され、ドライバーの気分を盛り上げてくれる。

秘密兵器はタイプRにも採用されるレブマチックシステム

もちろんRSの本質は、そのメカニズムに宿る。1.5Lターボエンジン自体に変更はないものの、慣性モーメントを30%低減したシングルマス軽量フライホイールを採用し、エンジンレスポンスを向上。他にも少しハードにセッティングされたサスペンション、より軽快で切れ味の増した電動パワーステアリング、フロントディスクを1インチアップの16インチ化した強化ブレーキシステムなど、ハード面から鍛え直している。

さらに従来型MT車では非採用だった、ドライブモードセレクトも新設。そしてMT車の秘密兵器が、タイプRにも採用される『レブマチックシステム』だ。これは、減速操作に合わせてエンジン回転数を自動で制御し、スムーズなマニュアル運転操作をサポートするもの。つまり、イージードライブを可能としたMT車なのだ。


シビックRSのインテリア。ドアトリムやシート、ステアリングなどに赤のステッチが追加される。    佐藤亮太

シビック自体のマイチェンにおける改良点としては、フロントバンパーが変更され、タイプR風味のより精悍な顔付きへとフェイスリフト。装備面では、最新ホンダ車で採用が進んでいるグーグル搭載のインフォテイメントシステムを全車に標準化したほか、先進の運転支援システム『ホンダ・センシング』も機能が向上。

グレード構成ではハイブリッド『e:HEV』を2グレード構成とし、ガソリン車がRSを除いてCVTのみとなったことが挙げられる。ちなみにe:HEVのハード面自体の変更はないとされる。

街角でもしっかりRSの本質が味わえる

今回の試乗では、『RS』と『EX』のガソリン車の比較となった。

RSと聞くとスパルタンなクルマを連想するが、シビックならば、そんな緊張感とは無縁だ。クラッチペダルが軽いため、誰でも乗りやすく、ストップ&ゴーも容易だが、何よりも素晴らしい点は、街角でもしっかりRSの本質が味わえることだ。


白いボディカラーだと、タイプRにも見えるシビックRS。リアウイングを追加したくなる。    佐藤亮太

シフトダウン時はレブマチックがエンジン回転数を合わせてくれるので、スムーズなギアチェンジが行え、減速Gの発生も穏やか。エンジンの軽快さとあいまって、シフトアップでも回転落ちが素早くなったことで、スムーズな加速動作に繋がっている。悪戯心でギア飛ばしの横着シフトをしても、しっかりと応えてくれた。

シフトとペダルの操作でクルマの動きは作りやすいのに、誰が運転してもギクシャクした走りになりにくい。家族でMT車を共有する人には、待ちに待った仕様だろう。またエンジンの制御とレスポンスが変わったことで、従来型MTで感じた低回転時のトルクの薄さも消えていた。ただし、スポーツモードではよりアクセルレスポンスが良くなるが、劇的な違いはないため、これが標準仕様でも良いと感じた。

爽快な走りの味をより強く感じさせるEX

やや硬質となったフットワークは、軽快な動きとドライバーとの一体感を高めてくれる。聞けば、RSのサスペンションには、専用チューンとなるメカニカルダンパーを除いて、タイプRのパーツが多く流用されているという。つまりこれは、気軽に乗れる『ニア・タイプR』なのだ。

ただ、静粛性を重視した結果、エンジンサウンドが車内では小さめに感じたのと、シートも全車共通なので、もう少しRSはホールド性があってもいいように思えた。いずれも欲を言えばというレベルだが、今後、特別仕様車やパッケージオプションで、よりスポーツカーらしい演出や機能を高めたものがでてくることを期待したい。


取材車のガソリンモデル、EX(左)とRS(右)。もちろんハイブリッドもラインナップする。    佐藤亮太

よりオールマイティな存在となるガソリンターボのCVT車『EX』にも乗ったが、こちらは刺激こそ薄めだが、現行型が掲げた爽快な走りの味をより強く感じた。しっかりと路面の変化を感じさせながらも、不快な衝撃とは無縁で、腰のあるシートが体を優しく包んでくれる感覚だ。

そして1.5Lターボエンジンも、自然吸気のような滑らかな振る舞いを見せてくれた。クルマと過ごす時間が好きな人には、むしろこちらの方がおススメできる。まさに爽快シビックを象徴するモデルといえよう。