周りの男性社員は有給2日で”育休風”…妻・バービーの言葉で考え直した「男性育休」

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2024年8月に、第一子の誕生をSNSで報告したフォーリンラブ・バービーさんと夫のつーたんさん。初めての子育てに奮闘中のお二人ですが、会社員のつーたんさんは現在育児休業中。今月の連載「#nofilter」(毎月14日公開予定)では、育休取得前に感じていた不安や取得するまでの経緯などを率直に綴っていただきました。

周りの男性社員は有給休暇を“育休風”に取得

教育関係の会社員をしている僕は、今、育児休業中である。3ヵ月半の育休を取得しており、早いものでもう折り返しだ。実際に育休を取得してみると、3ヵ月半という期間は決して長いとは思わないが、僕の職場では、男性社員の中で最長だったようだ。

【「令和5年度雇用均等基本調査」結果(厚生労働省)】によると、日本全体で見ると、 令和5年度の男性育児休業取得率は 30.1%、休業期間は3ヵ月未満が86.1%、3ヵ月以上取得した男性は全体の1割程度だそう。社会人になってから初めて経験する長期休業に、そわそわする暇もなく毎日を忙しく過ごしている。

休みに入る前に「男が3ヵ月以上も育休を取ってもすることはないだろ?」なんて悪気ない、むしろ僕を心配するような声が知人から聞こえてきたので、どういった経緯で育休を取ることに決めたのか。また、その裏側にあった感情について当事者の目線で書き記しておきたい。

妊活はおろか結婚するずっと前、同棲し始めた頃から、妻とは僕の育休取得に関して話し合いを続けてきた。僕ら夫婦は、業種や働き方こそ違うが2人ともフルタイムで働いている。そもそも育休を取るのか、取る場合、期間はどうするのか。収入についても気になるところだ。

今となっては当たり前に男性が育休を取得した話を聞くようにもなってきたが、数年前の当時、僕の職場では男性社員が育休を取得した話を耳にしたことがなかった。周囲の男性社員は、育休を取得することなく、有給休暇を2〜3日、育休風に取得することが多かったように思う。

同僚に申し訳ない、キャリアへの影響に不安も…

僕は妻と話し合いをする中で、いざ育休を取るイメージをした時に「同僚への皺寄せが申し訳ない」「キャリアに影響するのではないか」などの不安を抱いていた。

僕は元々上昇志向が強いタイプではない。昇進や昇格のプライオリティは高くない僕でさえ、そういった不安を抱くのだから、キャリアプランを持っている人からしたらその不安は計り知れないだろう。それに、毎日、忙しそうに働く同僚の姿を見ていたら、一層の負荷をかけてしまうことを躊躇してしまうのは自然なことかもしれない。

そのため、僕も育児に全力で取り組みたいと思う一方で、当初はまとまった期間の育休取得についてはあまり前向きにはなれなかった。取っても2週間から1ヵ月程度だろうと考えていたのだ。妻にもそう伝えていた。そして、ある日……。

「つーたん、子育てを甘く見過ぎてると思う」

妻の声色から怒りの感情が漏れ出ていたのを覚えている。

「もし妊娠したら私は、出産前も思うように身体が動かなくて、仕事をおのずとセーブしなきゃならないかもしれない。産後だってすぐに仕事復帰できる身体じゃないと思う。そんな中、つーたんは変わらずに仕事ができて、休みの日だけ育児に時間を充てるのはフェアじゃないと思ってしまう

「わかってはいるけど……前例がないから……」

僕は、恥ずかしながら煮え切らない反応ばかりを繰り返してしまった。しかし、その言葉がきっかけとなり、改めて育休取得について考え始めた。

僕が女性で、妻の立場だったら……?

そして、そんな時にふと考えた。

「僕が女性で産む立場だったら、かーたんの立場だったら……」

お腹が大きくなってきたら移動することさえも大変で不安もある。そして産後はすぐに仕事復帰したいと思っても体調面などの不安もあってそう簡単に叶わないだろう。そんな自分のことすらおぼつかない状況で赤ちゃんの世話ができるのだろうか……さまざまな不安が次から次へと湧き上がる。

そんな中で、唯一頼れるのは一番近くにいるパートナーだ。遠慮なく思いっきり頼りたい。せめて子どもとの生活が馴染むまで、パートナーが育児に専念してくれるという約束がなければ、安心して子どもを産めないかもしれない。そう考えた。

働く自分も大切だが、たったふたりの夫婦。パートナーへの皺寄せに目を瞑ることはできない。夫婦ごとに置かれている状況が異なるので、本来マジョリティもマイノリティもないはずだ。周囲の男性が育休を取っていないから、自分も取らないと流されることは、人生における大切な選択を放棄することと同じであると気がついた。僕たち夫婦に必要な選択をすべきなんだ。

育児のサポートを自分たちの親にお願いするパターンもあるだろう。だけど住まいが離れていることなどから、僕らはそれぞれの両親に頼ることは難しい。

また、妻も長期で仕事を休むことは望んでいないし、現実的ではない。そして何より彼女は仕事が大好きだし、自分で築き上げてきたキャリアを止めることへの不安は僕より何倍も大きいはずだ。そう考えて、入籍前ではあったが、いつか子どもを授かったらそのできる限りの期間、育休をきちんと取りたいと考えが変わっていた。

同僚は温かく僕を送り出してくれた

そしてこの度、仕事や職場のこと、収入のことなどさまざま考慮しながら妻と相談をして、僕は育休を3ヵ月半取得することに決めた。

職場には、妻が安定期に入る前の早いタイミングで育休取得について相談をした。育休取得はいくら権利とはいえ、やはり周囲の同僚に負荷をかけてしまうことは事実。担当していた業務については、複数名の同僚に業務を分配して引き継ぐ必要があったため、できる限り余裕をもって引き継げるように調整させてもらった。

3ヵ月半の育休を申し出て、引き継ぐ業務も少なくはないため、苦い反応をされたらどうしようかと後ろめたい気持ちもあったのだが、周囲の同僚はとても温かく僕を送り出してくれた。「何かあれば期間延長して」という言葉もかけてもらい、安堵したことを覚えている。本当に嬉しかった。

僕が所属している部署は女性社員が多く、幸い育児に対して理解のある社員ばかりだった。また、男性社員についても明らかに以前とは男性育休に対する心象が変わっているように見受けられた。

この2〜3年で数名ではあるが、男性社員が育休を取得したことに加えて、お付き合いのある他社の男性社員の方が育休取得のため、引き継ぎの挨拶に来られることも度々あった。こうしたちょっとした社会全体の変化が、少しずつ身近に垣間見えるようになったことも影響していると思う。この育休の申し出を経て、僕の愛社精神が増幅したような気さえした。

また、妻の妊娠中、役所などへのさまざまな手続きが煩雑で度々苦労していた。育休の手続きについても、相当大変なんだろうと身構えていたのだが……なんと! 所要時間10分で完了してしまったのだ。驚くほどスムーズだった。

もちろん、会社ごとに提出しなければならない書類は異なると思うが、僕の会社では人事部にいくつかの書類を提出するだけで完了。社会保険料の免除手続きや、各種手当の申請についてもまるっと担ってもらえたのだ。これは本当に助かったし、想像していたより何倍もスムーズだった。

「育休を取る時は、色々と手続きが面倒なんでしょ?」と言っていた先輩には、どこかの折で誤解を解いておきたいと思う。

育児のスタートを夫婦一緒に迎えられた

先日、育休に入ってから2回目の給料日を迎えた。ネットバンキングにログインして、口座残高を確認した。ついに、基本給の入金はなく、育休前の残業手当のみが入金されていた。残高に大きな変動が起こらない給料日は初めてのことだ。

「今月のクレジットカードの引き落としは赤字だな……」

そんなことを思いながら、急いで「育児休業給付金 入金時期」とスマホで検索した。育児休業給付金とは、育児休業を開始してから180日目までは、最大で休業開始前の賃金の67%が国から支払われるもの。入金時期は、育休開始から3ヵ月後が平均のようだ。

それまでは僅かな預金を心おきなく切り崩していこうと思う。このタイミングで使わずに、いつ使う。今日もAmazonで粉ミルク、ZOZOTOWNでベビー服を買う。妻とベビー服の好みが真逆だが、気にしないことに決めた。

育休期間は残り1ヵ月ほど残っているが、取得して本当に良かったと思っている。朝と夜で顔つきが変わるほど、毎日みるみる成長していく新生児期に、ずっと一緒にいられたことは僕にとって一生の宝物になった。

妻と子どもと過ごす時間に幸せを感じ、想像では補えない育児の尊さと大変さを体感している。育児のスタートを妻と二人で一緒に迎えられたことは、僕ら夫婦にとって本当に良かった。もし、育休を取っていなかったら、家族の幸せな瞬間をいくつも見過ごしていただろう。

ワンオペ育児は大変という声をよく耳にするが、本当にその通り。赤ちゃんのお世話を朝から晩まで全てひとりでやるのは、あまりに過酷すぎる。妻からの「子育てを甘く見過ぎてると思う」という言葉が刺さりまくっている。

そして僕らはお互いの仕事復帰後の生活についても相談しはじめている。僕たちらしく、共に働きながら2人で協力して子育てをするためにはどうすればいいか?育休期間は子育てと仕事を両立するために話し合う大切な準備期間でもあるようにも思う。

育休期間中に感じたことや気づきについてはまた改めて書き記したい。

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