石破政権は来年の夏までもたない…そして「意外な男」がまさかの再登板へ!

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総裁選では「解散は予算委員会を開いてから」と主張していたにもかかわらず、突如として「10月27日に総選挙を行いたい」と宣言し、世間を驚かせた石破総理。さらに裏金議員を「原則公認」とする報道が出る。

ところが、直後に裏金議員の一部を公認せず、公認する場合も比例代表との重複立候補を認めない方針を打ち出した。いったい何が起きているのか?

共同通信社特別編集委員の久江雅彦氏と元NHK政治部記者の岩田明子氏が官邸の裏側を語り尽くす!

前編記事『解散日も人事もすべて言いなり…!“仲間がいない”石破が頼った、意外な「長老議員」の名前』より続く。

長く干されていたがゆえのブランク

−人事もそうですが、政策についても石破さんの思うようにはいっていないように見受けられます。例えば、所信表明演説では持論としてきた日米地位協定の見直しやアジア版NATOへの言及はありませんでした。

岩田:その2つはアメリカが呑めないでしょう。無理だと分かってちゃんと落とした。石破さんもリアリストになったんじゃないですか。

久江:アジア版NATOは憲法改正してからじゃないとできませんからね。そもそもNATO(北大西洋条約機構)は、冷戦時代に東西陣営の間に「鉄のカーテン」があって、欧米諸国にとってソビエト連邦という共通の敵がいたから成り立っていた。その構図をそのまま現在のアジアに適用することはできません。

石破さんは長く非主流派にいたがゆえに、最前線に立っていなかった。国防部会や安保調査会などの平場では、裏の話は出てこない。本当に重要な話は口頭ベースでやりとりしています。石破さんにそうした情報が入っていなかったことも政府の立場とのズレを生じさせた一因かもしれません。

岩田:長く干されていたから、ブランクがあるということですね。石破カラーは生活に密着した政策で見せていけばいい。

久江:おっしゃるとおりで、石破さんも防災省設立に向けて、まずは内閣府に防災庁を作って、全国に避難所を作っていくとか、身近な政策をどんどん強く打ち出していけばいいと思います。

高市やコバホークの仲間を狙い撃ち

−政権発足から「言行不一致」が続いていた石破さんですが、10月6日に突如として「裏金議員」非公認へ舵を切り、世間を驚かせました。

岩田:ついに石破さんによる旧安倍派パージが始まった。「選挙における非公認」より重い処分(党員資格停止6ヵ月)を受けた高木毅さんと、政倫審に出ていない萩生田光一さんと三ッ林裕巳さん、平沢勝栄さんらが非公認となった。一方、政倫審に出席した武田良太さんと松野博一さんは無罪放免。

これはあきらかに計算ずくで、総裁選で石破さんを支援した武田さんと、岸田さんに近い松野さんを助けるためです。

久江:もともとは原則公認とする予定でしたが、世論の反発が大きく、周囲の助言もあって方針を転換しました。

非公認以上に大きいのが、不記載があった議員は比例代表への重複立候補を認めないとしたこと。40人以上も該当者がおり、比例名簿がスカスカになります。これが果たして吉と出るか凶と出るか。世間ではよくやったという声がある一方、そんなことは当然という意見もあり、自民党にとって追い風となるか未知数です。

岩田:比例重複を認められないのは、ほとんどが旧安倍派の若手、中堅議員で、今回の総裁選で高市さんや小林さんを支持していた人たちです。旧安倍派の反発は大きい。

−もし総選挙で自民党が大きく議席を減らせば、「石破おろし」にも発展しかねないのでは?

岩田:それこそ高市さんや、非主流派に転落した茂木敏充さんなどが「詰め腹を切らせよう」と迫るかもしれませんね。

久江:そのときに、茂木さんにどこまで力があるか。参議院平成研だった石井準一さんや関口昌一さん、青木一彦さんも離れたし、20人余りしか仲間がいないとみています。

岩田:幹事長というポストも失ってしまったので苦しいですね。

久江:しかも茂木さんと高市さんは不仲と言われているので、タッグを組んで動く可能性は低いのではないでしょうか。

岩田:そういう意味では、今回の総裁選を見ても一番まとまっているのは旧岸田派なんですよね。

まさかの「あの男」が再登板

−来年の夏には参院選も控えています。

岩田:石破さんが選挙で勝てない顔だということになれば、改選組の参院議員が暴れ出す可能性もあります。

久江:日本の政治を振り返ると、実は参院選を転機に変わってきました。第一次安倍政権の'07年に参院選で自民党が惨敗して、ねじれ国会となった。そこから自民党は崩れて、政権交代を許しました。

'10年の参院選では、逆に民主党が敗北してねじれた。その後、民主党政権は「決められない政治」と揶揄され、下野します。

岩田:参院選でねじれたら大変だと、「石破おろし」に傾く可能性があるわけですね。そうなれば「高市総理」もあるのでは?

久江:確かに可能性はありますが、石破総理が任期途中で下りた場合の総裁選は、今回と異なり、党員投票を行わずに決める可能性が高く、高市さんにとっては不利です。

茂木さん、加藤さん、河野さんは今回惨敗したので難しい。進次郎さんや小林さんもまだ若いという評価が下された。となると、実績と経験で岸田さんの再登板の芽も出てきます。そのとき、微妙な関係にある旧岸田派ナンバー2の林芳正官房長官もポスト石破に名乗りを上げる公算が大きく、岸田vs.林の間で摩擦が起きないとも限りません。

岩田:岸田さんが再登板を見越して動いているのだとしたら、かなりの戦略家ですね。

久江:いずれにせよ、次の衆院選が石破さんの正念場になるのは間違いありません。

ひさえ・まさひこ/千葉県生まれ。早稲田大学を卒業後、毎日新聞社を経て、'92年に共同通信社に入社。ワシントン特派員、政治部担当部長などを経て、'24年より現職。近著に『証言 小選挙区は日本をどう変えたか』

いわた・あきこ/千葉県生まれ。東大法学部を卒業後、'96年にNHKに入局。岡山放送局を経て、'00年に報道局政治部へ移り、安倍晋三元総理らを取材する。同局解説委員、解説主幹を務めた後、'22年からフリー

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「週刊現代」2024年10月19日号より

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