「知事の仕事をまだまだ続けさせていただきたい」

【写真】どこを見ているのかわからない虚ろな視線の斎藤知事。出身校・東大の前での袴姿も

 兵庫県斎藤元彦知事(46)が9月26日、記者会見を開き、失職して出直し知事選に出馬すると明らかにした。


“出直し選挙”に挑むと宣言した斎藤知事 ©️時事通信社

なぜ“失職”を選択したのか

兵庫県議会は19日、斎藤氏に対する不信任決議案を全会一致で可決しました。これによって斎藤氏は、10日以内つまり29日までに議会を解散しなければ失職に追い込まれる状況でした。ただ、もう一つ29日までに辞職するという選択肢もありました」(県政担当記者)

 そもそも「辞職」と「失職」はいったいどう違うのか。

「知事の座を追われるという意味では同じですが、実はその後の見通しが変わってくるのです。今回、斎藤氏は出直し選挙に挑むことを表明しましたが、もし当選した場合にその任期が異なってきます。『辞職』の選択をして再選した際は、任期は辞職前の残任期間である約1年しか得られない。

 他方、議会を解散しなければ失職するというのは地方自治法で定められた『強制退場』であるため、そこで任期はリセットされる。つまり、『失職』から出直し当選の場合は、新たにフレッシュな4年間の任期を得ることができるのです」(同前)

 どうせ辞めざるを得ないのならば、貰いの大きそうなほうを選ぶ――実に計算高いと言わざるをえないが、実際、過去にこの手法で成功を掴んだ首長がいる。

まさかの「失職→再選」を果たした“あの政治家”

「『脱ダム宣言』などで一時旋風を巻き起こした田中康夫・元長野県知事です。2002年に長野県議会から不信任決議を受けましたが、議会を解散せず失職して再出馬。再選を果たしました。ちなみに当時田中氏も、今回の斎藤氏と同じように、不信任決議後の10日間で地元のテレビやラジオに相次いで出演していました」(同前)

 20年以上前のメディア戦略を令和の世に再現した斎藤氏。県関係者からは非難と困惑の声が上がる。

「不信任案は86対0で可決された。実質的な『クビ』宣告だったんです。民意を代表する県議会の総意を無視してぬけぬけと出直し出馬するなんて、責任を感じていないのでしょうか。県議さんたちも県職員もみんな怒っています」(県職員)

 不信任決議から1週間。遅まきの決断にはこんな背景があった。

「当初、県議会で不信任案提出の機運が高まっていた時、知事は解散も匂わせていました。県議たちへの牽制でもあったのでしょうが……。しかし実際に不信任案が可決されてしまった以上、いざ解散すれば県議たちから『大義のない解散だ』『県議選の費用約16億円が無駄にかかった』などとネガティブキャンペーンを張られ続けることになる。そうなれば自分の出直しどころではなくなってしまうので泣く泣く解散を取りやめたのでしょう」(県議)

 9月30日に自動失職した後、50日以内に知事選が行われる。斎藤氏の訴えは県民に届くのか。

(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)