【独占】「結婚の可能性は…」引退発表のアン・シネが語った“日本での思い出”と“今後やりたいこと”

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「この試合が私にとっては最後です」

それは突然の発表だった。

韓国女子プロゴルファーのアン・シネ(33)が、国内女子ツアー「ミヤギテレビダンロップ女子オープン」最終日となった9月22日に、引退することを発表した。今大会は悪天候によるコースコンディション不良で27ホールの短縮競技となり、アン・シネは通算1オーバーの28位タイでホールアウト。大会終了後には翌週からの終盤戦出場権が決まる「第2回リランキング」が実施され、アン・シネはこれを突破できなかった。つまり、ここでツアー出場権を失ったわけだ。もちろん韓国ツアーの出場権も持たないため、プレーする場所はない。

引退発表の場で語った言葉

クラブハウスの取材エリアで記者の取材に応じたアン・シネは、心境をこう告白した。

「このあと決まった試合というのはありません。なので、今週の試合が私にとって最後です。引退セレモニーを派手にしたい気持ちもありませんでした。この場を借りて(引退を)伝えるつもりでした」

突然の引退宣言には驚いたが、出場権を得られなければツアーから離れることは、すでに心の中で決めていたのだろう。韓国女子(KLPGA)ツアーではメジャーの「KLPGA選手権」優勝を含む通算3勝。韓国でもその実力は認められ、さらに人目を引くスタイルとウェアの着こなしからファンも多く、日本では“セクシークイーン”と呼ばれた。

筆者はデビュー戦からアン・シネの取材を重ねてきた。’17年5月の「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」で日本ツアー初出場となったアン・シネ。’16年はイ・ボミ(36)が2年連続賞金女王となり、女子ツアー人気を牽引したが、アン・シネの来日も大きな話題となっていた。天候の良さとゴールデンウィーク期間の影響もあってか、初日から1万3097人のギャラリーが押し寄せた。

ティショットホールに押し寄せる大ギャラリー。ティショットを打ったあともファンはアン・シネのプレーを追い続ける。さらにホールアウト後にはメディアの取材対応に追われていた。さらにギャラリーがサインを求めて大行列をなすと、

「すべての人にサインと握手をする」

と言い張り、クラブハウス前はパニックに。それでも2時間ほど立ちっぱなしで、すべての人にサインし続ける姿を見て、驚いたものだった。

涙とともに明かした感謝

’17年、’18年もシード獲得には至らなかったが、’19年には日本のプロテストに挑戦して一発合格し、同年のQT(最終予選会)も突破。日本でプレーする機会も増えるはずだった。しかし、’20年はコロナ禍の影響でツアー自体が中止となり、来日もできないまま、韓国でも試合に出ることはほとんどなかった。それでも、

「コロナの影響で4年間、日本に帰ってこられなくて悔しかった。もう一回日本でプレーしたいという思いで、準備をしてきた」

と明かしたように、昨年のQTで16位に食い込んで、5年ぶりの日本ツアー復帰を決めた。

日本ツアーでの最高位は今季の「アクサレディス」10位タイに留まった。優勝できなかったのは心残りかもしれないが、それでも最後の会見では、ファンへの感謝を忘れなかった。

「今年1年プレーしたことは正しい選択だったと思います。悔いのない時間を送ることができました。日本に来てから多くのファンの方に支えられてすごく感謝しています。(今後は)プレーを見せる機会がないのが寂しいです。この場で『ありがとうございました』と伝えたいです」

そう語り、何度も涙をぬぐったアン・シネ。今後については、こう明かした。

「私も新しい人生を準備する年齢になりました。お父さんの体が悪くて、今も闘病生活を続けているのでそばにいる時間を作りたい。これからは家族との時間を過ごしたい。そのあとにゆっくり考えたい」

取材に明かした結婚観、セカンドキャリア……

会見の場では今後について回答を控えた。それでも、もしかしたら漠然としていてもやりたいことがあるのではないか。最後の試合を終え、帰国の途に就くアン・シネに最後に聞きたいことがあり、メールを送った。

――日本での思い出をあげるなら?

デビュー戦の「サロンパスカップ」はすごく記憶に残っていて、いい思い出です。あれだけたくさんのギャラリーの中でプレーできたのはすごく幸せでしたし、取材も多くてビックリしました。あとは写真集を出版できたこと。私の大好きなオーストラリア(ゴールドコースト)での撮影がものすごく記憶に残っています。楽しい思い出がたくさんあります。

――第二の人生はどのような方向で考えていますか? ゴルフ番組出演やウェアなどのゴルフ用品のデザイン、芸能界入りなど構想があれば教えてください。

わ!  難しい質問ですね……。そこについては本当にまだ明確には答えるのは難しいです。どんな仕事ができるのかは、これから考えたいですね。あえて興味がある分野で言うならば、ウェアには関心がありますが、景気も良くないと聞いているのでそこも未知の領域です。

――結婚に対する考えは?

これもまた答えにくい(笑)。結婚の予定はもちろんありません。もちろんいつかはしたいと思っていますよ!

プロゴルファーとしてツアーに出ることに一旦、区切りをつけたアン・シネだが、やはり韓国ゴルフ界での知名度は高く、活動の範囲はさまざまな分野にわたるだろう。まずは両親へ恩返しの時間を作りつつ、第二の人生を謳歌してもらいたい。

取材・文:金明碰(キム・ミョンウ)