【鈴木 貴博】「日本人は滅びるんじゃないか」ユニクロ柳井正の「亡国論」を経済評論家が検討した結果…やっぱり「日本はヤバかった」!

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ユニクロ柳井正の「日本滅びる発言」の是非

先日、テレビ番組に呼んでいただき「このままでは日本人は滅びるんじゃないか?」というテーマで議論をさせていただきました。ちなみに番組ではそうそうたる論客の皆さんとの議論がまったく噛み合わなかったのですが、実はこれは田原総一朗さんの発明です。

テレビの論戦番組は議論がかみ合わなくて乱戦になったほうが視聴率がとれるのです。なにしろ視聴者には賛成派と反対派がそれぞれいるわけです。早い段階でどちらかの議論が勝ってしまうとそこで見る気が失せるのですが、プロレスと同じでどちらも勝たない展開だと最後まで観てしまうわけです。

さてそのような大人の事情で消化不良になったこの議論、きちんと整理しておきたいと思い記事を書かせていただきます。この問題はもともとはユニクロを運営するファーストリテイリング柳井正CEOが問題提起をした話です。

柳井氏はアジアの若者をたくさん育てているのですが、勉強をした彼ら彼女たちが自分のキャリアを花開かせる場所として日本ではなく他の国を選んでいる状況を憂いています。

優秀な外国人労働者に選ばれない国・日本という現実があるのです。

そのことをつきつめていったからでしょう。柳井氏はテレビのインタビューで、「少数精鋭で仕事するということを覚えないと日本人は滅びるんじゃないですか」と発言しました。

これが論争を生みました。

ZOZOの創業者である前澤友作氏はX(旧ツイッター)上で「僕は逆のように感じます」と発言した一方で、楽天の三木谷浩史CEOや元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏は同意する発言をして、この発言が話題になったのです。

この記事では日本人が滅びるのかどうか、私の意見をまとめさせていただきます。

柳井正の「少数精鋭」の意味

まず前提として取り上げたいのは、柳井氏の問題提起は「条件付き」であるということです。何が何でも日本人が滅びるとは言っておらず、条件としては「少数精鋭で仕事をすることを覚えないと」滅亡するとおっしゃっています。

これはJTC(Japanese Traditional Company)と揶揄される日本の伝統的企業で、不必要に多くの人数がお互いに責任をとらないで仕事に口を出しながら業務が進んでいく状況を批判した考え方です。

一方で、世界を眺めると日本経済のランキングは大きく順位を下げています。同じ土俵で戦うとアジアの競合にまったく勝てない。折からの円安も寄与して、平均給与では韓国や台湾にも抜かれる始末です。

優秀な日本人技術者が韓国や中国の企業に引き抜かれて驚くことが、転職した海外企業ではそれまでの職場と違って、少人数で仕事が決裁されて前に進んでいることです。

これまでの職場では少額の投資をするだけでもいろいろな部署の管理職が口出しをしてきたのが、海外の企業に勤務すると直属の上司のOKが出れば物事が進み、それで驚くのだといいます。

実は世界に広がっていた「病的な会社」

要するに日本企業では権限移譲が不十分なのです。世の中の趨勢は「決めるべき人に権限をあたえて、すばやく経営判断をして物事を進める企業の方が有利」な時代です。

日本の伝統的な大企業には、自分が決めて責任をとらされるのが嫌な人が多いため、なかなかそのような機動的な組織は多くはない。それが国際競争となるとどうしても後手後手にまわってしまうわけで、それを指して、少数精鋭で仕事をすることを覚えない日本人は滅びると指摘されてしまうのでしょう。

さて、実はこの話、もう少し根深いものがあります。というのはこの現象はふたつの要因で変化していくと予測されるのです。

ひとつはこの現象は伝統的な日本企業だけの話ではなく、世界的に蔓延する組織の病的な症状である要因であること。そしてもうひとつはAIの出現です。

では、世界的にまん延する組織の病的な現象とは何か、また、AIの出現でそれがどのように変わるのか。

後編『ユニクロ柳井正の「日本亡国論」は正しかった…!それでも、経済評論家が考えた日本人が生き残るための「最後のチャンス」』で詳しく解説したいと思います。

ユニクロ柳井正の「日本亡国論」は正しかった…!それでも、経済評論家が考えた日本人が生き残るための「最後のチャンス」