伊東純也の復帰で《W杯8強の壁》撃破も見えてきた…!森保ジャパンを大きく変貌させた「3人のキーパーソン」

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「チームに覇気がない」

W杯アジア最終予選を2試合連続で大勝した森保ジャパン。チームを変えたのは、代表への思いが強い、戻ってきた3人の男たちだ。

チームが復活した理由の1つ目として、日本サッカー協会(JFA)が財政状況が苦しいにも関わらず、資金を惜しまず徹底した準備態勢を整えたことを伝えた前回記事『森保ジャパンを完全復活に導いた「陰の立役者」は誰なのか…最終予選序盤2連戦ロケットスタートは「必然」だった』から続く。

2つ目の要因と言えるのは、長友佑都(FC東京)の3月シリーズからの代表復帰。1月のアジアカップ期間中は積極的に声を出してチームを盛り上げる存在が不在で、大会中ずっと沈滞したムードが漂っていた。

2023年3月の第2次森保ジャパン発足後はずっと好調が続いていたため、壁にぶつかったのが初めてだったのもあるが、チームを力強く支えるベテラン不在のマイナス影響が如実に表れていたのだ。

そこで森保一監督は長友を呼び戻す決断を下す。3月に大ベテランが戻ってくると練習の雰囲気が一変。「アジアカップでは覇気がないなと感じていた」と言う男は率先して声を出し、時には久保建英らを明るくいじって笑いを取った。9月シリーズでも代表初招集の望月ヘンリー海輝(町田)に寄り添い、代表としてのマインドを植え付けた。

彼自身は3月の北朝鮮戦(東京・国立)でベンチ入りした後はずっとベンチ外となっており、左サイドバックとしては過去4回のW杯最終予選の頃とは異なる位置づけになっているが、それでも「自分は5度目のW杯を本気で目指す」と言い続けている。その頭抜けた向上心に刺激を受けない選手はいない。やはり今の森保ジャパンは長友抜きには成り立たない。それは紛れもない事実と言っていい。

守田と話し込む長谷部コーチ

今回からW杯3大会でキャプテンを務めた長谷部誠(フランクフルトU-21コーチ)を代表期間だけ帯同させるという”ウルトラC”を実現させたのも、長友復帰と同じような狙いがあると見られる。W杯経験のある年齢の近い人材がチームにいるだけで、選手たちは心強いはずだ。

長谷部コーチはご存じの通り、昨季限りで現役を引退し、指導者人生をスタートさせたばかり。本来ならば、所属のフランクフルトでみっちり修行するのが普通だが、森保監督が今夏、ドイツで開催されたユーロ2024期間に直々に本人を口説き、合意を取り付け、クラブ側との調整を経て、正式決定に至ったという。

この人事は極秘で進められた模様で、協会幹部や他のコーチングスタッフ陣もギリギリまで知らされていなかったようだ。

長谷部コーチもまだ駆け出しの指導者だから、いきなり大役を与えられているわけではない。中国、バーレーン戦ともにベンチを外れ、スタンドから試合を見ており、ハーフタイムやオフ・ザ・ピッチで選手たちにアドバイスを送るというのが差し当たっての仕事のようだ。

「ハセさんは世界目線、ヨーロッパの目線で話してくれるから、選手もすごく腑に落ちるし、1つ1つの言葉に重みがある。それが単なる情報ではなくて、経験が伴う言葉だから後輩たちもすっと心の中に入ってくる感じがします」と長友も神妙な面持ちで語っていた。

特に恩恵を受けているのはボランチ陣ではないか。アジアカップで守田がロングボールを蹴られた後やビルドアップ時のポジショニングの不安や戸惑いを訴えたが、その修正は早急の課題だった。森保監督も名波浩コーチも現役時代は代表ボランチだったが、その時代とは戦術も強度も変わっている。

数ヵ月前まで現役選手だった長谷部コーチはより親身になって話を聞いてくれるだろうし、ダイレクトな助言も得られるだろう。9月シリーズ中には守田と長谷部コーチが話し込む場面も目立ったが、今後はより具体的な指示も出されるはず。代表の長谷部効果が本格的に表れるのはこれからだが、「つかみはOK」という状況ではないか。

山場となるのは10月の2連戦

そして最後の4つ目が伊東純也の復帰だろう。2023年の代表戦で8試合出場4ゴールという数字を叩き出した彼は第2次森保ジャパンの看板アタッカー。前回最終予選でも全12ゴール中7得点に絡んでいて、森保監督もこの最終予選では絶対に戻ってきてほしかったに違いない。

その前段階として性加害疑惑の刑事告訴が不起訴になり、7月のスタッド・ランスの日本ツアー4試合が問題なく終了。それも追い風となり、ようやく復帰の道が開かれることになったのだ。

その伊東は中国戦の後半18分から登場するや否や、いきなりゴールをゲット。1得点2アシストの大活躍を見せる。バーレーン戦でも後半頭からピッチに立ち、瞬く間に上田の2点目をお膳立てしており、存在感の大きさを改めて印象づけたのである。

「チームに帰って結果を残して、またこっち(代表)に来て結果を残すというサイクルを続けるだけ。次が大事だと思う。(10月の)サウジとオーストラリアを叩けば、ほぼほぼW杯に行けるんじゃないかと思うので、次に集中したいです」と本人は先を見据えていたが、彼の言うように前半戦の山場と位置付けられる10月2連戦次第で勢いが持続するかどうかが決まると言っても過言ではない。

3年前のサウジアラビア戦では同じジェッダで柴崎岳(鹿島)のミスパスから相手のカウンターを食らい、0−1で敗戦。序盤3戦で2敗という崖っぷちに追い込まれた。今回は序盤2戦で圧倒的リードを奪ってはいるものの、サウジに負けたら一気に苦境に陥らないとも限らない。三笘や伊東、久保、鎌田ら世界トップクラスのアタッカー陣の総力を結集して、危なげない戦いを見せること。それが日本代表にとって理想的なシナリオと言える。

いち早くW杯切符を勝ち取り、本番に向けて準備できる体制に持っていくことが、悲願のW杯8強の壁を超えるためのポイントだ。

森保ジャパンを完全復活に導いた「陰の立役者」は誰なのか…最終予選序盤2連戦ロケットスタートは「必然」だった