ここまでの間、積水ハウスは自分達で探すだけでなく、銀行などの金融機関、ベンチャーキャピタルなどとも連携して有望な投資先を探索。500社近くの企業との対話などを通じてシナジーを探り、前述の3社への出資に至った。

 これらの活動を進めていくために、新たな拠点を設けた。24年9月5日にオープンイノベーション施設「イノコム・スクエア」を開業。場所は、積水ハウスと日本生命保険が共同開発し、東京・港区に24年5月に竣工した「赤坂グリーンクロス」の中。

 旧国際赤坂ビル(日商岩井ビル)の跡地に建つ、地上28階、高さ150メートルの高層ビル。東京メトロ・溜池山王駅、国会議事堂前駅に直結する利便性の高さも売り。

 この利便性の高い立地に拠点を置くことで、スタートアップの他、産・官・学から幅広くパートナーを集める。イベントや会議の他、イノコム社の社員を始め積水ハウスグループの社員が常駐しており、日常的なコミュニケーションの場としても活用していく考え。

 積水ハウスが、オープンイノベーションを進める背景には、国内市場の縮小も大きい。同社はグローバルビジョンの中で「国内の〝安定成長〟と海外の〝積極的成長〟」を掲げる。海外では24年1月に米国の上場企業で戸建て事業を手掛けるM.D.C.ホールディングス(MDC)を約7200億円で買収することを発表。これによって米国の戸建て供給戸数で31位から5位に躍進。

 一方、人口減少の国内で「安定成長」を進めるには、既存事業以外の新たな柱づくりが求められる。イノコム社の活動はその点でも重要な意味を持つ。さらには「まずは国内からスタートするが、その技術が米国でも通用するものだとわかれば、米国の事業者との対話も始まっていくことになる」(辰井氏)と海外への展開も見据える。

 これまで積水ハウスは業界内で「自社技術、自前主義へのこだわりが強い会社」(業界関係者)と見られてきた。その意味で今回のオープンイノベーションへの取り組みは、同社の変化の表れとも言える。イノコム社の辰井氏もコンサルティング会社を経て23年に入社した人物で、外部出身人材の活用も進む。

 まずは1つでも具体的成果を形にすることが求められる。