「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣被告(左)と加藤ありさ被告(右)

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「餃子の王将デート行きたい」の殺し文句で話題になった“元女子大生頂き女子”加藤ありさ被告(22)の初公判が、7月11日、名古屋地方裁判所で開かれた。法廷で明かされたのは詐欺の手口を伝授した「2人の師匠」の名前だった。傍聴席では同様の被害にあった男性2人が最前列に座って、闇落ちした詐欺女の一挙手一投足に目を光らせていた。(前後編の前編)

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【写真27枚】あまりに違う加藤被告の「実物写真」と「プロフィール写真」。新たに出てきた「師匠」のXアカウントと「攻略マニュアル」も

部屋着のようなスウェットに「便所スリッパ」

 SNSにアップしていた、女子大生ライフを満喫する煌びやかな姿とは打って変わった姿だった。部屋着のような紺色のスウェットに茶色の“便所スリッパ”。胸元まで伸びたまだらな茶髪はピンクの輪ゴムで括られていた。

「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣被告(左)と加藤ありさ被告(右)

 加藤被告はマッチングアプリで知り合った66歳(当時)の男性に「母親がガンで入院していて、入院費用や手術費用が必要」などと嘘をつき、200万円を騙し取った詐欺の罪に問われた。

 冒頭、裁判官から起訴事実に間違いないかと問われると、

「間違いないです」

 とボソリ。終始、生気のない顔で俯いていて、何を問われても「はい」と蚊の鳴くような声で答えるだけだった。

 今春まで名古屋市内の女子大に通う大学生だった加藤被告は、マッチングアプリを狩場にして同様の手口で複数の男性から金を騙し取っていた。

「デイリー新潮」は5月に、それぞれ73万円と30万円の被害にあったAさん(40代)とBさん(30代)の被害を報じている。【名古屋「22歳頂き女子」にだまされたおじさん2人が特別対談「僕らがバカだった。若い女子がおじさんとの“餃子の王将デート”を喜ぶはずがない」を参照】

 加藤被告はAさんには「あなたしかいない」、Bさんには「餃子の王将デート行きたい」などとあざとく籠絡。金をだまし取った後は「テストで忙しい」などと適当なことを言って逃亡したのだった。

 2人とも「真実を知りたい」と傍聴席の最前列に陣取り裁判を見守ったが、加藤被告は一度たりとも傍聴席に目を向けることはなかった。

やっぱり「ホスト狂い」だった

 検察側の冒頭陳述や証拠から詳細な手口や動機が明らかにされた。

 加藤被告は被害男性に「会えて嬉しかった」「大好きだよ」などとアプローチ。その後、「母が群馬県の病院に入院している」「今月中に何とかして助けて欲しいと言われている」などと泣きつき、被害男性は借金までして200万円を用立てた。

 だが母親は入院も手術もしていなかった。加藤被告が金をだまし取った直後にはブランド物の財布をプレゼントされていた。加藤被告は被害者からだまし取った金額を、スマホに入れてある家計簿アプリに記入して管理していた。

 動機はこれまでに捕まった他の頂き女子同様、ホスト通いだった。名古屋市内のホストクラブに勤めるXというホストに入れ込み、「大好きなXくんを支えたかった」と取り調べで供述していた。

 検察官がX氏についての証拠を読み上げている時、加藤被告は顔を紅潮させて聞いていた。

 傍聴後、ネットでX氏について調べると同一人物と思しき人物が出てきた。加藤被告はAさんやBさんに対しては本名で接していたが、他の被害者に対してはIという偽名を使っていたことが判明している。X氏と思しきホストの源氏名の苗字は同じIだった。

10分で50万円を稼ぐ「師匠」

「2人の師匠」がいたことも明らかになった。逮捕当初は手口が”元祖・頂き女子”として名を馳せた、りりちゃんこと渡邊真衣被告が販売していたマニュアルの内容と似ていたため、「りりちゃんの門下生」だった疑いが浮上したが、検察官が読み上げた名前は違った。

 一人は「Mちゃん」で、2万円のパパ活攻略マニュアルを購入していた。もう一人の「ネオちゃん」には9万円を払い、マニュアルだけでなくLINEで個別指導も受けていた。

 ネットで調べるとMちゃんのXのアカウントが見つかった。プロフィール欄には、

〈とにかくお金が大好きな女アカウント 元ホス狂 パパ活6年目で月収4桁何回か達成 基本アプリです パパ活攻略本2冊発売中〜。ギャンブル狂です〉

 21年7月に、“パパ活を1から始めたい方でも大丈夫”“3000文字くらい書いててかなり濃い内容だと思います”との触れ込みで、〈Mちゃん流パパ攻略法本〉を紹介している記述も見つかった。

 下記はその目次だ。

〈・自分の設定を決める ・マッチングアプリ入門編 ・初回会う際に気をつけること ・お金引け竿うなパパの特徴 ・パパを育てる方法 大人を求めてくるpへの断り方 ・お手当アップ交渉&高額もらう交渉のタイミング〉

 昨年7月には、自分の成果をこう自慢していた。

〈今日はジジイと5月ぶりに会いました。病人なのでこれと30万をもらい、即帰りました。買ってもらったのは、ニンテンドースイッチ有機モデルとiPhone14pro512GBです。そのまま売りに行きましたので、本日の日給は10分で50万くらいでした。ありがとうございました。みなさん、おやすみなさい。〉

 MちゃんのアカウントにDMで取材を申し込んだが、返答はなかった。

事情通のライターが指摘する「孫弟子の可能性」

 渡邊被告に拘置所で面会取材を続けるなど、頂き女子の生態に詳しいノンフィクションライターの宇都宮直子氏はこう語る。

「夜の世界で、女性が色恋を仕掛けて男性に貢がせる手口は昔からあることです。彼女たちがいわゆる『頂き女子』的な活動で注目を集めるようになったのは、SNSが普及してからのこと。男性ばかりではなく同業者の女性からも金を取ろうと、手口を教えてレッスン料を得るようになったのです。それを4年くらい前からマニュアル化し、堂々と販売して注目を集めたのが渡邊被告です」

 そして、りりちゃんを真似る「弟子」が増殖していったのだという。

「Mちゃんのマニュアルは金が引けそうな男性の特徴やフェイドアウトの仕方がまとめられてあったり、渡邊被告の作ったものとよく似ています。加藤被告はりりちゃんの孫弟子にあたるのではないでしょうか」

 後編【名古屋”元女子大生頂き女子”の初公判を傍聴した被害男性2人が緊急対談 「太ったな」「俺たちの金でお母さんに財布を買ってあげていたなんて」】では、裁判を傍聴したAさんとBさんの感想を伝えている。

デイリー新潮編集部