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はじめに

新型ルノー・セニックについて、長所や短所、クセなどについてはこの後で掘り下げていくとして、ここではパッと見でわかる話をしていこう。

【画像】写真で見るルノー・セニックとライバル 全16枚

この5代目モデル、まず気づくのは、最近よくある2ボックスのクロスオーバーだということ。過去4世代が1ボックス的な、フランス風にいうならモノスペースだったセニックとしては、劇的な変化だ。1990年代中盤の最初期型は、先見の明があったルノーのチーフデザイナー、パトリック・ル・ケモンの発明ともいうべき、合理的なサイズのMPVの元祖的存在だった。


テスト車:ルノー・セニックE−テック・アイコニック・ロングレンジ    JOHN BRADSHAW/MAX EDLESTON

当時はパッケージングと使い勝手の啓示のようにみなされたセニックも、パッケージングに関してはいまや数多ある同類の中に埋もれてしまった。そして、市場のニーズはMPVからSUVへと主流を移している。

しかし、デザインを2ボックスへ移行したMPVが、否定しようがないほど見栄えがよくても、それだけで成功が保証されるわけではない。そこでこの新型セニックは、もうひとひねり加えて、完全電動化を図り、4万ポンド(約812万円)前後の中型クロスオーバーEVという激戦区に身を投じた。

ライバルは、テスラ・モデルYやフォルクスワーゲンID4、プジョーの新型e−3008をはじめ、欧州で人気のスコダ・エンヤックや、ヒョンデ・アイオニック5の下位機種、そしてメカニズムの共通点も多い日産アリアなどだ。1996年デビューの初代ほど、ニッチなカテゴリーではない。

それでもルノーは、シャープなエクステリアやリサイクル素材をうまく使ったインテリア、公称航続距離の強みや十分なパフォーマンスなどにより、多くのユーザーに選ばれると考えているようだ。果たして、リアルな実力はいかほどか、検証してみたい。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

セニックE−テックのベースは、モジュラー構造のCMF−EVで、より小型のメガーヌE−テックや、同等サイズの日産アリアと共通だ。メガーヌよりホイールベースが100mm延長され、全高は70mmほどアップした、拡大版と言ってもいいだろう。

とはいえ、さほど大きなクルマではない。ルーフはフォルクスワーゲンID3より低く、全長はこのセグメントでは最短だ。市街地中心に使うユーザーには魅力的だ。


充電ポートはフロントフェンダーに設置され、駆動系はフロントに搭載。配線を無駄に増やさないことで、重量増加を防いでいる。    JOHN BRADSHAW/MAX EDLESTON

駆動用バッテリーはニッケル・マンガン・コバルト・リチウムイオンで、キャビンの床下に設置。CMF−EVは前後モーターの4WDにも対応可能だが、ルノーのE−テックは今のところFFレイアウトのみで、効率や実用性を重視している。

リアモーターを諦めたことで、荷室を広く取れるとルノーでは説明している。また、充電装置をほぼすべてフロントに集中させ、配線を少なくすることで軽量化が図られている。

発売時点では、2種類のバッテリーが用意されている。エントリークラスは60kWhで、WLTP値の航続距離が418km。今回テストするロングレンジ仕様は87kWhで、公称610kmとされている。これはテスラ・モデルYの533kmを凌ぐ、クラストップレベルの数字だ。

違いはバッテリー容量だけではない。60kWh仕様は170psで、充電性能は最大130kW、87kWh仕様は218ps・150kWだ。ただし、最大トルクは共通で、車両重量はエントリーモデルが1757kgと96kgも軽いので、0−100km/h加速タイムの差は87kWh仕様が0.5秒早いのみだ。

外観は目を引くが、彫りの深い顔立ちはちょっとプジョーっぽいというテスターもいた。その意見はルノーを喜ばせるものではないだろうが、欠点というわけではない。いっぽうでシャープなリアビューは、ランボルギーニを思わせるところがある。

このデザインテイストは、ホイールにも適用される。最小サイズは19インチ、中級グレードのエスプリ・アルピーヌや最上位のアイコニックでは2トーンの20インチで、どれをとっても非常にスマートだ。

内装 ★★★★★★★☆☆☆

少し前ならなんとなくプラスティッキーでグレーがかっていたルノーのインテリアだが、最近はかなりがんばってよくなっている。このセニックも、上昇軌道の好例だ。手触りのいいマテリアルや明るい色合いのパーツに加え、アイコニック仕様はパノラミックルーフを装備することもあり、いい感じに明るくあたたかい雰囲気となっている。

このルーフ、ルノーによれば量販車初だという、全面もしくは部分的に透明度を変えることができるポリマー分散液晶を採用。Googleアシスタントを介して、音声操作も可能だ。また、機械式ブラインドに比べ、ヘッドルームが30mm程度余計に確保できている。


広さはなかなかのもので、使い勝手も良好。ただし、視認性やシートアレンジなど、物足りなさを感じる部分もある。    JOHN BRADSHAW/MAX EDLESTON

うまくできた収納や快適装備も多い。とはいえ、エルゴノミクス面で奇妙なところも多少ある。コクピットそのものはうまく設計されていて、角ばったステアリングホイールや、ドライバーに見やすい角度がついた大画面の縦型センターディスプレイには高級感もある。

重要な機能には実体操作系が用意される。さらにセンターコンソールは、携帯電話の充電トレーを高い位置にフローティング配置することで、大きな収納スペースを稼いでおり、キャビンの使い勝手はかなり高い。

それだけに、デジタルルームミラーが大きくて、斜め前方の視界を削っているのが残念だ。そのせいで、シートの高さがちょうどいい位置に調整できないのも惜しい。Aピラーも驚くほど太く、三角窓は塞がれている。その結果、キャビンは広がりのあるラウンジのように感じられるが、市街地での運転を特別楽にしてくれることはない。

乗員スペースと荷室は、クラストップではないまでも、なかなかのものだ。後席はヘッドルームがMPV的で、レッグルームはヒョンデ・アイオニック5ほどではないまでもすばらしい。545Lという積載容量は、4.5m級のクルマとしては大きく、フロア下にはケーブルを収納できるストレージもある。

しかしながら、開口部の段差は大きく、後席を倒した際には段差もある。また、かつてのセニックの売りだった、後席の独立アジャストは、オプションでも用意されていない。

走り ★★★★★★★☆☆☆

セニックのようなクロスオーバーのパフォーマンスは、いかに速いかという絶対値より、そのクルマにふさわしいかということが問われる。この手のクルマの購買層はスピードを求めているわけではないが、ジャンクションを抜ける際や、家族や荷物を乗せて走る際に多少なりとも加速が鈍かったりすると気にするはずだ。

218psながら0−97km/hは8.1秒というのはやや物足りないが、全体的には妥当な速さだといえる。とはいえ、2022年にテストしたメガーヌE−テックはこれを1秒以上凌ぎ、納得のいく加速だと感じられた。同じことは中間加速にもいえる。48−113km/h加速は6.3秒で、遅いクルマをオーバーテイクするのは難しくはないものの、もう少し楽にできるとありがたい。


もう少しパワーはほしいが、ひどく力不足というほどではない。4段階調整式の回生ブレーキは、コーナリング時の速度調整にも使える。    JOHN BRADSHAW/MAX EDLESTON

240ps近い馬力があれば、48−113km/hを5秒台まで引き下げることもできるだろう。そうなれば、公道上でもう少し活発さを味わえるはずだし、ルノーならそれくらいのスペックを出すのも不可能ではないはずだ。

そうは言っても、パフォーマンスの性質は真っ当だ。スロットルペダルの反応はよく、トルク伝達の高め方もうまい。マルチセンスで選ぶ4つの走行モード、パーソナル/コンフォート/エコ/スポーツの違いは大きくないものの、デリバリーの精密さが感じられる。

もっとわかりやすいのは、ステアリングホイール裏のパドルで選択する、回生ブレーキの4つのレベルだ。ルノーは、多くのEVより回生の効きに広い幅を持たせた。4段階のどれかへ入れっぱなしにして忘れてしまうより、コーナー手前でパドル操作により速度を調整するような使い方をしたくなるようなアイテムだ。ブレーキペダルがふわついた曖昧なフィールだということを考えると、このチューニングはうれしい。

使い勝手 ★★★★★★★★☆☆

インフォテインメント

セニックE−テックの12インチタッチスクリーンは反応がよく、鮮明だ。ドライバーに向けて角度がついているので、多くの競合車よりはるかに使いやすい。空調のメインコントロールが、画面下に並んだ実体トグルなのもありがたい。路面から目を逸らさずに操作できるからだ。

ソフトウェアは、ルノーのオープンRリンクシステム。50以上のアプリがGoogle Playから利用可能だが、とくに役立つのはGoogleマップで、車両からの充電関連データを得て、充電前にバッテリーの事前準備をすることもできる。走行可能距離を推定するために、気象情報を使うことも可能だ。


ドライバーに向けられたディスプレイや、実体スイッチのエアコンパネルは操作性がいい。Google Play経由で多くのアプリを使うこともできる。    JOHN BRADSHAW/MAX EDLESTON

テスト車は、410Wのハーマンカードン製サウンドシステムを装備。クラス水準に照らせば上々の、クリアな再生能力を発揮した。

燈火類

アダプティブLEDヘッドライトは標準装備。今回はテストする機会がなかった。

ステアリングとペダル

ペダル配置に問題はないが、ブレーキペダルのアームが曲がった形状なので、もしかしたら引っかかることがあるかもしれない。

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

セニックのステアリングには、切りはじめのレスポンスにわずかながらダルさがあってフラストレーションを覚えるが、おおむね運転の楽しいクロスオーバーだ。パワーは控えめなので、トラクションはまったく問題にはならないが、前輪駆動のEVならどれもそうかもしれない。また、コーナリング時にボディをフラットに保つというという点で、ルノーのパッシブサスペンションは予想以上の仕事をしてくれる。

電動車となることで、重心高は一般的なハッチバックと同程度まで低くなっている。そのことが、気楽に走れる自信をもたらしてくれる。ペースを上げはじめると、スロットルでのアジャスト性もわずかながら見出せるだろう。それは、セニックE−テックの購買層には必須の要素ではないかもしれないが、このシャシーが基礎として賞賛すべき適切さを備えていることを示している。


リアモーターEVのような後輪駆動らしいハンドリングとは違うが、スロットルで挙動をコントロールできるような一面も持ち合わせている。    JOHN BRADSHAW/MAX EDLESTON

同時に、シングルモーターで後輪駆動のライバルにも負けていない。その方面で有力なのはフォルクスワーゲングループで、フォルクスワーゲンID4やスコダ・エンヤックには、地味に満足感のある後輪駆動ならではのバランスがある。それは、当然ながらセニックにはない。しかし、重量があってパワーアシストが強いクロスオーバーは、ステアリングフィールが明らかに欠如している。そこは、後輪駆動勢とは違うかたちで埋め合わせている。

快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆

フランスのファミリーカーがしばしば見せてきたような乗り心地の質は感じられないが、絶対評価やクラス水準との比較において劣っているというわけではない。快適性や洗練性が欠けているわけではないのだが、走りを追求したクルマではないのだから、際立ったマナーを示してくれたら、特徴あるキャビンやルックスのよさがもっと引き立ったはずだ。

20インチホイールに薄いサイドウォールのタイヤを履いたテスト車は、路面の穴を踏み越える際の衝撃がたまにあったり、完璧とはいえない舗装で過敏な反応を見せたりした。それゆえ、乗り心地はいいものの、すばらしいというレベルにまでは届かない。


フランス車の乗り心地には過分な期待をしがちだが、そうした先入観を持たなければ大きな不満はない。静粛性は高い。    JOHN BRADSHAW/MAX EDLESTON

静粛性については、公正に評価してもかなりのものだと言える。電子音楽のスペシャリストであるジャン・ミッシェル・ジャールの手になる合成音を発する設定がデフォルトだが、スピード感を演出しようとするこの手の効果音としては耳障りではない部類。しかも、気に入らなければ完全に切ることもできる。

この効果音を切ってしまえば、走行中の騒音値はフォルクスワーゲンID7にかなり近い。大型で高価な高級セダンとほぼ同等というのは、高く評価していいだろう。

購入と維持 ★★★★★★★★☆☆

サプライヤーであるLGの技術改善により、セニックの2層式バッテリーは、メガーヌのそれよりエネルギー密度が6%向上している。しかも、メガーヌでは最上位グレードのアイコニックのみに装備されるヒートポンプが、標準装備となっている。

87kWhというバッテリーサイズは、もっと高価なプレミアムブランドのEVにも匹敵する。それでいて、実測1916kgという車両重量は、BMW i5などよりかなり軽い。その結果、リアルな日常使いでなかなかの航続距離を実現するEVとなった。テスト時の平均電費から算出する走行可能距離は504km、高速道路のみでも418kmだ。また、10〜90%急速充電のアベレージも、114kWというなかなか優秀な数字をマークした。


主なライバル車と比較して、セニックの残価予想は良好だ。

4万5440ポンド(約922万円)という87kWhアイコニックの価格は高く思えるかもしれない。しかし、装備内容や航続距離を考えると、競争力は高い。エントリーレベルのテクノはバーゲン仕様ではないものの、4万ポンド(約812万円)少々から買えることには注目したい。その場合、ハーマンカードン製サウンドシステムやパノラミックルーフ、ヒーター付き電動フロントシートなどが装備されないが。

スペック

レイアウト

基本的なメカニズムは、2022年に登場したハッチバックモデルのメガーヌE−テックと同一。CMF−EVプラットフォームは、日産アリアとも共通だ。バッテリーは、このクラスでは群を抜いて大きい。

レイアウトはクラス標準とでもいうべき一般的なもので、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク。テスト車で計測した前後重量配分は54:46だった。

パワーユニット


基本的なメカニズムは、メガーヌE−テックと同一。バッテリーは、このクラスでは群を抜いて大きい。テスト車の前後重量配分は、実測で54:46だ。

駆動方式:フロント横置き前輪駆動
形式:他励同期式電動機
駆動用バッテリー:リチウムイオン(ニッケル・マンガン・コバルト)・水冷・400V・91.0/87.0kWh(グロス値/ネット値)
最高出力:218ps/5473−11688rpm
最大トルク:30.6kg−m/100−4714rpm
最大エネルギー回生性能(推定値):−kW
許容回転数:−rpm
馬力荷重比:118ps/t
トルク荷重比:16.5kg−m/t

ボディ/シャシー

全長:4470mm
ホイールベース:2785mm
オーバーハング(前):842mm
オーバーハング(後):843mm

全幅(ミラー含む):2085mm
全幅(両ドア開き):3660mm

全高:1572mm
全高:(テールゲート開き):2060mm

足元長さ(前席):最大1110mm
足元長さ(後席):720mm
座面〜天井(前席):最大1050mm
座面〜天井(後席):950mm

積載容量:545〜1670L

構造:スティールモノコック
車両重量:1853kg(公称値)/1916kg(実測値)
抗力係数:−
ホイール前・後:8.5×20
タイヤ前・後:235/45 R20 100H
ミシュランEプライマシー
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:1速リダクションギア
ギア比
リダクション比:9.7:1 
1000rpm時車速:13.7km/h
113km/h/129km/h時モーター回転数:8250rpm/9450rpm

電力消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:5.8km/kWh
ツーリング:4.8km/kWh
動力性能計測時:2.4km/kWh

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):−km/kWh
中速(郊外):−km/kWh
高速(高速道路):−km/kWh
超高速:−km/kWh
混合:5.6km/kWh

公称航続距離:610km
テスト時航続距離:504km
CO2排出量:0g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラット/コイルスプリング、スタビライザー
後:マルチリンク/コイルスプリング、スタビライザー

ステアリング

形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:−回転
最小回転直径:10.9m

ブレーキ

前:350mm通気冷却式ディスク
後:230mmドラム
制御装置:ABS
ハンドブレーキ:電気式自動・ステアリングホイール右側にスイッチ配置

静粛性

アイドリング:−dBA
全開走行時(145km/h):72dBA
48km/h走行時:58dBA
80km/h走行時:63dBA
113km/h走行時:68dBA

安全装備

ABS/ESC/AEB/EBA/LKA/RCTA
Euro N CAP:5つ星
乗員保護性能:成人88%/子供89%
交通弱者保護性能:77%
安全補助装置性能:85%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温16℃
0-30マイル/時(48km/h):3.8秒
0-40(64):5.1秒
0-50(80):6.4秒
0-60(97):8.1秒
0-70(113):10.1秒
0-80(129):12.7秒
0-90(145):15.9秒
0-100(161):19.8秒
0-402m発進加速:16.4秒(到達速度:147.7km/h)
0-1000m発進加速:29.4秒(到達速度:173.5km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
スコダ・エンヤックiV80(2021年)
テスト条件:乾燥路面/気温21℃
0-30マイル/時(48km/h):3.2秒
0-40(64):4.5秒
0-50(80):6.1秒
0-60(97):8.3秒
0-70(113):11.0秒
0-80(129):14.5秒
0-90(145):19.2秒
0-100(161):31.3秒
0-402m発進加速:16.6秒(到達速度:136.6km/h)
0-1000m発進加速:30.6秒(到達速度:160.8km/h)

キックダウン加速

20-40mph(32-64km/h):2.5秒

30-50(48-80):2.6秒

40-60(64-97):3.0秒

50-70(80-113):3.8秒

60-80(97-129):4.6秒

70-90(113-145):5.7秒

80-100(129-161):7.1秒

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温16℃
30-0マイル/時(48km/h):9.0m
50-0マイル/時(80km/h):23.9m
70-0マイル/時(113km/h):46.9m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.56秒

ライバルの制動距離

スコダ・エンヤックiV80(2021年)
テスト条件:乾燥路面/気温21℃
30-0マイル/時(48km/h):8.5m
50-0マイル/時(80km/h):23.4m
70-0マイル/時(113km/h):45.4m

結論 ★★★★★★★★☆☆

最近のルノーは好ましいクルマを次々送り出しているが、その流れはセニックE−テックでも続いている。残念ながら、斬新なモノスペースのコンセプトを示した初代との共通性はほとんどないが、それでもこのクロスオーバーは魅力的かつ有能で、ファミリーカー市場での支持を集めそうだ。

第5世代のセニックは、今日のSUVの基準に則しながら、スタイリングやインテリアの先進装備、航続距離などさまざまな魅力をあわせ持ち、この手のEVの購入を検討しているユーザーなら誰もが候補にリストアップしそうなクルマに仕上がっている。ハンドリングはまともで、パフォーマンスも妥当なレベル。そしてなにより、リアルな条件下で480km以上走りうるのだから、この価格帯ではかなり説得力のある選択肢だ。


結論:セニックもついに時流に適合したが、それはスタイルや要旨についての話だ。    JOHN BRADSHAW/MAX EDLESTON

反面、インテリアのスペースやロードマナーの上質さ、マテリアルのクオリティなどについては、これ以上の競合モデルがあるのも確かだ。その差は大きなものではないが、それでも看過できるものではない。

今後、この競争が激しいクラスで勝ち抜いていくには、上々のルックスや軽さ、航続距離の長さといった魅力はそのままに、不足を是正するアップデートが必要となるに違いない。そのうえで、動力性能や運動性能をもう少し高めても悪くないのではないだろうか。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

この仕事をしていると、クルマに対するひとびとの反応が気になるようになってくる。ランボルギーニなどに乗っていると注目の的になるのは当然だが、新型セニックも周囲のドライバーから多くの視線を集めた。クルマを買うには頭で考えることと同じくらい気持ちが大事なので、このルノーは人気車種になりそうだ。

マット・ソーンダース

ソーラーベイと銘打ったパノラミックルーフはいいアイデアだが、全面的に透明度を下げても明るく見える。個人的には、ダークなルーフライニングのほうが心地よく感じるのだが。

オプション追加のアドバイス

エントリーグレードのテクノではパノラミックルーフが装着できないが、それでも装備内容は充実しており、19インチホイールにより乗り心地も多少改善されるはずだ。シートヒーターと、ステアリングホイールの高級感あるトリムも失われるのは惜しいところだが。

改善してほしいポイント

・フロントに三角窓があれば、視認性の改善が望める。
・かつてのセニックにあった、後席独立スライド機構を採用してほしい。
・ブレーキペダルをシャープに。今のままでは、あまりにも味気ない。
・ギアセレクターとワイパーレバーの位置は再考を。あまりにも接近しすぎている。