ホンダの新型「CRF1100Lアフリカツイン」(筆者撮影)

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大型ツアラーバイクとして人気のホンダ「CRF1100Lアフリカツイン」とスズキ「GSX-S1000GX」(写真:本田技研工業/スズキ)

近年、人気が高いバイクのタイプには、快適なバイク旅を味わえるツアラーモデルも挙げられる。中でも1000cc以上の大型モデルは、大柄な車体による高い安定感や、余裕あるエンジン性能などにより、ロングツーリングに最適なこともあり、日本はもとより、欧米など世界的に大きな支持を受けている。そんな大型ツアラーの2024年ブランニューとして登場したのが、ホンダ「CRF1100Lアフリカツイン」とスズキ「GSX-S1000GX」だ。

【写真】最新ツアラーバイクを徹底比較。新型のホンダ「CRF1100Lアフリカツイン」とスズキ「GSX-S1000GX」のディテールをチェック(52枚)

最新ツアラーバイク、2モデルの概要

40年近い歴史を持つロングセラーモデルのCRF1100Lアフリカツインは、1082cc・直列2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーモデル。一方、998cc・直列4気筒エンジンを搭載するGSX-S1000シリーズの最新モデルとして登場したGSX-S1000GXは、スズキがクロスオーバーバイクと呼ぶモデルだ。

両モデルは、搭載するエンジンの排気量や、採用するスタイルなどにやや違いがある。だが、いずれもオンロードはもちろん、オフロードでの走破性も考慮した装備などを持つという共通点がある。高速道路を使った長距離走行だけでなく、キャンプなどアウトドア・ユースにも対応するという意味では、どちらも同じだ。

ここでは、そんな最新のツアラー2モデルの特徴や魅力などを「第51回 東京モーターサイクルショー(2024年3月22〜24日・東京ビッグサイト)」で実際に現車を確認した印象も踏まえて紹介する。


東京モーターサイクルショーに展示されていたCRF1100Lアフリカツインの最新モデル(筆者撮影)

CRF1100Lアフリカツインは、オフロードバイクのテイストを受け継ぎつつも、長距離ツーリングでも快適かつ利便性が高い装備を持つアドベンチャーバイクと呼ばれるモデルの元祖的存在だ。

初代モデルは、647cc・V型2気筒を搭載し、1988年に登場したアフリカツイン。世界一過酷なラリーといわれるパリ・ダカールラリー(現在のダカールラリー)に参戦し、1986年から1988年まで3年連続優勝(2輪車部門)を成し遂げたホンダ・ワークスマシン「NXR750」のレプリカモデルだ。


1988年に発売した初代アフリカツイン(写真:本田技研工業)

初代モデルから一貫したコンセプトは、高いオフロードの走破性と、快適な高速ロングツーリングの両立。また、大排気量マシンながら高い悪路走行性を持つことなども人気を博し、特に林道などのオフロードも含めたツーリング好きライダーに大きな支持を得た。

2016年にCRF1100Lアフリカツインとして復活

その後、人気の沈静化などにより、2000年モデルで生産をいったん終了。だが、2016年、排気量を998ccにアップし、車名もCRF1100Lアフリカツインへ変更し復活する。また、通常の6速MT(マニュアル・トランスミッション)車に加え、独自のAT(オートマチック・トランスミッション)機構の「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」車も用意し、多様なニーズに対応する。

さらに2019年発売の現行モデルでは、エンジンの排気量を1082ccに拡大。スタンダード仕様に加え、大容量24Lの燃料タンクなどを備えるアドベンチャースポーツや、前後に電子制御のサスペンションを採用したアドベンチャースポーツESといった豊富なバリエーションを誇り、大ヒットを記録する。

なお、今回受けたマイナーチェンジ前のラインナップは全4タイプ。前後サスペンションのストローク量を伸長し、オフロード走破性をさらに高めたCRF1100Lアフリカツインと、電子制御サスペンション仕様のCRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツESの各仕様に、6速MT車とDCT搭載車を設定している。


2024年モデルのCRF1100Lアフリカツイン(写真:本田技研工業)

そんなCRF1100Lアフリカツインの2024年モデルでは、タイプ設定はそのままに、エンジンの圧縮比、バルブタイミング、吸気ポート、ECUセッティングを変更。最大トルクを7%向上(従来よりも750rpm低い回転域で発生)することで、より余裕ある走りを実現する。また、DCT搭載車では、新しいエンジン性能に合わせて、DCTの制御を変更。発進特性と極低速域のコントロール性を向上させている。

加えて、CRF1100Lアフリカツインには、前後にチューブレスタイヤを採用したほか、大型で5段階の調整が可能なウインドスクリーンも追加し、実用性もアップ。スクリーンの素材には、「デュラビオ(DURABIO)」というバイオ由来プラスチック製を採用し、環境にも配慮する。

さらにCRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツESでは、フロントホイールを21インチから19インチに変更。ワイドなフロントタイヤも採用し、オンロードの走行性能を向上させていることも注目だ。ほかにも、アッパーミドルカウルの形状を改良。ライダーが体に受ける前方からの走行風の流れをコントロールすることで、長距離走行時などで疲労を軽減する効果も狙っている。

GSX-S1000GXのプロフィール


東京モーターサイクルショーに展示されていたGSX-S1000GXの最新モデル(筆者撮影)

一方のGSX-S1000GXは、前述のとおり、スズキのGSX-S1000シリーズに属する最新モデルだ。ネイキッドモデルの「GSX-S1000」や、スポーツツアラーの「GSX-S1000GT」を擁するのが、このシリーズ。大きな特徴は、フルカウルのスーパースポーツ「GSX-R1000(現在は生産終了)」の998cc・4気筒エンジンを搭載していることだ。もともと、このエンジンは、長年のレース参戦などで培った技術を投入し、最高出力197PSものパワーを発揮する高性能な仕様。とくにワインディングやサーキットなどのスポーツ走行、レース・ユースなどに定評がある。


GSX-R1000の外観(写真:スズキ)

一方、GSX-S1000シリーズでは、同系のエンジンを搭載するが、最高出力を150PSに抑え、そのぶん、低回転から高回転域まで全域でトルクフルな特性を実現。市街地やツーリングなどでも扱いやすいことが特徴だ。


GSX-S1000の外観(写真:スズキ)


GSX-S1000GTの外観(写真:スズキ)

そんなシリーズ最新作となるGSX-S1000GXは、スズキによれば、スポーツツアラーとアドベンチャーモデルを融合させたクロスオーバーバイクという位置付けとなる。いわば、オンロードでの快適性を重視したスポーツツアラーと、オフロードでの高い走破性を持つアドベンチャーモデルの「いいとこ取り」をしたモデルだ。

外観は、スポーツバイク並みの性能を体現したアグレッシブなシルエットを採用。それに、アップライトな乗車姿勢を組み合わせることで、ツーリングでの快適性も追求する。また、ウインドスクリーンは、3段階の高さ調整が可能。標準装備のナックルカバーなどと相まって、高い防風効果も実現する。

電子制御を採用したサスペンション


GSX-S1000GXのフロントサスペンションとブレーキシステム(筆者撮影)

足まわりでは、スズキの2輪車で初となる電子制御サスペンションを採用。「S.A.E.S.(スズキ アドバンスド エレクトロニック サスペンション)」と呼ばれるシステムを搭載し、速度や路面状況、ブレーキによる車両の姿勢変化に応じて、サスペンションの減衰量やプリロードを自動調整することを可能とする。

また、このS.A.E.S.に車載IMU(慣性計測装置)などのデータを組み合わせることで、路面の凸凹などを検知し、サスペンションの制御量を自動で切り替えるプログラム「SRAS(スズキ ロード アダプティブ スタビライゼーション)」も搭載。これにより、未舗装路での振動を抑えたスムーズな乗り心地と、オンロードでのダイナミックなスポーツ走行を両立する。


GSX-S1000GXのメーターおよびステアリングまわり(筆者撮影)

ほかにも出力特性、トラクションコントロールのレベル、S.A.E.S.の減衰設定を統合管理する「SDMS-α」も採用。コーナーで車体が傾いたときにもABSを作動させることができる「モーション トラック ブレーキシステム」など、多彩な電子制御機能を搭載する。

新型GSX-S1000GXは、これら最新の電子制御システムにより、天候などさまざまな状況はもちろん、オンロードやオフロードといった幅広い路面状況にも対応。また、ライディングの経験やスキルなどに左右されず、つねに高いパフォーマンスを気軽に楽しめるマシンに仕上がっているという。

ボディサイズ比較

そんな両モデルだが、まずは車体サイズや車両重量などを以下に比較してみよう。


CRF1100Lアフリカツインのサイドビュー(写真:本田技研工業)


GSX-S1000GXのサイドビュー(写真:スズキ)

【車体サイズ・車両重量比較】

●CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツES
・全長2305mm×全幅960mm×全高1475mm(スクリーン最上位置1530mm)
・ホイールベース1570mm
・シート高840mm(ローポジション時820mm)
・車両重量243kg【253kg】

*【 】内はDCT仕様車

●CRF1100Lアフリカツイン<s>
・全長2330mm×全幅960mm×全高1485mm(スクリーン最上位置1540mm)
・ホイールベース1575mm
・シート高870mm(ローポジション時850mm)
・車両重量231kg【242kg】

*【 】内はDCT仕様車

●GSX-S1000GX
・全長2150mm×全幅925mm×全高1350mm
・ホイールベース1470mm
・シート高830mm
・車両重量232kg

全長や全幅、全高などの車体サイズは、GSX-S1000GXのほうが全体的にコンパクトだ。駐車場での取りまわしなどは、よりやりやすいだろう。また、シート高も低めなので、足着き性も良好なことがうかがえる。ただし、CRF1100Lアフリカツインも、シートの高さを2段階で調整できるアジャスタブルシートを備えている、とくにアドベンチャースポーツESでは、ローポジション時のシート高が820mmとなるから、身長165cmの筆者のように、体の小さなライダーにはありがたい。

一般的なアドベンチャーモデルでは、200kgを超す重たい車体に加え、シート高を高めに設定しているモデルも多い。そうしたバイクの場合、身長が低く、体格の小さなライダーなどにとっては、乗り降りや赤信号で停止するときなど、足を着きにくく、停止時に車体を支えるのもかなり苦労する。だが、両モデルは、そうした小柄な体格ライダーが乗ることも考慮した作りや設定を施しているといえる。


CRF1100Lアフリカツインのリアビュー(筆者撮影)

実際に、筆者は、東京モーターサイクルショーの会場で両モデルの展示車両(前後輪を固定した状態)にまたがってみた。CRF1100Lアフリカツインは、アドベンチャースポーツES(DCT)で試したが、ワイドで高いグリップ位置となるバーハンドルなどにより、上体が起き気味となるポジションは、長距離でも疲れにくいことをうかがわせる。また、足着き性も片足ならカカトが少しだけ浮く程度で、車体を支えにくい感じはしない。

一方、GSX-S1000GXは、片足ならカカトがベッタリと着き、心理的な余裕度はさらに高い感じがした。232kgの車両重量でも、車体を支えやすいことが予想できる。また、ポジションは、こちらも上体が起き気味となり、市街地から高速道路の巡航まで、かなり楽に走れることが予想される。なお、両モデルともに、可変式のフロントスクリーンがあるため、アップライトなポジションでも、体に走行風を受けにくく、長旅でも快適で、疲労も少ない印象を受けた。

エンジン・燃費


CRF1100Lアフリカツインのエンジン(筆者撮影)


GSX-S1000GXのエンジン(筆者撮影)

次は、エンジン性能や燃費などを見てみよう。

【エンジンスペック・燃費】

●CRF1100Lアフリカツイン
・排気量・形式:1082cc・水冷4ストローク直列2気筒
・最高出力:75kW(102PS)/7500rpm
・最大トルク:112N・m(11.4kgf-m)/5500rpm
・変速機:常時噛合式6段リターン【電子式6段変速】
・燃料タンク容量:アドベンチャースポーツES=24L、<s>=18L
・燃費:WMTCモード値19.6km/L

*【 】内はDCT仕様車

●GSX-S1000GX
・排気量・形式:998cc・水冷4ストローク直列4気筒
・最高出力:110kW(150PS)/11000rpm
・最大トルク:105N・m(10.7kgf-m)/9250rpm
・変速機:常時噛合式6段リターン
・燃料タンク容量:19L
・燃費:WMTCモード値17.0km/L

GSX-S1000GXのエンジンは、排気量こそCRF1100Lアフリカツインより小さいが、もともとが、ハイスペックなスポーツバイク用の4気筒なので、最高出力は48PSも高い。ただし、最大トルクはCRF1100Lアフリカツインのほうが大きく、より低い回転数で発生する。しかも、前述のとおり、CRF1100Lアフリカツインは、先代モデルの105N・m(10.7kgf-m)/6250rpmより最大トルクを拡大。発生回転数もより低くなっている。より低回転域から発生する太いトルク特性により、市街地はもちろん、悪路などでも、さらに扱いやすい特性となったことがうかがえる。

対して、GSX-S1000GXは、高回転まで一気に吹け上がる直列4気筒ならではのパワー特性が魅力だろう。高速道路やワインディングなど、主にオンロードで高揚感のある加速性能を味わうことができるといえる。

一方、燃費の比較では、CRF1100Lアフリカツインのほうが、スペック上ではやや上だ。とくに24Lもの大容量の燃料タンクを装備するアドベンチャースポーツESであれば、1回の満タンで470km以上の航続距離となる計算だ。また、CRF1100Lアフリカツイン<s>の燃料タンクは容量18L。容量19LのGSX-S1000GXの燃料タンクより、少しだけ小さい。

だが、スペック上の計算では1回の満タンで走行できる航続距離は、CRF1100Lアフリカツイン<s>で約352km、GSX-S1000GXは約323kmとなる。もちろん、燃費は、走行時の気温や天候、乗り方などによっても変わるため、一概には言えない。だが、例えば、地方など、ガソリンスタンドの少ないエリアを旅する際、ガス欠の心配がより少ないのは、CRF1100Lアフリカツインのほうであることが予想できる。

ちなみに、CRF1100LアフリカツインのDCT搭載車は、基本的にクラッチレバーやシフトペダルの操作が不要。いわゆるオートマバイクだが、「ATモード」に加え、スポーティな走りに対応する「MTモード」も設定する。このモードでは、左ハンドルに装備する「シフトアップスイッチ(+)」と「シフトダウンスイッチ(−)」を駆使することで、1速〜6速を選択できるマニュアル運転も可能。まるで、4輪車のパドルシフトのような操作を楽しめるのだ。また、ATモードにも一般走行に適した「Dモード」と、スポーティな走行に適した3つのレベルが選べる「Sモード」を用意。AT車でありながら、スポーツバイク並みの爽快な走りも堪能できる。

電子制御システム


CRF1100Lアフリカツインのフェイスデザイン(筆者撮影)

両モデルでは、最新の電子制御システムを搭載することも注目点だ。GSX-S1000GXについては、先述のとおりとなる。一方、CRF1100Lアフリカツインも、ライダーのアクセル操作に対しリニアに反応する電子制御式スロットルのスロットルバイワイヤや、緻密な車体コントロールを実現する6軸IMUなどを搭載。後輪のスリップを検知すると出力特性を最適に制御するトラクションコントロールの「HSTC(ホンダ セレクタブル トルク コントロール)」や、制動時のロックを防ぐABSなど、さまざまな機能を的確にコントロールし、つねに安定した走りを実現する。

また、CRF1100Lアフリカツインでは、日常のライディングから本格なオフロード走行まで、さまざまな道に対応する6タイプのライディングモードも設定。荷物を満載した長距離ツーリングを想定した「TOUR(ツアー)モード」、幅広いシーンに対応する「URBAN(アーバン)モード」、フラットなダート道などに最適な「GRAVEL(グラベル)モード」、悪路で高い走破性を発揮する「OFF ROAD(オフロード)モード」を用意。さらにライダーの好みに応じた設定ができる「USER(ユーザー)モード」も、2タイプまで登録可能だ。

また、CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツESとGSX-S1000GXは、いずれもショーワ製の電子制御サスペンション「EERA(イーラ)」を搭載。さまざまな走行シーンに応じ、最適なサスペンション特性を実現する。しかも両モデルでは、選択した各ライディングモードに応じ、サスペンション設定も連動。パワー特性だけでなく、足まわりや乗り心地も、状況などに応じた設定を自動で行ってくれる。さらに、両モデルは、サスペンション特性のみを細かく調整できる機能もあり、より幅広いライダーのニーズに対応している点も特筆ものだ。

タイヤの比較


CRF1100Lアフリカツインのタイヤ&ホイール(筆者撮影)

両モデルでは、装着するタイヤのサイズやタイプなどでも、それぞれの個性がわかる。まず、CRF1100LアフリカツインのアドベンチャースポーツESでは、タイヤサイズがフロント110/80R19、リア150/70R18で、CRF1100Lアフリカツイン<s>はフロント90/90-21、リア150/70R18だ。いずれも後輪に比べ、前輪のタイヤがより大径化されているが、これは、例えば、悪路にあるギャップなどを乗り越えやすくするためのもので、オフロード車などでは定番の設定だ。

また、フロント21インチを採用するCRF1100Lアフリカツイン<s>は、悪路での走破性が高いブロックパターンのタイヤを装着。21インチから19インチに変更され、よりオンロードでの快適性を追求したアドベンチャースポーツESのタイヤは、ロングライフでオンロードでのツーリングに最適なタイプを採用する。

一方、GSX-S1000GXのタイヤサイズは、フロント120/70ZR17、リア190/50ZR17。前後17インチのタイヤはスポーツバイクの定番で、タイプも溝が比較的少ないぶん、舗装路でのグリップ性能や旋回性の高いスポーツ系モデルを採用。こちらは、主にオンロードで軽快に走れるタイヤをセレクトしているといえる。

こうした違いにより、GSX-S1000GXが最もオンロード寄りの設定で、CRF1100Lアフリカツイン<s>が最もオフロード性能を重視した仕様であることがわかる。また、CRF1100LアフリカツインのアドベンチャースポーツESは、これらの中間的な位置付けとなるだろう。

ほかにも最低地上高の設定により、各モデルが持つキャラクターの違いがわかる。CRF1100Lアフリカツイン<s>は250mmで、アドベンチャースポーツESは220mm。GSX-S1000GXは155mmと最も低い。基本的に、最低地上高を高くしたモデルのほうが、オフロードの凹凸で車体がヒットしにくい。最も高いCRF1100Lアフリカツイン<s>は、こうした面でも悪路走行を最も重視した仕様だといえる。一方、最低地上高が一番低いGSX-S1000GXは、例えば、高速道路などでの巡航で、車体が低いぶん、より安定性が高いといえる。そして、CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツESは、こうした点でも、中間的な仕様であるといえる。

このように、両モデルとも、オンロードとオフロードの両方に対応するが、舗装路と悪路のどちらをより重視しているかによって、装備や車体のディメンションなどにも違いが出ているといえる。

2モデルの価格設定


GSX-S1000GXのリアビュー(筆者撮影)

なお、GSX-S1000GXの価格(税込)は199万1000円。一方、同じく電子制御サスペンションを搭載するCRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツESは、6速MT車で194万7000円、DCT搭載車は205万7000円だ。GSX-S1000GXは6速MT仕様のみなので、オートマ機構のDCTを選ばなければ、CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツESよりも安くなるが、それでも価格差はわずかだといえよう。

ちなみに、CRF1100Lアフリカツイン<s>では、6速MT車で163万9000円、DCT搭載車は174万9000円。電子制御サスペンションを持たないぶん、価格はもっと安くなる。ただし、雨天時や悪路、大量の荷物を積んだ際など、より幅広いシーンで快適かつ安定感ある走りを手軽に味わえるのは、やはりスイッチひとつでサスペンションの設定を自動調整してくれる電子制御サスペンション搭載車のほうだろう。CRF1100Lアフリカツイン<s>は、GSX-S1000GXと比較すると約24万円〜約35万円安。アドベンチャースポーツESと比較すると約30万円安となるが、その差をどう捉えるかは、ユーザーの好みなどによるといえる。

同じツアラーバイクでも異なる個性


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いずれにしろ、もし、オンロードだけでなく、ある程度ハードなオフロード走行も楽しみたいのならCRF1100Lアフリカツイン<s>が最適だ。一方、GSX-S1000GXやCRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツESは、オンロードを心地良く走り、目的地のキャンプ場などで、ちょっとしたフラットダートなどを走る用途に向いているバイクといえるだろう。

最近は、野山やキャンプへ行くアウトドア派ライダーも増えているが、そうしたユーザーに対応するのがこれらモデル群。その意味で、いずれも、まさに今のトレンドに合致している点は同じだといえる。

ともあれ、各メーカーからさまざまなモデルがリリースされ、群雄割拠の戦国時代ともいえるのが大型ツアラーのジャンル。2024年ブランニューとなるこれらモデルたちが、今後、いかに競合・他社モデルと対抗し、市場からどのような支持を得るのかが興味深い。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)