夏に向けてレジャー計画を立てている妊婦さんの中で、海外旅行が気になっている人も少なくないはず。“安定期に入っているし、体調もいいから大丈夫かも⁈”って思っていても、妊娠中であることに変わりません。そこで、妊娠中の海外旅行について産婦人科医の三井先生にお話しを伺いました。

国内・海外に限らず、妊娠中の旅行はすべて自己責任

―― 妊婦さんに海外旅行について相談されることはありますか?

「多くはありませんが、実際に相談されることはあります」(三井先生)

―― 先生はどんなアドバイスをされますか?

「国内、海外に問わず、まず前提にあるのは“自己責任”ということ。妊娠していない時の元気さとはまったく違う状態ですから、移動中や旅行先で思いがけず体調を崩してしまうこともあります。例えば、長時間同じ姿勢で飛行機に乗っていれば血栓症になるリスクが上がります。海外に行くと気持ちも高まり、興奮して、いつもの自分とは違うテンションになりやすいことで、体調が変化しやすくなります。反対することはできませんが、手放しでいいということはありません」(三井先生)

―― やはり、海外旅行はリスクがありますね。

「環境も変われば、食べるものだって変わります。リスクがない健康な妊婦さんでも、例えば出血や腹痛など、突発的なトラブルは誰にでも起こりえます。それが、海外で起きたらどのように対応するのか? ということ。滞在先の近くに妊婦を受け入れる病院があるのか、今までの妊娠経過や薬を飲んでいるのなら現地の言葉で薬の内容をしっかり説明できるかなど、事前に調べること、用意すべきことがありますね」(三井先生)

“安定期だから”、“自分は元気だから”は、保証にならならい

―― 先生の患者さんで実際に海外旅行に行かれた妊婦さんはいらっしゃいますか?

「多くはありませんが行かれ方もいますし、先日も相談を受けました。“自分が元気だから、大丈夫だろう”って思っているかも知れませんが、どこにも保証はないことはしっかり説明しています。かかりつけの医師とよくよく相談した上で、それでも海外旅行に行きたいのかどうかを考えてほしいです。妊娠中に海外旅行に出かけた方がいるとしても、それは“たまたま何も起きなかった”だけです。あらゆるリスクを考えて、慎重に検討してください」(三井先生)

自己責任といっても、その責任の大きさがあまりにもあることがよくわかりました。海外旅行に行きたい気持ちはよくわかりますが、もしものことを考えると、あまりにもリスクがあると言えます。元気な赤ちゃんを産んでから、子連れ海外の計画も楽しそうですよ!

教えてくれたのは…国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 不育診療科 診療部長 三井真理先生

【PROFILE】日本大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。日本周産期・新生児医学会認定 周産期(母体・胎児)専門医・指導医。日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医。

取材・文=夏目 円
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