マサチューセッツ工科大学とテキサス大学オースティン校の研究チームが、直径約24.26mmの25セント硬貨や直径約22.6mmの百円硬貨とほぼ同じ大きさの極小3Dプリンターのプロトタイプを開発しています。

Silicon-photonics-enabled chip-based 3D printer | Light: Science & Applications

https://www.nature.com/articles/s41377-024-01478-2



Researchers demonstrate the first chip-based 3D printer | MIT News | Massachusetts Institute of Technology

https://news.mit.edu/2024/researchers-demonstrate-first-chip-based-3d-printer-0606

World's first chip-based 3D printer is smaller than a coin - benefits from having no moving parts | Tom's Hardware

https://www.tomshardware.com/3d-printing/worlds-first-chip-based-3d-printer-is-smaller-than-a-coin-benefits-from-having-no-moving-parts

研究チームが開発した極小の3Dプリンターは、可動部品がないことが特徴で、直接部品などをプリントするわけではありません。この3Dプリンターでできることは、照射されたレーザーを、特定の波長の光が当たると急速に硬化する液体樹脂に収束させることです。



アームやモーターを使ってビームの焦点を変えるのではなく、3Dプリンター自体がビームの焦点を動かし、目的の形状を創り出すことができます。実際に研究チームは、開発した3Dプリンターを使って、わずか数mmのマサチューセッツ工科大学のロゴである「MIT」を作り出しています。なお、印刷に要した時間はわずか数秒とのこと。



研究チームのサブリナ・コルセッティ氏は「光硬化性の樹脂では、赤外線の波長で硬化させることが困難です。これまでの極小の3Dプリントでは、LiDAR用の集積型光フェーズドアレイシステムが用いられてきました。しかし、今回の3Dプリンターでは、標準的な光化学とシリコンフォトニクスの中間で、可視光で硬化する樹脂と可視光発光チップが使われています。つまり、2つのテクノロジーを融合させ、まったく新しいアイデアが生み出されたというわけです」と報告。



研究チームのイェレナ・ノタロス氏は「このシステムは、3Dプリンターとは何かを根本から見直す物です。もはや、研究室の椅子に座ってオブジェクトを作成する巨大な装置ではなく、片手で持ち運び可能なものとなっています。そこから生まれる新しいアプリケーションや、3Dプリンティングの分野が今後どのように変化するかを考えると、とてもワクワクします」と述べています。

研究チームは、今回開発された3Dプリンターについて、「臨床医がオーダーメイドの医療機器コンポーネントを作成したり、エンジニアが現場で迅速なプロトタイプを作成したりできるようにするなど、さまざまな用途が想定されます」と推測しました。

また、海外メディアのTom's Hardwareは「整形外科医は3Dスキャナーでスキャンした患者の骨折状況を元に、今回の3Dプリンターを使って骨折からの治癒を助けるカスタムの骨インプラントを作成することができます」と語っています。

さらに、チームがこのコンセプトを実現可能な製品に変えることに成功すれば、エンジニアや医師、さらには救急隊員など、誰でも従来の3Dプリンターを持ち運ぶことなく、その場でソリューションを作成することができるとされています。

研究チームは、今後3Dプリンターに対して可視光のホログラムを照射することで、わずか1ステップで3Dプリンティングを可能にするチップの開発を進める予定で、ノタロス氏は「これを実現するには、まったく新しいチップ設計が必要です。私たちは今後もこの究極のデモンストレーションに向けて取り組み続けます」と表明しました。