ファーウェイは「Pura 70シリーズ」の発売により、「Mate 60シリーズ」とのダブルハイエンド戦略を復活させた(写真は同社ウェブサイトより)

中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)のスマートフォン事業が、(アメリカ政府の制裁を克服して)製品ラインナップの「正常化」を成し遂げつつある。

同社は4月18日、新型ハイエンドスマホ「Pura 70シリーズ」を発売した。第1弾として投入した「Pura 70 Pro」と「Pura 70 Ultra」のメーカー希望価格は、前者が6499元(約13万8620円)から、後者が9999元(約21万3274円)からとなっている。

ファーウェイはもともと、ハイエンドスマホの「Mateシリーズ」と「Pシリーズ」を同時に展開するダブルハイエンド戦略を採っていた。Puraシリーズは、そのうちPシリーズの名前を変更したものだ。

今回発売した2機種のうち、上位版のPura 70 UltraはOS(基本ソフト)にファーウェイが独自開発した「鴻蒙(ホンモン、英文名はハーモニーOS)」のバージョン4.2を採用。高解像度のトリプルカメラや衛星電話、AI(人工知能)アプリケーションなどの最新機能を満載している。

「ダブルハイエンド」が復活

なお、ファーウェイはPura 70シリーズの発表イベントは開催しなかった。また、同シリーズが搭載する半導体の詳細も公表していない。

ファーウェイは2023年8月、心臓部に自社設計の高性能半導体を搭載したMate 60シリーズを発売。5G(第5世代移動通信)に対応したハイエンドスマホを約2年ぶりに再投入した。今回のPuraシリーズの発売により、同社のダブルハイエンド戦略が復活した格好だ。

MateシリーズとPureシリーズのほかにも、ファーウェイは女性向けの折り畳み式コンパクトスマホ「Pocketシリーズ」や若者向けの「novaシリーズ」の新機種をすでに投入済みだ。Pureシリーズの発売で、同社のスマホ事業はフルラインナップの再建を果たしたと言える。

ファーウェイは、かつてはスマホのグローバル市場のトップブランドだった。市場調査会社のIDCのデータによれば、同社は2020年4〜6月期に全世界で5580万台を販売(メーカー出荷ベース)し、約20%の市場シェアを獲得。韓国のサムスン電子を抜いて世界首位に躍り出た。


ファーウェイはアメリカ政府の制裁により失った市場シェアを奪回しつつある。写真は中国のファーウェイ・ブランド専売店(同社ウェブサイトより)

だが、アメリカ政府の制裁強化の影響により、ファーウェイの天下は長続きしなかった。2020年9月以降、5Gに対応した高性能半導体の調達ルートをふさがれてしまったためだ。

IDCのデータによれば、ファーウェイのスマホ販売台数は2021年1〜3月期に世界のトップ5から転落。中国市場でも2021年4〜6月期には6位以下に沈んだ。

中国でトップ5に返り咲き

しかしファーウェイは諦めなかった。アメリカ政府の制裁を回避しながら、自社設計の半導体の製造を再開することに成功し、Mate 60シリーズに搭載。その後も5Gスマホの製品ラインナップを拡大し、失った市場シェアを奪回しつつある。

市場調査会社のカナリスのデータによれば、中国市場では2023年10〜12月期のスマホの総販売台数が前年同期比1%減少する中、ファーウェイは逆に販売台数を同47%も伸ばした。その結果、同四半期は約14%の市場シェアを獲得し、中国市場で第4位とトップ5に返り咲いた。


本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら

「2024年の中国のスマホ市場は、前年比1%前後拡大すると予想している。ファーウェイに関しては、製品ラインナップの充実でさらなる販売増加が見込め、(アップルなど)競合他社の市場シェアを奪うことになるだろう」

カナリスのアナリストの劉芸璇氏は、財新記者の取材に対してそんな見通しを示した。

(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は4月19日

(財新 Biz&Tech)