タンス預金50兆円が狙われ、新NISAに課税…国民を地獄に落とす「マイナと銀行口座ひも付け」増税維新の思惑通り

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 4月1日から預貯金口座のマイナンバー(個人番号)付番がスタートした。国が災害発生の際や相続時の利便性をメリットにあげる制度なのだが、自分の財産が「丸裸」にされると不安視する向きは少なくない。マイナンバーとの紐付けは義務ではないものの、金融機関は口座開設などの際に届け出を伺っている。作家で元プレジデント編集長の小倉健一氏が解説するーー。

「マイナンバー」と銀行口座などへのひも付けが進められている

「マイナンバー」と銀行口座などへのひも付けが、4月1日から「(預貯金)口座管理法」によって進められている。

「口座管理法」では、金融機関に、新規の口座開設の際、マイナンバーと口座をひも付けるかどうかを利用者に確認することを義務化するものだ。実際にひも付けるかどうかは利用者が任意で選ぶことができる。同法が成立した際に、メリットとして強調されたのが、相続の発生や災害時に、口座がどの金融機関にあるか確認できるようになり、あらかじめマイナンバーと口座をひも付けておけば、相続人による照会が簡略化される。また、行政手続などの効率化にも資するとも言われていた。

 任意で選ばれているというが、「円満相続税理士法人」副代表の税理士・大田貴広氏は、FRIDAYデジタル(4月7日)の取材に対して、<銀行に口座開設する場合、マイナンバーの提出は任意とされていますが、マイナンバーカードか通知カードと本人確認書類のどちらかを出してくださいとあります。このとき、マイナンバーカードか通知カードを銀行に提出していると、マイナンバーは自動的に紐づけられます>と述べている。

本当に政府は「所得・資産情報」が国に伝わらないのか

 NHKニュースオンライン(4月20日)に掲載されたQ&Aによれば、<預貯金口座をひも付けると、所得・資産の情報が国に伝わる?>のかという「Q」に対し、<これまでも国が預貯金者の口座情報を確認できるのは、法令に基づいて、必要な社会保障の資力調査や税務調査などを行う場合に限られています。これら調査などにおいて、マイナンバーを使って本人の預貯金口座を特定・確認する可能性はあるものの、これら調査など以外で国が預貯金者の口座情報を確認することはできません>という「A」が載っている。

 また畳み掛けるように、「マイナンバー制度と情報管理に詳しい」という紹介文が掲載されている影島広泰弁護士のコメントとして、<行政に口座の情報を監視されてしまうのではないかといった不安の声もみられますが、すでに行われていた行政手続きにマイナンバーを活用できるように変わったというものです。例えば、税務調査ですとか、社会保障で本当に資格があるかどうかを調査するということであれば、それは今までもやってきたことですから過度に不安になる必要はないと思います>が掲載されている。

政府が違法な個人情報の盗み見をしないと考えているのか理解できない

 この何を根拠に、「マイナンバー制度と情報管理に詳しい」というこの弁護士が、政府が違法な個人情報の盗み見をしないと考えているのか筆者は全く理解できない。実際に、総務省、厚労省データなど、いくらでも覗き見できるという豪語した元政府高官に筆者はであったことがある。その人物は、「法務省データ」は取得が難しいとも言っていた。

 古くは、私立探偵が、役所の担当者に賄賂を送って出生地などの個人情報を得ていたことぐらいは国民の誰しもが知るところだろう。公務員は絶対に法を犯さないと信じて疑わないというのは、あまりにも現実を知らない弁護士だろう。政府が悪いことをしないのではない、バレていないだけなのだということを前提に行動をしたほうがよいだろう。

 デジタル庁のアンケート(2023年11~12月)では、<マイナンバーカードを取得しても普段は持ち歩かない人が40.1%>だったという。産経新聞(4月21日)によれば<カードを取得したと回答した約1万7000人のうち保険証としての利用を申し込んだのは54.3%。実際に利用したことがあるのは、このうち38.5%にとどまった。理由は、通っている医療機関がマイナ保険証に対応していないことや「メリットを感じない」などだった>という。

 政府は、今年12月に現行の健康保険証を廃止し、カードに機能を持たせたマイナ保険証に一本化するという。筆者は、これにも自分の経験から不安がある。

モラルハザードは起きるものだ

 筆者は、20代の多くの時間を闘病生活に費やしている。仕事を1年半ほど休み、その休みのうち、半年を入院して過ごしていた。事実上の余命宣告も受けていたものの、優れたセカンドオピニオンをしてくれた医者に出会い、病気は完治することとなった。

 入院して、いろいろと考える時間があったことで人生観が変わり、転職をすることを決意した。結果、プレジデント編集部(プレジデント社)で働くことになったのだが、その就職面談をしている最中に、「健康に問題はあるか」と聞かれた。「問題はない」と回答したものの、大いに冷や汗が流れたものである。もし、私の健康状態が行政に一元的に管理されることになったら、多少の利便性は向上する可能性はあるが、他方で、過去の病歴も管理されることになる。病歴が会社に伝わったら、私はプレジデント編集部で働くことができていたかどうか、甚だ疑問である。

 また、プレジデント編集部に入って、週刊誌記者とも付き合いが増えるようになったが、ある日、有名アイドルが「難聴」というスクープ記事はどうやって情報を入手したのかと聞いた。すると、病名はわからないが、その芸能人に処方されている薬に払った薬価をあるルートを通じて入手できるのだという。その薬価から、病名を類推して記事にしたのだと言われた。その手法にびっくりしたものだが、いずれにしろ医療機関でモラルハザードが起きている可能性がある。

銀行口座のひも付けは資産課税の一丁目一番地で維新の思惑通り

 行政は、悪事に手を染めないものだと信じている人は、よほどのお人好しだろう。

 この先、政府が国民に対して行おうとしていることを考えれば、この現在のマイナンバーの銀行口座のひも付けは、資産課税の一丁目一番地であろう。

 資産課税を表立って強く言い出したのは、日本維新の会である。選挙公約で「フローからストックへ」などと唱えてきた経緯がある。つまるところ、何が起きるのかといえば、日本人の資産すべてに課税をするという税制である。それは、今回マイナンバーでひも付けられる銀行口座や郵便貯金をはじめ、不動産、株、住宅、現金などありとあらゆる資産に課税をするというものだ。

維新「増税派と呼ばれても逃げるな」と議員に発破

 維新の藤田文武幹事長は、2021年12月21日に、維新の議員を前にして、

「皆さんにも資産課税に関して、増税派と街中で叩かれることが嫌だからと逃げないで頂きたい」

と発言している。維新は、有権者から増税派と罵られても、強烈に街中でこの資産課税を訴えていこうと発破をかけているのだ。

 ありとあらゆる資産に課税をするということは、ありとあらゆる資産を政府が管理する必要がある。マイナンバーと銀行口座のひも付けは、資産課税とは関係ない、陰謀論だなどと主張する政治家もでてくるであろうが、では、将来の資産課税導入にあたって、どうやって銀行口座を政府は管理するというのだろう。やはり、このマイナンバーを利用しての銀行口座への課税は、将来、確実に起きると考えていた方が良さそうだ。

増税タッグを組んだ維新と自民党

 さきほど、資産課税の対象として、現金と株が含まれていることを指摘したが、これまたマイナンバー同様に不気味な動きがある。

 まず一つは、7月から始まる新しい紙幣の発行である。現在、自宅に眠る50兆円ともいわれるタンス預金は、新しい紙幣を発行し、古い紙幣を流通させなくすることで、強制的に炙り出されることになっていく。これは北朝鮮でも以前に実施された手口だ。

 また、株式や投資信託の配当金や分配金、値上がりで得られた売却益が非課税になるNISA(一般NISAとつみたてNISAをあわせたものを「新NISA」と呼称)も、国民の持つあらゆる資産に課税するという資産課税の仕組みからすれば、当然、課税の対象になる。実際に、自民党の「医療・介護保険における金融所得の勘案に関するプロジェクトチーム(PT)」(座長・加藤勝信前厚生労働相)の初会合で、課税の手続きで確定申告の有無を選べる所得について、社会保険料の徴収に反映させるようにする案が議論されている。

 あらゆる資産に課税しようとする維新と、金融所得を社会保険料として課税しようとする自民と、足並みが揃ったわけである。

国民負担が増えれば経済成長はできない

 どのような名目であれ、国民負担が増えれば、経済成長は抑制されることが日銀(2000)、第一生命研究所(2023)の研究論文で、はっきりしている。フローからストックへの追い出し税制のインパクトがまるで不明である上に、フローに課税しようと、ストックに課税しようと、金融所得に課税しようと、社会保険料名目で課税しようとも、国民負担が増すことは疑いようもない事実であり、国民負担が増えれば経済成長はできないということだ。

 税金をどう取れば国民が許してくれるかなどという、瑣末な議論をやめて、シンプルに、国民負担を減らす議論をはじめてほしい。