ローカル企業の育成なくして日本経済の復活はナシ!? 株価上昇と暮らしの関係
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。 今回のテーマは「日経平均株価」です。
株価上昇と暮らし、直結しているわけではない。
日経平均株価が史上最高値を更新、3月に初の4万円台に乗せたと大きく報道されました。しかし、日本の株価が値上がりしても、景気が良くなった実感を得られない人がほとんどです。
そもそも日経平均株価は、日本全体の企業の株価の平均値ではありません。「日経225」という、日本経済新聞社が東証プライム上場銘柄から選んだ、225の銘柄の平均株価です。幅広い業種から選定されていますが、グローバルに展開する大企業ばかりでベンチャー企業は入っていません。日本は9割以上が中小企業ですから、日経平均株価が上がっても、大企業が海外で儲けて、海外に投資しているという状況で、日本国内の雇用や賃金にダイレクトに反映されるものではないんですね。
今年の春闘では、平均5%超の賃上げ率となりました。しかし、物価上昇を考えると、23か月連続でマイナスとなっている実質賃金がプラスに転じるかはわかりません。にもかかわらず、日銀はマイナス金利の解除や金利の引き上げを決定したため、大変心配です。
企業がなかなか賃金を上げられなかった理由の一つは、給料を上げると社会保険料の負担も増えてしまうからです。売り上げが落ち、給料を支払えない状況に陥っても社会保険料の請求は続きますので、中小企業の経営者は簡単には賃上げすることができません。そんななか、大分県と群馬県は自治体が企業に奨励金や補助金を出し、物価上昇を上回る賃上げに成功しました。いま国がやるべき政策は、消費税の免除や、社会保険料をいったん凍結するなど、市民の負担感を減らし、豊かさを実感させることだと思います。
株価が上がるというのは、会社の財政の健全性や、その事業に対する将来性を見込まれたということです。ただ、いま日本企業の株が海外投資家に買われているのは、「安いから」という理由もあります。せっかく日本株が買われているのだから、大企業は国内に投資をして、雇用を生み、従業員の賃金が上がる流れを作ってほしいと、国も経済界もリクエストしています。足元のローカル企業を育成しなければ、日本の経済は復活しませんし、将来的な成長も見込めないでしょう。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月〜金曜7:00〜8:30)が放送中。
※『anan』2024年5月1日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)