レガレイラは皐月賞を制することができるか? 「弱点」もあるが「追い風」材料もある
GI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)に牝馬のレガレイラ(牝3歳)が参戦することで、競馬ファンの間でにわかに注目を集めている馬がいる。
ファンディーナである。同馬も牝馬ながら2017年の皐月賞に挑戦。単勝2.4倍という断然の1番人気に推された。
デビュー以来、3戦3勝。前走のGIIIフラワーC(中山・芝1800m)では後続に5馬身差をつける圧勝劇を演じた。勝ち時計も中山で開催された同レースの、レースレコード(当時)をマークした。
その圧巻のレースぶりと、牡馬にズバ抜けた存在がいなかったこともあって、皐月賞ではダントツの支持を得た。だが、奮闘虚しく7着という結果に終わった。
牝馬が最後に皐月賞を勝ったのは、戦後まもない1948年のヒデヒカリ。1984年のグレード制導入後では、牝馬の出走自体、ファンディーナを含めて3頭しかしない。無論、勝ち馬もおらず、ファンディーナが馬群に沈んだときは、牝馬にとって皐月賞の壁は相当高い、と誰もが思った。
しかし、その"高い壁"に今回、レガレイラが挑戦状を叩きつけた。はたして、勝算はあるのか――。
皐月賞での戴冠を狙う牝馬のレガレイラ。photo by Yasuo Ito/AFLO
ファンディーナとレガレイラの一番の違いは、ファンディーナは牝馬限定の重賞を圧勝しての参戦だったが、レガレイラは牡馬トップレベルが集う2歳GIを勝ってきた、ということだ。それゆえ、関西の競馬専門紙記者はレガレイラには皐月賞でも勝つチャンスがあると見ている。
「GIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)では、直線で大外をぶん回して、前にいた馬をねじ伏せましたからね。あの競馬で勝てるのは、能力が高い証拠です。
実際、勝ち時計は同レースがGIに昇格して以降、最も速いタイムを記録。しかも、最後の1ハロンで11秒5という破格のキレ味を見せました。
見た目だけでなく、時計のうえでも、能力の高さと終(しま)いの破壊力が裏づけられています。であれば、(レガレイラは)皐月賞を勝つ可能性のある馬、と言えます」
レガレイラに勝算はある。ただ、この専門紙記者の評価はあくまでも「勝つ可能性のある馬」にとどまった。「テッパン」でも、「最も勝ちに近い馬」でもない。
それは、なぜか。
すぐに思い浮かぶ理由のひとつとして、主戦のクリストフ・ルメール騎手がドバイでの落馬事故によって騎乗できなくなったことが挙げられる。今や日本で最も信頼のおける騎手が手綱をとれなくなったこと、そのダメージは計り知れない。
この馬自身の"弱点"もまた、その理由のひとつだろう。先述の専門紙記者が言う。
「ホープフルSもそうでしたが、この馬はスタートがあまりうまくありません。加えて、スタート後のダッシュが鈍く、スピードに乗るまでに時間がかかります。それで、どうしても後方からの競馬になってしまうのです。
おそらく今回も、同じ競馬になるでしょう。乗り替わった騎手が、これまでルメール騎手がしてきた競馬と違うことはできないでしょうしね。その結果、ホープフルSのときと同じように、大外をぶん回して追い込む競馬となります。
ホープフルSではそれでうまくいきましたが、相手がさらに強化される今回はどうか。そこに、大きな不安を感じます」
確かにレガレイラは現状、スタートしてすぐに好位置を取りにいったり、直線に入って内を突いたりといった、器用な競馬ができるタイプではない。
まして、名手ルメール騎手が手綱を取ったホープフルSで、あれだけ鮮やかな勝ち方を披露している以上、「今回は違う競馬を」というわけにもいかないだろう。もし違った競馬をして負けたら、どんな非難を浴びせられるか......。そのことを考えたら、なおさら余計なことはできないはずだ。
必然的に、皐月賞でもこれまでと同様、後方からの競馬になる。
そうなると当然、懸念が生まれる。競馬にはよくある"末脚の不発"である。"不発"とまではいかなくても、何らかの理由によって"追い込んで届かず"あるいは"脚を余す"といったことは考えられる。つまり、レガレイラの競馬自体、とてもリスキーなのだ。
そして、現段階ではそのリスクを払拭するだけの信頼が、この馬には置けない。とすれば、専門紙記者の評価が「勝つ可能性のある馬」にとどまったことも納得である。
しかし一方で、レガレイラにも"追い風"と言える材料がある。先の専門紙記者が説明する。
「皐月賞の出走メンバーを見渡してみると、結構前に行きたい馬がそろっています。少なくとも、このメンバーでスローになることは考えづらいです。
要するに、レガレイラにとってプラス材料となるのは、ペースです。ある程度速い流れになれば、レガレイラにはもってこいの展開。そうなれば、勝機は十分あるでしょう」
現代競馬は、牝馬が強い時代にある。ここ十数年の間に「女傑」「名牝」と称された牝馬たちが、牝馬にとってはこれまで"壁"とされてきたものを突破し、さまざまな"常識"を覆してきた。
レガレイラの皐月賞挑戦は、そういった流れのなかにある。
レガレイラは"牝馬の時代"に新たな1ページを刻むことができるのか。歴史的な一戦から目が離せない。