「それでもリニアは通らない…」 失言辞任の川勝平太県静岡県知事が選挙で「無双しまくったワケ」

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結論から言ってしまえば、リニア開業は困難を極める。静岡県の川勝平太知事が辞職してもだ……。

同知事は4月1日に行った新規採用職員向けの訓示で

「県庁はシンクタンクだ。毎日毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違い、基本的に皆さま方は頭脳、知性の高い方たち。それを磨く必要がある」

と発言。批判が殺到し、2日に6月議会で辞任すると突如表明した。

3日の記者会見では2つの辞職理由に言及。1つは先の失言で、もう1つはリニア問題に一定のメドがついたことを挙げた。川勝知事は

「この段階でリニアの問題が一区切りというか、ちょっと立ち止まるしかない状態になった。従来とは違うことになった」

と、JR東海がリニア中央新幹線の’27年開業を断念したことがあると述べた。

これに実業家の堀江貴文氏はXで

《邪魔して満足って事なのか。ほんと迷惑だな》

と猛批判。元財務省官僚の高橋洋一氏も自身のユーチューブ動画で

「延期はこの人のせいだよね。この人がいなくなったら、少なくとも前よりは良くなるだろうね」

とコキ下ろした。

他県の人から見れば、その通りだろう。だが、川勝知事が初当選した’09年を除く県知事選で圧勝し続けていることを忘れてはならない。地元メディア関係者は

「川勝知事の舌禍は今に始まったことではなく、過去には『県議会にはヤクザ、ゴロツキが多い』や『御殿場にはコシヒカリしかない』と暴言を吐いたこともある。それでも選挙をやればワンサイドゲーム。それだけ静岡県民に支持されているから恐ろしい」

と語る。これに前出の高橋氏は

「選ばれる理由がわからない。民主主義といえば民主主義だけど。選んじゃった静岡県のせい、県民のせいでもある」

と言い放ったが、川勝知事の“強さ”の神髄を分析せずして、打倒は不可能だ。

ジャーナリストの辛坊治郎氏は自身のラジオや関西の番組で、静岡県民の大半がリニアの建設計画に反対で、川勝知事がJRと大ゲンカしてまで

「潰そうとしているからだ」

と指摘。同知事はリニア反対の理由について、大井川の水質、供給量の変化や南アルプスの環境問題を挙げている。これに加え、辛坊氏は

「東京と中部地区、大阪地区を将来的に結ぶ大動脈が静岡を通っていない。そこに駅もないということに不快感を感じていたのだろうか? 少なくとも、そういう不快感を持つ静岡県の世論を受けて、知事をやっていたということなのかしら?」

と推察した。

その上で次期県知事選も“リニア反対派”の候補が有利になると断言。

「川勝さんほど頑なじゃなくても、対世論を見た時に、そう簡単に工区の工事に賛成するとは思えないんだよね」

と述べた。静岡出身のマスコミ関係者も同意する。

「川勝知事が辞めたからリニア計画が進むと思ったら大間違い。これまでの知事の発言などで、多くの県民が『工事による環境破壊の影響は大きい』と考えている。

それに静岡県はリニアなど通さなくても、東京、名古屋までひかりで1時間。大阪まで2時間。必要性を全く感じない。作ったはいいが、アクセス悪すぎの静岡空港というトラウマもある」

徳川家康公のお膝元である静岡県は独自のコミュニティーを形成している。

「スズキ」や「ヤマハ」といった大企業創業の地であり、県下には鉄道・バス、スーパーマーケットなどライフラインを網羅する「静鉄グループ」、商社では「鈴与グループ」、エネルギー関連事業を手掛ける「TOKAIホールディングス」、銀行では「静岡銀行」「スルガ銀行」が強い。

「ある意味で独立しているんですよね。だから国からの圧力にも屈しない。リニア計画は事実上の国家プロジェクト。川勝知事がうまかったのは国との対立軸を作ったこと」(同・マスコミ関係者)

川勝知事が街頭演説をすれば、たちまち人であふれ返る。今回の失言はさすがに度が過ぎるが

「聴衆は川勝知事の荒い物言いを笑って聞いている。国会の“失言王”麻生太郎さんに通ずる部分がある」(前出・地元メディア関係者)

もっかライバル陣営は6月辞職後、

「出直し出馬もあるのではないか?」

と警戒感をあらわにしているという。ともかく、リニア問題はまだまだもつれそうだ――。