大川隆法総裁

写真拡大

 宗教法人「幸福の科学」の創始者であり、教祖でもある大川隆法総裁が昨年の3月2日に死去してから、1年が経過した。唯一無二の信仰対象を失った教団の「その後」について、長年取材を続けてきたジャーナリストに尋ねてみると……。

 ***

【写真】東京都内だけでも教団施設はたくさん

 幸福の科学は、1986年に創立されてから順調に会員数を伸ばし、今や「公称1100万人」という大所帯にまで成長を遂げた。もちろん、この数自体は実態と大きくかけ離れているとはいえ、誰もが知る宗教団体の一つであることに違いはなかろう。

 そんな教団を創設し、“唯一神”として組織運営の全てを担ってきたのが、総裁の大川隆法氏であった。ロシアのプーチン大統領からAKB48プロデューサーの秋元康氏まで、様々な著名人の言葉を「霊言」として信者に伝える手法は、広く知られたところだ。また、年間で数十冊という驚異的なペースで書籍を発行し、信者に購入させるというビジネスモデルを作り上げるなど、経営者としての“才覚”も覗かせる。まさに、教義から組織経営までのすべてが、隆法氏一人の手にかかっていたといっても過言ではない組織なのである。

大川隆法総裁

未だ公式の発表はなし

 こうした背景を踏まえると、大川総裁の死去が教団にとってはいかに大変な転機であったか、想像に難くない。しかし、

「実は、教団としては隆法氏の死去を未だに公表していないのです」

 そう明かすのは、宗教ジャーナリストの藤倉善郎氏。長年にわたって幸福の科学を取材し続けてきた一人だ。

「公式には隆法氏の死去に触れることはなく、HP上も『大川隆法総裁』という表記から変更がありません。内々には『肉体的には亡くなったけど、祈りによって復活する』という説明がなされている地域もあるようですが、公式見解は何も出されていないままなのです。当然のことながら、年末の『エル・カンターレ祭』など、教団の重要行事にも総裁は姿を現さなくなっています。死去を知らない信者はいないと思いますが、死後の方針や体制がいつまでもハッキリしない点には、さすがに違和感を抱いている信者も多いはず。それでもなお、表向きはまるで隆法氏の死がなかったかのような運営体制が続いているのが現状です」

 その不可解な対応は、かの宗教法人と比較しても明らかなようで、

「創価学会も、表舞台に出てこなくなった池田大作氏の権威を誇示し続けていた時期がありました。しかし、まだ存命ではありましたよね。一方で隆法氏には明確に死亡した事実があるにも関わらず、それを対外的に認めることなく組織が運営されているわけですから、かなり無理を感じます。また、奇しくも同年に亡くなった池田氏の場合、創価学会では公式の発表がなされ、きちんと葬儀やお別れの会も開催された。幸福の科学にはそういう『区切り』がないので、隆法氏亡き後の運営についての方針は一切定められないまま。幹部たちもどうしていいのかわからない状態が続いているのではないでしょうか」

後継者も不在

 教団にとって、大川総裁の死がいかに“想定外”の出来事だったかが、よくわかる。かような状態ならば、気になるのは信者らの現在の様子だ。

「隆法氏の復活を信じる信者も少なからずいて、各支部で『復活の祈り』は今も続けられています。ただ、会員数の如実な変化とまでは言わずとも、一部では“実働会員”が減っているという話も出てきています。実は隆法氏が生きていた頃から、まじめに提言を読み込む古い信者ほど、隆法氏の霊言などに疑問を抱いて教団と距離を置こうとする現象も見受けられました。逆に言うと、そのような思考をしない、妄信的な信者ばかりが教団に残る傾向が今後も続いていくと、組織としての健全性が一層失われていく可能性もあると思います」

 そんな組織を牽引する新たなリーダーも、未だ不在のままなのか。

「かつては隆法氏の長女・咲也加氏が『次期総裁』として一般向けにも公表されていました。ところが、亡くなる直前の隆法氏が、咲也加氏の“守護霊”を妖怪だと言い出し左遷してしまったため、教団内では影を潜めています。そのため、隆法氏の最後の妻である、総裁補佐の紫央氏が有力候補とされたものの、未だに彼女が後継者として表に出てくることはなく、何より組織をけん引するような能力も権威もないというのが大半の見方です。一応登記上は、幸福実現党の党首を務めていたこともある石川悦男氏が『代表役員代務者』という形で掲載されています。こちらも、文字通りあくまでも代務者。新たなリーダーは依然として不在のままです」

清水富美加氏は今……

 ともすれば、もはや組織は弱体化の一途を辿るように見えるのだが、「そう単純な話ではない」と藤倉氏は続ける。

「一部の会員に距離を置かれ始めたとしても、教団が持つ資産は潤沢であることに変わりはありません。ピーク時にはお布施だけで300億円もの収入があったと言われていますし、全国各地に所有する不動産は400以上にも及びます。教祖不在でも、いきなり破綻はしないでしょう。とはいえ唯一無二の信仰対象を欠いて、組織の勢いが“ジリ貧”状態であるのもまた事実でしょうし、実際に『幸福の科学学園 高等学校』は、年々定員割れの度合いが大きくなっています。このような、収益的に厳しい事業を再編し始めたり、あるいは教団が持つ不動産を売却し始めるような動きが見られたりしたら、一つの転機と見ることはできるかもしれません」

 ちなみに、2017年に幸福の科学に出家したことで知られる、女優の清水富美加氏が“救世主”となることはないのか。

「そもそも清水さんは、隆法氏には担ぎ上げられていたものの、教団内での人望や権威を持つ存在ではありません。自身がパーソナリティを務めていた教団関連のラジオ番組も近年終了していて、また隆法氏の死後は、新作映画の発表もピタリと止んでいますから、教団内での露出さえもが減っている状況です」

 こうした実態を受けて、大川総裁の死去を公表していない事実やその理由、会員数の現状について幸福の科学に問い合わせてみると、

「(大川総裁の死去を公表していない事実やその理由については)お答え致しません。各支部を訪れる会員が減少したという事実はありません」

 教団の行方からは、しばらく目が離せなそうだ。

デイリー新潮編集部