(※写真はイメージです/PIXTA)

写真拡大

英語習得に近道はないと言われていましたが、AIの進化とChatGPTの登場により、近道が開かれました。なぜChatGPTを利用すると、効率よく英語学習を進めることができるようになるのでしょうか。ChatGPTの活用方法について、著書『AI英語革命 -ChatGPTで英語学習を10倍効率化-』(リチェンジ)より、谷口恵子氏が解説します。

ChatGPTが人々に与えた衝撃

「AI革命」の始まり―それは、2022年11月30日のChatGPT登場でした。

それまでのAIにはできなかった自然言語での対話。そして、その返答の賢さに、使ってみた全ての人が驚愕しました。そして、映画などで見たAIと共生する未来が、近い将来、現実になることを予感するようになりました。

特にこれまで「AI」というものに関心がなかった人の間でも、仕事や教育現場において、無視できないレベルの変化が起きそうだ、と感じる人が多く出てきました。

ネット上ではかなり早い段階から、アンテナの高い人たちがChatGPTの活用法をシェアし始めていましたが、徐々にテレビや雑誌なども取り上げ始めました。年齢や職業に関わらず、ChatGPTを始めとする生成AIの情報を得ようとする人がどんどん増えています。「インターネットが誕生して以来の大変化だ」と言う人もいます。

こうした変化についていこうとする人たち、前向きに使って活かしていこうとする人たちがいる一方、変化を恐れて無視したり禁止したりしようとする人たちもいます。いずれにしても、大きな社会への影響があることは間違いありません。

ChatGPTは、自然言語での対話が得意

英語学習について言えば、ChatGPTがリリースされてすぐ、自然言語での対話が得意なことから、特に英語学習に使うと相性が良さそうだと英語指導者の間で話題になりました。実際に英語学習に使ってみると、さまざまな方法で活用できることがわかります。

ChatGPTは英語の指導方法を変え、学習者の独学を効率的にし、教材の自作を可能にします。ChatGPTの活用が広がるにつれて、英語学習は、これまでとはすっかり形を変えていくでしょう。英語習得に近道はないと言われてきましたが、私は今では「ChatGPTを活用することが英語習得の近道」と断言できます。

このAI革命は始まったばかりで、AIの進化はとどまるところを知りません。

今はまだ、ChatGPTやBing、Bardなど、特定のAIツールとして存在している状況ですが、だんだん、私たちが日常的に使うWord、Excel、PowerPointや、Googleドキュメント、スプレッドシートなどのソフトウェアにAI機能が搭載されたり、さまざまなアプリの一部としてAIが使えるようになって、より身近な存在になっていきます。

誰もが「AIを使っている」という意識なしに、AIを使う時代になっていくでしょう。

そうなる前の、このAI黎明期にChatGPTを実際に使ってみることで、とても大事な力を身につけることができると考えています。それは「AIの特性を知り、活用する力」です。それは、これから本格的にやってくるAI共生時代に欠かせない力です。

「AIネイティブ」の誕生と未来について

これから生まれてくる子どもたちは「AIネイティブ」になります。生まれながらにAIが身近にあり、特に学ばなくてもAIの特性を自然と知って、うまく付き合っていくことができるでしょう。

しかし、「AIがなかった時代」に生まれた私たちは違います。

意識的にAIを使い、試行錯誤して、AIをうまく使いこなす方法を学ぶ必要があります。もしかすると、AIがない時代を知っているからこそ、AIネイティブとなる子どもたちに教えてあげられることもあるかもしれません。

しかし、それができるのはAIを使って、その得意なこと、不得意なことを知っている人だけです。

この本を手に取ってくださったあなたは、きっと前向きにAIを活用する方法を知りたいと思っている方だと思います。その好奇心と学習意欲こそが、AI活用力の基礎となります。もうAIがなかった時代に後戻りすることはありません。ぜひ、あなたのその力を活かして、AIと共生する未来を明るいものにしていきましょう。

なぜChatGPTを「英語学習に活用すべき」なのか

ChatGPTを使うと、英語学習の効果を10倍にすることができます。ですから、英語学習をしている人には、どなたにも必ずChatGPTを活用いただきたいのです。これまでに存在した、どんなアプリや英語学習ツール、教材とも比較になりません。極論を言えば、ChatGPTだけを使っても、効果的な英語学習ができます。なぜでしょうか。

ChatGPTは「大規模言語モデル」のAIです。アメリカのOpenAIという人工知能の研究・開発をしている団体が作ったAIツールです。

仕組みとしては、大量の言語データを学習し、それをもとに、確率的につながりやすい言葉を出力して返答しています。いわゆる自然言語処理技術を駆使したAIチャットボットで、まるで人間のように発話を行うことができるのが特徴です。つまり、プログラミング言語や特殊な方法で指示をしなくても、人に話しかけるのと同じような自然な言葉で対話をすることができます。

また、ChatGPTは、英語と日本語のように、複数の言語をまたがって、シームレスに会話ができます。ChatGPTと英会話の練習をしている最中にわからない単語が出てきたら「exceedはどういう意味ですか?」と日本語で聞けば、「ここでのexceedは『超える』『上回る』という意味です」というように、日本語で説明してくれます。

そして、とても複雑なリクエストや質問にも答えてくれます。今までにもアレクサやSiriのようなAIを利用したチャットボットはありましたが、それらは簡単な質問に答えてくれるだけで、基本的には一問一答のやり取りだけでした。

しかし、ChatGPTはかなり複雑で高度なやり取りを連続して行うことができます。決して意味を理解して会話をしているわけではないのですが、まるで非常に賢い人と会話をしているような印象を受けます。

ChatGPTで英会話の練習ができる

たとえば「ロールプレイで英会話の練習をしましょう。あなたはカナダから来た観光客で、池袋駅でどの改札に行けばいいのかわからず困っています。私はそこを通りがかり、あなたに英語で話しかけます。How can I help you?」とChatGPTに入力すれば、以下のように返ってきます。

Oh, thank you for stopping. I'm a bit lost right now. I just arrived from Canada and I'm trying to find the right gate at Ikebukuro Station. Could you guide me, please?

このように、ロールプレイで役割を設定し、状況を説明して、英会話練習をすることが可能なのです。そして、会話をどんどん続けていくことができるので、とても実践的な練習ができます。

そのほかにも、条件を設定して英語の長文を作ってもらったり、自分の英作文を添削してもらったり、英語の長文から難しい単語のリストを抽出してもらったり、文法の解説をしてもらったり、テスト問題を作ってもらったりと、ChatGPTを使って本当に幅広い英語学習をすることができます。

ChatGPTの利用により効率的に英語学習ができるワケ

ChatGPTを活用すると英語学習の効果が何倍にもなる大きな理由として、「学習の個別化」が可能になる、ということがあります。ChatGPTは学習者の個別のニーズ、興味関心、レベルに対応してくれるため、従来の学習方法よりも格段に効率的に英語力を上げていくことができるのです。具体的には、以下のような個別化が可能です。

・学習者がわからないことを質問すると答えてくれて、さらに深掘りして質問をすることもできる

・学習者の指定したレベルに合わせて、難易度を調整して英文を作ってくれたり、英会話をしてくれたりする

・学習者の指定した状況でロールプレイをしたり、会話練習をしたりすることができる

・学習者の興味関心のあるテーマで英文を作ってくれる

・学習者が覚えたい単語を入れて英文を作ってくれる

・学習者が受けたい試験に似た練習問題を作ってくれる

これらはChatGPTでできることのほんの一部です。こうした学習の個別化により、学習効果は飛躍的に上がります。もう市販の教材や英会話スクールの用意したカリキュラムに合わせて学習する必要はなく、学習者自身が自分のニーズや興味関心に合わせてChatGPTに教材を作ってもらったり、自分だけの先生になってもらったりできる時代が来たのです

そして、疑問に思ったときにすぐに質問ができて、タイムリーな学習ができるという点も、学習効果の面で非常に大きな意味があります。関心があるそのときにインプットできることで、新しい内容を吸収できる度合いが飛躍的に高まるのです。

また、ChatGPTは、今までの教材や単語帳を使った学習方法に比べて、より実践的でリアルな学習を提供してくれます。

従来の学習方法では、英語教材を読んだり、単語帳を暗記することが主流でした。英会話練習をしたいときには、英会話スクールに通ったり、オンライン英会話を受けたりして、生の英語に触れることも可能ですが、お金がかかりますし、限られた短い時間しかできませんでした。それが、ChatGPTを使うことで、いつでもどこでも、好きなときに好きなだけネイティブの先生と英会話をするような体験ができるようになりました

また、ChatGPTが相手だと、どれだけ間違えても恥ずかしい思いをしないですむので、ちょっとシャイな方や、間違えると恥ずかしいと思ってなかなか話せない方の英会話の練習に最適なツールです。

AIによる学習革命はすでに起こっている

ChatGPTの登場により、英語学習分野に大きな変革が起きることは間違いありません。いえ、もう革命は始まっています。先進的な先生たちは、すでにChatGPTを英語教育の現場で使い始めています。生徒たちに使い方を教えて、自分で学ぶ力を伸ばすことに活かしたり、自分が教材や試験問題を作成する際に活用して、その質を上げたりすることに使っています。

生成AIの技術の進化は止まらず、今後もより高度な英語学習が可能になることが期待されています。これまでは文字でのやり取りが中心でしたが、ChatGPTの公式アプリでは音声会話もできるようになり、よりリアルな英会話の練習ができるようになりました。

急にChatGPTのような便利なツールが出現して、戸惑っている方もいるかもしれません。使い方がわからず、まだ触っていない方もいるかもしれません。でも、自分が生きているこの時代に、このような大きな変化に立ち会えたことは幸運だと思いませんか?

ChatGPTは、あくまで大規模言語モデル、生成AIです。意志を持って積極的に私たちに何かをしてくれるわけではありません。でも、私たちが「こういうことに使いたい」と思って工夫すれば、使い方次第で、できることは無限にあります。

谷口恵子

AI活用コミュニティ

代表