筆者が2年半前に購入し、現在も乗っている初代カイエン。初代モデルは、前期の955型と後期の957型に分けられるが、この車両は957型のカイエンS(筆者撮影)

2021年9月に【ポルシェ「カイエン」100万円中古車を買ってみた】という記事を執筆したが、「格安中古の輸入車なんてすぐ壊れるんじゃない?」「安物買いの銭失い、維持費がすごくかかるんじゃない?」と思った読者も多いだろう。そこで続編として、実際に2年間でかかった維持費を公開しようと思う。

ポルシェ「カイエン」の中古車相場

ポルシェ=超高級車」というイメージも強いが、911シリーズを除けば、意外に手頃な中古車が多い。例えば、筆者が購入した初代カイエンの場合、中古車検索サイトで車両本体価格50万円台〜、支払総額70万円〜で見つけられる。そのほか、「ボクスター」も100万円前後〜、「パナメーラ」「マカン」「ケイマン」なども200万円以下で検索にヒットするので「ポルシェ=高嶺の花」というわけでもないのだ。いずれも新車価格1000万円前後のモデルなので、中古車はかなりお買い得に見える。


筆者の愛車であるカイエンSのサイドビュー。ホイールのみ、純正からOZレーシング製20インチアルミホイールに交換(筆者撮影)

その中でも中古車市場で流通量が豊富で、手頃な車両が多いのが人気SUVのカイエンだ。カイエンは、大きく2002年発売の初代(前期 955型/後期 957型)、2010年発売の2代目(958型)、2017年発売の3代目(現行/959型)に分けられる。

中古車検索サイトを見ると、執筆時点の車両本体価格で初代が58万円〜、2代目が125万円〜、現行となる3代目が558万円〜となっている。3代目はまだ高値を維持しているが、初代や2代目に関しては、国産中古車と変わらない価格で流通していることがわかる。

まずは最も手頃で筆者が購入した、カイエン初代モデルについて簡単に紹介する。執筆時点(2023年12月末時点)、中古車検索サイトでヒットした車両は約140台で、車両本体価格は58万〜330万円だった。100万円以下のモデルの多くは走行距離10万km前後だが、中には走行距離5万km程度の車両もあった。

また、初代モデルには、V6エンジンを搭載したベースグレード「カイエン」、V8エンジン搭載の「カイエンS」、V8ターボエンジンを搭載する「カイエンターボ」などがあり、さらに前期型/後期型があるが、それらでの価格差も少ない印象だ。


957型カイエンSのリアビュー(筆者撮影)

続いて2代目モデル。中古車検索サイトでヒットした車両は160台で、車両本体価格は125万〜750万円だった。高年式かつ低走行のターボやGTSなどは高額だが、2010〜2012年モデルで、多少走行距離の伸びているベースグレードやS、ハイブリッドなどであれば200万円以内で手が届くので魅力的だ。筆者は初代を購入したが、今なら2代目を狙うのもおすすめ。

筆者が購入した初代カイエンの詳細


初代モデルは、前期と後期で排気量が異なる。こちらは957型カイエンSに搭載されているV8・4.8L自然吸気エンジン(筆者撮影)

筆者が約2年半前に購入したのは、初代モデルの中でも、2008年式の後期型と呼ばれるカイエンS。V8・4.8Lの自然吸気エンジンを搭載し、走行距離は9万1500km、車両価格は108万円で3万円値引きしてもらって105万円。車検費用や部品交換などを含む、諸費用込みの乗り出し価格が140万円ほどだった。購入当時で13年落ちだったが、ワンオーナー車+ディーラー整備記録簿付きで比較的きれいな状態だったのが購入の決め手だ。

ちなみに購入したのは、正規ディーラーではなく、輸入車をメインに扱っている比較的大手の中古車ディーラー。自動車業界の人間なので、「知り合いのショップで安く買ったんでしょ?」と思われるかもしれないが、普通に中古車検索サイトで調べ、一般客として購入している。


カイエンSのインテリア(筆者撮影)

購入した理由は単純明快、電動化が進み、今後はなくなっていく大排気量モデルに乗っておきたかったからだ。というわけで選んだのは、V6・3.6L(前期型は3.2L)のベースグレードではなく、V8・4.8L(前期型は4.5L)で自然吸気ながら385psを発揮するカイエンS。そのほか、V8・4.8Lツインターボエンジンを搭載し、500psを発揮するカイエンターボも試乗したが、個人的に大排気量NAのフィーリングが好みだったし、NAのほうが部品点数も少ないのでトラブル時の出費も抑えられそうというのも選んだポイントだ。

詳しい車両の情報については、2年半前に執筆した【ポルシェ「カイエン」100万円中古車を買ってみた】もあわせて読んでいただきたい。

ここからが本題、格安中古車ポルシェ・カイエンを買って、どれくらい維持費がかかったのかということだ。結論から言えば、ガソリン代や駐車場代、自動車保険(任意保険)などを除き、2年間の自動車税や車検費用、定期点検やオイル交換、タイヤ代などで約134万円だった。1年間で計算すると約67万円になる。

その内訳は以下のとおりだ。

【2年間でかかった費用】
自動車税:10万1200円(1年) × 2回
車検費用:約60万円(2年) × 1回
定期点検:約12万円(1回)× 1回
スタッドレスタイヤ:約20万円 × 1回
夏タイヤ:約10万円 × 1回
エンジンオイル交換:約1万円 × 2回
助手席側ドア交換:約10万円 × 1回
合計:134万2400円

自動車税は、排気量4.5〜6.0Lの区分かつ新規登録から13年が経過しているので毎年10万1200円。大排気量エンジン搭載車なので、一般的なクルマに比べて高額な自動車税は避けては通れない。

車検費用は、いわゆる法定24カ月点検や継続車検代行、システムテスターによる故障診断などの基本メニューに加え、エンジンオイルやデフオイル、エアコンフィルター、バッテリー、ワイパーブレード、イグニッションコイル&イグニッションプラグの交換などを行っている。加えて、ヘッドライトが黄ばんでいたので表面を研磨し、黄ばみ防止対策としてプロテクションフィルムも施工してもらった。同時にヘッドライトの暗さが気になっていたので、LEDバルブへの交換も行っている。また、定期点検では、基本的な点検整備に加え、カイエンでトラブルの多いプロペラシャフトセンターベアリングの交換も実施している。


夏タイヤは、リーズナブルな国産タイヤのヨコハマAVID ENVigor S321を装着。サイズは245/45R20で、実勢価格は1本2万2000円ほどなので、4本でも10万円以内(筆者撮影)

あと、助手席側ドアをぶつけてしまい、修理のために1度交換も行っている。これも板金塗装を依頼すると費用がかかりそうだったので、某オークションにて同型・同色のカイエンSの助手席側ドアを探し、自身で落札し、脱着のみ板金屋に依頼。中古のドアが2万円ほど、交換工賃が8万円くらいだったと記憶している。

そのほかは、タイヤやエンジンオイルなど、基本的なメンテナンスのみで2年間、ノントラブルで走ってくれた。

2年間で大きな故障は皆無だった


カイエンSのフェイスデザイン。エンジン以外にデザインも前期/後期で異なる(筆者撮影)

前述しているが、2年間の維持費は約134万円、ドア交換という不要な作業を除けば124万円。年間で60万円程度なので、一般的な国産車やコンパクトカーに比べれば、維持費が高い。ただ、大排気量ゆえの自動車税は別として、ポルシェだからといってメンテナンスなどの維持費が高いということはないと思う。

国産車でも輸入車でも年式が古くなれば、経年劣化で修理する箇所も増え、メンテナンス費用が増えるのは同じ。輸入車に限らず、中古車で気になるのが故障だが、筆者が購入したカイエンは、2年間でとくに大きな故障もなく、大きな出費もなく乗ることができた。


内部に水が入り、表面も黄ばんでしまったヘッドライト。ちなみにヘッドライトユニットの新品はかなり高額で、中古でも片側10万円程度、程度がよければ15万円程度で販売されている。そのため筆者は、磨き+プロテクションフィルムで保護してもらった(筆者撮影)

車検費用も一見すると高く見えるが、快適に乗れるように早めに部品交換したり、ヘッドライトを明るくしたりと、ちょっとしたカスタム要素も含んだ内容を実施しているためだ。最低限でよければ、車検費用は20万円くらいに抑えられるだろう。

個人的には、2年間でエンジンやミッションなどの大きなトラブルもなく、オイル交換などの基本的なメンテナンスだけで済んだことに喜んでいる。購入した車両がワンオーナー&ディーラー整備記録簿付きで、丁寧に扱われてきた車両だったことも大きいが、意外に格安中古車でもトラブルなく走れるものなのだ。

安心して任せられるショップの必要性


筆者がカイエンのメンテナンスを依頼している、老舗チューニングショップ「レヴォルフェ S.A.」(筆者撮影)

ただ、こういった車両を維持するうえで、大切なのがメンテナンスを依頼するショップの存在。一般的には、購入した販売店、またはポルシェセンター(ポルシェ正規販売店)で点検整備、また車検を依頼することになるだろう。その場合、必要な作業を見極めて、しっかりと相談しながらメンテナンス計画を立てることが大切。古い車両の場合、言われるがまま修理を依頼していると、驚くような請求が来ることもあるので注意が必要だ。

余談だが、費用をかけて安心を買うか、自身で判断しながら費用を抑えるか、これが中古車ライフを楽しむうえで難しいところ。よく「ディーラー車検は高い」と言われるが、しっかりと対話すれば解決できることも覚えておいてほしい。

【関連記事】
「ディーラー車検は高い」と言われる真相と本音

自分の場合は、購入した中古車販売店やポルシェセンターではなく、付き合いのあるチューニングショップにメンテナンスや車検を依頼している。これも維持費を抑えて、安心して2年間乗れた要因のひとつだ。


レヴォルフェ S.A.のサービスフロントを担当している藤巻さん。チューニングカーだけではなく、輸入車の点検整備についての依頼も多く、カイエンについても熟知しており、維持費を抑えながら愛車と付き合っていくプランなども提案してくれる(筆者撮影)

作業を依頼したのは、神奈川県横浜市都筑区にある老舗チューニングショップ「レヴォルフェ S.A.」。こちらのショップは、パワーアップやドレスアップといった改造車がメインだが、一般的な中古車販売や修理、整備なども行っていて、裏方として有名ディーラーの作業も請け負っている実力派。カイエンの点検整備についても実績豊富で、ポルシェ車用の故障診断テスターを完備していたので、筆者自身も安心して作業をお願いしている。

こういったショップは敷居が高く、ディーラーや量販店に比べると入りづらく感じるだろう。ただ、経験が豊富で、カイエンのウィークポイントはもちろん、純正品ではなくOEM品やアフターパーツを使って費用を抑える方法なども熟知している。OEM品やアフターパーツの提案は、一般的なディーラーでは難しいので、それが魅力と言えるだろう。

実際に筆者のカイエンも、レヴォルフェ S.A.の提案で、エンジンオイルといった油脂類をはじめ、一部交換部品は、ポルシェ純正ではなく、手頃かつ高品質なOEM品やアフターメーカー品を使用している。また、カイエンのウィークポイントであるカンダルシャフト(プロペラシャフト)も、ポルシェセンター等でまるごと交換すると25万円ほどかかるが、OEM品のベアリングを使用することで、工賃込み6万8000円ほどで済ませてもらえた。


カイエンで多いカンダルシャフト(プロペラシャフト)のトラブル。ベアリング部分が劣化すると振動や異音が発生する。こちらは約10万km走行した筆者の車両から取り外したものだが、ゴム部分に亀裂が入っていることがわかる。通常は、カンダルシャフト一式の交換になるが、OEM品を駆使すれば、ベアリング部分のみの補修で済む(筆者撮影)

上記はあくまで一例だが、中古車を買う場合は愛車の主治医選びも維持費に大きく関わってくる。ちなみにレヴォルフェ S.A.は、ポルシェ以外にベンツやBMWなどの輸入車、また国産車の知識も豊富で、旧車なども多数扱ってきた経験があり、「チューニングカーはもちろんですが、ノーマル車両のメンテナンスや車検だけでも、困ったことがあればお気軽にご相談ください」ということだった。手頃なOEM品を使った結果、すぐに壊れてしまったという事例も多いが、「この部分はOEM品を使って費用を抑えましょう」「この部分は純正品が安全です」のような提案も信頼できるショップならしてもらえる。

燃費は劣悪、街乗りなら5km/L程度


カイエンSのメーターまわり(筆者撮影)

ここまでは、主にガソリン代を省いた維持費について紹介してきたが、昨今の燃料費高騰でガソリン代も気になるところだろう。カイエンのカタログ燃費は、年式やグレードによっても異なるが、初代で5.5〜8km/L(10.15モード)、2代目は7.4〜11km/L(JC08モード)、3代目は8.4〜11.2km/L(JC08モード)が目安となる。

自分が乗っている4.8Lエンジン搭載のカイエンSの場合、一般道で5km/L程度、高速道路で10km/L程度で、今どきのクルマに比べれば燃費は劣悪だ。それもハイオク仕様の100Lタンクなので、燃料費の高い今なら1回の給油で1万5000円近くが消えていく。ただ、大排気量ゆえに高速道路では2000回転程度で巡航できるので意外と燃費も伸び、巨大なガソリンタンクのおかげで、のんびり走っていればガソリン満タンで東京-名古屋(約700km)くらいは往復できる。

例えば、一般道も高速道路も走るとして、平均燃費7km/Lと仮定し、年間走行距離5000kmとする。現在のハイオクの全国平均価格182.5円で計算すると、年間のガソリン代は13万357円。ガソリン代は、大排気量車だからしょうがないと割り切り、それよりも余裕のあるトルクを楽しんでほしいクルマだ。

そのほか、維持費とは少し話がズレるが、狭い都内などでは駐車場選びにも困ることがある。ボディサイズは、全長4810mm×全幅1930mm×全高1700mmで、とくに全幅が1.9m超なので、駐車場によっては入れない、または入れるがドアが開かないなんてこともある。さらに月極駐車場を契約する際も全幅1.85m未満に設定されている場合もあるので購入時には注意が必要だ。筆者自身も住まいの近くで1.9m超OKの月極駐車場に空きがなく、じつは納車を遅らせた苦い経験がある。

格安中古の輸入車を買ってもよいのか?


カイエンSのラゲージスペース(筆者撮影)

最後に格安中古、型落ちのポルシェ・カイエンの購入はありなのか? これは、オーナーがクルマに何を求めるのかによっても異なるが、個人的には新車価格約1000万円のクルマに100万円で乗れる満足感は高いと思う。型落ちのカイエンでも大柄なボディは優越感もあるし、内装も豪華で使いやすく、仕事柄カメラ機材を載せることの多い筆者としてはラゲージルームが広いのもありがたい。

また、カイエンは、ポルシェのクルマだが、フォルクスワーゲンと共同開発したモデルで、フォルクスワーゲン「トゥアレグ」やアウディ「Q7」とプラットフォームが共通だ。さらに大ヒットしたモデルなので、中古部品やOEM品なども充実しており、それらをうまく活用すれば、意外とメンテナンス費用も抑えられる点も魅力的に感じている。


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ただ、維持費が高いのは事実。最初に紹介したように年間で67万円、ガソリン代も年間5000km走行の場合で約13万円、月極駐車場を借りる場合は合計で年間100万円程度の維持費は覚悟すべき。また、今回は契約内容によって大幅に金額が変わるので自動車保険(任意保険)も省いているが、車両保険に加入するのであれば、維持費はもっと高くなるだろう。

さらに一般道中心なら燃費も悪くなるし、購入した車両の程度によっては点検整備費がかさむ可能性もある。エンジンやミッションなどに重大なトラブルが起これば、100万円コースの修理が発生することもあるかもしれない。そのためにカイエン貯金的な予算も準備しておく必要があるだろう。

そのほか、最新モデル以外はリセールバリューも悪いので、定期的に新しいクルマに乗り換えたい人にも不向き。誰でもおすすめできるクルマとは言いがたいが、乗り潰す覚悟で、維持費を許容できるなら買う価値はあるだろう。とくに輸入車の場合、カイエンに限らず、型落ちになると一気に安くなるモデルも多いので、そういったクルマを探して買うというのもクルマの楽しみ方のひとつだと筆者は考えている。

昔、憧れていたクルマも中古車なら、手の届く価格で買えることもあるので、ぜひ中古車ウォッチングを楽しみつつ、楽しいカーライフを送ってほしい。

(三木宏章 : 東洋経済オンライン編集者・記者)