高木豊は2023年のパ・リーグ助っ人たちに辛口評価 大型補強のソフトバンクは 「なぜ獲ったんだ」という選手も
高木豊の「助っ人」通信簿
パ・リーグ編
(セ・リーグ編:助っ人たちを4段階で評価 人数過多の巨人は「起用する側に問題があった」>>)
プロ野球においてチーム浮沈のカギを握る助っ人外国人。かつて大洋(現DeNA)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏は、そんな外国人選手たちの今年の活躍をどう見ていたのか。
パ・リーグは、巨人からロッテに移籍したグレゴリー・ポランコが本塁打王を獲得する活躍を見せたが、昨季と同じく、活躍した助っ人外国人が全体的に少なかった。セ・リーグ編に続き、各球団の主な助っ人たちを【◎、〇、△、×】の4段階で評価した。
本塁打王を獲得したロッテのポランコなど、パ・リーグ助っ人たちの評価は? Photo by Sankei Visual
◆オリックス【野手△/投手☓】
リーグ3連覇を果たしたオリックスでは、マーウィン・ゴンザレスがユーティリティー性を武器に一定の活躍を見せたほか、シーズン後半はレアンドロ・セデーニョも長打力を発揮。一方、昨季終盤の活躍で期待度が高かったジェイコブ・ワゲスパックほか、投手陣は不発に終わった。
「ゴンザレスは、打率は低いのですが、勝負どころで打っていた印象です。守備も内野の複数ポジションをそつなくこなしていました。使い勝手のいい選手だとは思いますが、やはり数字は物足りない。ただ、両打ちでユーティリティープレーヤーでもあるので、日替わりで打順やポジションが変わるオリックスの野手の起用法には、ハマっていたと思います。
(レアンドロ・)セデー二ョは長打力が魅力で、DHで使い続けたらどれくらいホームランを打つのか楽しみなバッターです。30本ぐらい打ちそうな感じはしますね。(フランク・)シュウィンデルは真っ直ぐに振り遅れていましたし、甘い変化球しか打てないような感じでした。厳しいかなと見ていましたが、やはり結果が出ませんでしたね。
投手はパッとしませんでした。ワゲスパックは先発、リリーフで31試合に登板しましたが、防御率は5.77と安定しませんでした。昨季の活躍を見ていたので、今季はもっとよくなるかと期待していましたが、自滅が多かった印象です。(ジャレル・)コットンと(ジェイコブ・)ニックスは、そもそもほとんど使われなかったので評価するのは難しいですね」
【助っ人外国人の成績】
(野)ゴンザレス 84試合 打率.217 12本塁打 38打点 出塁率.266 OPS.650
(野)セデーニョ 57試合 打率.244 9本塁打 34打点 出塁率.278 OPS.716
(野)シュウィンデル 20試合 打率.188 1本塁打 11打点 出塁率.186 OPS.461
(投)ワゲスパック 31試合 4勝7敗4ホールド2セーブ 防御率5.77 QS率25.0
(投)ニックス 2試合 0勝1敗 防御率10.50 QS率0.0
(投)コットン 7試合 1勝1敗1ホールド 防御率5.89 QS率0.0
◆ロッテ【野手◯/投手◯】
前年の5位から2位に躍進するも、首位のオリックスとは15.5ゲーム差。ただ、他球団の助っ人が数字を伸ばせない中でポランコが本塁打王を獲得し、ルイス・ペルドモがホールド王を獲得するなど、助っ人が大きな活躍を見せた。
「ポランコは打率が悪かったですが、リーグが変わって慣れるのが大変な中で26本のホームランを打ってタイトルを獲ったという意味で◎です。それと、ホームランの約3倍の打点を挙げている。ホームランバッターの打点は、『ホームランの3倍』が基本線なんです。ポランコは26本なので理想は78打点。今季は75打点を挙げていますし、チームに貢献したと思います。
(マイク・)ブロッソーは体が硬くて、バッティングも守備も柔軟性に欠けていました。ただ、シーズン途中に入団し、環境や言葉もわからない環境でいきなり起用されても結果を出すのは難しいしょうね。それと、サードには守備が安定してきた安田尚憲がいるのに、そもそも『なぜ獲ったんだ』と。安田の打撃に不満があったから獲ったのでしょうが、これは球団に☓です。
投げるほうではペルドモが◎。数字がチームへの貢献を表していますし、シーズン前半は安定感抜群で本当に点を取られませんでした。元巨人の(C.C)メルセデスは△です。打線が打ってくれない試合もありましたが、それでも22試合に先発しているので10勝近くはしてほしいところ。ただ、離脱する先発ピッチャーが多かった中で、ローテーションを守ったことは評価できます。
(ルイス・)カスティーヨはバッターが打ちにくそうにしていましたし、変化球も多彩でいいピッチャーだなと思いました。もう少しチャンスを与えてあげてもよかったですね」
【助っ人外国人の成績】
(野)ポランコ 84試合 打率.242 26本塁打 75打点 出塁率.312 OPS.762
(野)ブロッソー 37試合 打率.191 1本塁打 11打点 出塁率.218 OPS.504
(投)メルセデス 22試合 4勝8敗1セーブ 防御率3.33 QS率45.0
(投)カスティーヨ 12試合 3勝3敗1ホールド 防御率3.12 QS率44.4
(投)ペルドモ 53試合 1勝3敗41ホールド 防御率2.13
◆ソフトバンク【野手☓/投手◯】
シーズン前の大型補強が話題となったソフトバンクだが、3位に甘んじた。新たなクローザーとして獲得したロベルト・オスナはシーズンを通じて安定感があるピッチングを見せたが、リバン・モイネロが左肘の手術で夏場に離脱。さらに野手の助っ人陣は緊急補強のアルフレド・デスパイネをはじめ、総崩れとなった。
「デスパイネは『なぜ獲ったんだ』という感じですよね。それまでチーム状態は悪くなかったのに、デスパイネが合流したくらいのタイミングでチームが低迷し始めました。50回ぐらい打席に立ってホームランと打点がゼロですし、明らかに打線のつながりが悪くなった。獲ったら使わざるを得ないですし、ロッテのブロッソーと同じく、選手本人ではなく球団に対して☓です。
(ウィリアンス・)アストゥディーヨや(フレディ・)ガルビス、(コートニー・)ホーキンスといった野手も全然ダメでした。与えられた打席数が少なかったですが、実績のない助っ人を我慢して使い続けるのは難しいです。助っ人野手が誰ひとり活躍できなかったことはチームとして痛かったですね。
それに比べて、ピッチャー陣はよくやったほうだと思います。オスナはたまに手痛い一発を食らっていましたが、シーズン通しての安定感はさすが。モイネロは離脱してしまいましたが、相手に重圧を与える存在感、離脱する前の成績に関しては◎。やはり頼りになりますよ。
(カーター・)スチュワート・ジュニアはソフトバンクに入団して5年経ちましたが、成長速度が遅い気がします。今年にやっと投げられるようになったなという印象。ピッチングはハマった時はいいですが、制球が悪くなると止まらなくなります。今季は3勝6敗ですが、勝敗数が逆になっていないといけません」
【助っ人外国人の成績】
(野)デスパイネ 20試合 打率.071 0本塁打 0打点 出塁率.204 OPS.276
(野)アストゥディーヨ 20試合 打率.136 1本塁打 3打点 出塁率.220 OPS.447
(野)ガルビス 19試合 打率.152 0本塁打 1打点 出塁率.176 OPS.328
(野)ホーキンス 3試合 打率.000 0本塁打 1打点 出塁率.000 OPS.000
(投)スチュワート・ジュニア 14試合 3勝6敗 防御率3.38 QS率42.9
(投)ガンケル 5試合 0勝1敗 防御率5.82 QS率33.3
(投)ヘルナンデス 1試合 0勝0敗 防御率27.00
(投)モイネロ 27試合 3勝0敗13ホールド 防御率0.98
(投)オスナ 49試合 3勝2敗12ホールド26セーブ 防御率0.92
◆楽天【野手☓/投手◯】
ロッテ、ソフトバンクと最後までCS進出を争いながらも、最終戦でロッテに破れて4位に終わった楽天。右の大砲として期待されたマイケル・フランコは開幕戦で鮮烈なデビューを飾ったものの、シーズントータルで期待に応えられなかった。
「フランコは開幕戦でホームランを含む猛打賞。楽天はここ数年、助っ人が期待外れだったのでかなり期待が高まったと思うのですが、長続きしませんでした。助っ人には『打率.250でいいから30本は打ってほしい』という期待をするものですが、数字的に物足りないです。CS進出がかかったシーズンの終盤では、ほとんど試合に使ってもらえませんでしたし、それまでの印象が悪くて期待できなかったんでしょうね。
宋家豪は今季もよく投げたと思います。ほぼ勝ちパターンで登板して、松井裕樹に繋ぐための一角を任されていましたし、その松井がセーブ王を獲ったこともふまえて宋は◯でいいと思います。日本の野球を熟知していて、例年通りに安定した力を見せました」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)フランコ 95試合 打率.221 12本塁打 32打点 出塁率.272 OPS.644
(投)宋 49試合 2勝1敗16ホールド 防御率2.89
◆西武【野手△/投手☓】
野手では、デビッド・マキノンとマーク・ペイトンを獲得して得点力アップを目指したが、チーム得点(435)はリーグ最下位。昨季10勝を挙げたディートリック・エンスは今季も先発ローテーションの一角として期待されたが、1勝10敗と大誤算に終わった。
「マキノンは◯でいいと思います。ペイトンは途中で故障離脱していましたが、その中でマキノンはよく頑張っていましたし、チームにも溶け込んでいました。数字的にはもう少し上げてほしいですが、どの球団の助っ人も全体的に数字が悪すぎる中、及第点と言っていいかなと。日本の野球にも慣れたと思うので、来季も残るならもっとよくなるはずです。
ペイトンは△です。真面目で一生懸命やるタイプですし、慣れればよくなりそうだったので期待して見ていましたが、故障での長期離脱がもったいなかったですね。凡打でも一塁まで全力疾走したり、不振のチームの中で一生懸命やっていた姿が印象的でした。
投げるほうでは、昨季10勝したエンスが今季は誤算でした。本来は試合を作れるピッチャーですが、打線が打ってくれないので焦りもあったのかなと。ボー(・タカハシ)はコントロールがよくないので、僅差の試合で中継ぎとして投げさせるのは怖い。ビハインドの時に投げていましたが、勝ちパターンで起用してもらうには制球力を磨かなければいけません。
(ヘスス・)ティノコは球威もあるし、動きのある球が特長で面白いと思っていましたが、チーム状況がよくなかったこともあって数字を伸ばせなかったですね。(ブルックス・)クリスキーは、シーズン終盤に不振の増田達至に代わってクローザーを務めていましたが、ランナーがいる時に制球を乱しがちですし、不安定でした」
【助っ人外国人の成績】
(野)マキノン 127試合 打率.259 15本塁打 50打点 出塁率.327 OPS.728
(野)ペイトン 57試合 打率.215 5本塁打 22打点 出塁率.266 OPS.593
(投)エンス12試合 1勝10敗 防御率5.17 QS率16.7
(投)ボー 28試合 0勝1敗 防御率3.00
(投)ティノコ 38試合 0勝3敗8ホールド 防御率2.83
(投)クリスキー 14試合 0勝0敗2ホールド7セーブ 防御率1.93
◆日本ハム【野手△/投手☓】
2年連続で最下位に沈んだ日本ハム。中日から移籍してきたアリエル・マルティネスは攻守で活躍したが、その他の助っ人は不振に終わった。特に先発ローテーションの一角として期待していたコディ・ポンセの春先の故障が痛かった。
「マルティネスは◎でいいと思います。キャッチャーやファースト、DHも含めて、ポジションがいろいろ変わる負担があったにも関わらず、肝心なところでけっこう打っていました。長打力もありますし、チームにも溶け込んでいた印象です。
(アリスメンディ・)アルカンタラは、日本の野球に合うタイプだと思うのですが、使ってもらえませんでしたからね。そんなに体は大きくないのにパンチ力があって、両打ちですし、打席数が増えればそこそこの数字は残すと思うのですが。(アレン・)ハンソンは、ドアスイングなので打率を残せない。バットにうまく引っかかった時には大きなホームランが出るのですが、その場面は多くありませんでした。
ポンセはシーズン序盤の故障が痛かったですね。復帰してからは相変わらず球威がありましたし、終盤はコンスタントに白星を重ねていたので、数字ほど悪い印象はありません。昨季はノーヒットノーランを達成したように実力はありますし、故障さえなければふた桁勝てるピッチャーだと思います。
シーズン途中で加入した(ジェームス・)マーベルは、ロングリリーフでいい働きをしていましたが、先発した時は制球が甘かったですし不安定でした。球威があるタイプではないので際どいところを攻めていかないと打たれます。(ブライアン・)ロドリゲスは失点するシーンが目立ちましたし、日本で長年投げていることもあってバッターが慣れていますよね。中継ぎで防御率5点台は厳しいです。
【助っ人外国人の成績】
(野)マルティネス 119試合 打率.246 15本塁打 66打点 出塁率.338 OPS.763
(野)アルカンタラ 41試合 打率.204 4本塁打 10打点 出塁率.262 OPS.625
(野)ハンソン 39試合 打率.144 4本塁打 9打点 出塁率.188 OPS.499
(投)ポンセ 10試合 4勝5敗 防御率3.66 QS率30.0
(投)メネズ 12試合 0勝2敗 防御率3.16 QS率25.0
(投)マーベル 8試合 2勝2敗 防御率2.49
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。