キム・ヨナに憧れて...フィギュアスケート韓国勢「ヨナ・キッズ」の台頭
日本で荒川静香や浅田真央に憧れてスケートを始めた選手がたくさんいるように、韓国ではキム・ヨナに憧れてスケートを始めた「ヨナ・キッズ」と呼ばれる世代がいる。ここ数年、その世代の目覚ましい活躍により、韓国はフィギュアスケート強豪国のひとつになりつつある。
NHK杯で総合4位に入ったイ・ヘイン
たとえば、昨年の世界選手権では男子のチャ・ジュンファン(22歳)と女子のイ・ヘイン(18歳)がそれぞれ銀メダルを獲得。女子はイの他に、キム・イェリム(20歳)、ユ・ヨン(19歳)、キム・チェヨン(16歳)、ウィ・ソヨン(18歳)などがシニアの国際舞台で活躍している。ジュニアでもシン・ジア(15歳)やクォン・ミンソル(14歳)、ソ・ミンギュ(15歳)など多くの選手が育ってきている。
キム・イェリムも同様に、「キム・ヨナさんを見て育ってきたことがモチベーションとなり、その世代が切磋琢磨して競争する環境ができていることが今の強さにつながっていると思います」と語ってくれた。
そんな勢いのある韓国勢。今季のグランプリ(GP)シリーズ・NHK杯には、女子シングルのイ・ヘイン、キム・イェリム、ウィ・ソヨンが参戦。それぞれ難しいコンディションを抱えながらも華麗な滑りを披露した。【坂本花織に憧れ】
昨シーズン、四大陸選手権で金メダル、世界選手権で銀メダルを獲得したイ・ヘインは、安定したジャンプと音楽表現が魅力のスケーター。GPシリーズ・フランス杯後はメダルを獲得できずにかなり落ち込んでいたというが、「スケーターの友人たちがファイナル行きを決めていたので、私もそこに行きたいと思って練習を頑張れました」と話す。
キム・ヨナはもちろん、現役の選手では坂本花織やルナ・ヘンドリクスが憧れ。明るく社交的な性格で友人も多く、三浦佳生やイリア・マリニン(アメリカ)など同世代スケーターとも仲がいい。
世界選手権や国別対抗戦で来日した際には「日本のスケーターと話したい」と、日本語を覚えてきた。いつも笑顔で楽しそうな彼女だが、フランス杯に続いてNHK杯も表情を曇らせていることが多かったように見えた。
ショートプログラム(SP)では転倒はなかったが、細かいマイナスがあり3位。演技後、「フランス杯のあとは正直、抜け殻のようになっていました。すごく悲しかったですし、自分にがっかりしていたんです。コンビネーションなどで回転不足をとられないように練習してきましたが、その練習の成果を出すことができませんでした。まだ終わったわけではないのでベストを尽くしたいです」と語った。
「たくさんのエネルギーを届けたい」と臨んだフリープログラムでは、『ノートルダムの鐘』のエスメラルダを演じる。多くのジャンプでマイナス評価を得てしまったが、「昨日よりはよかったと思います。(GPファイナルには届かなかったが)来年も挑戦できるので、私はギブアップしません」と気丈に振る舞った。シーズン後半に調子を上げてくる印象があるイ・ヘイン。今後の活躍に期待したい。
すらりとした長身と長い手足でダイナミックなジャンプを跳ぶキム・イェリムは、昨シーズンのNHK杯女王。今季は中国杯とNHK杯にアサインされ、「(6位だった)中国杯のあとにたくさん練習をしてきました。自信を持って試合に臨めると思っていたのですが、公式練習で靴のトラブルがあったんです。靴ひもをかけるフックが壊れてしまい、ショックと不安に襲われました。それでもショートは頑張ることができたと思いますし、観客の皆さんの声援に助けていただき感謝しています」と話した。
ちなみに、今年3月の世界選手権の時にも「演技後、自分の演技にがっかりして落ち込んでいたのですが、観客の皆さんが『イェリム、サランヘヨ!』と声をかけてくださったことがとてもうれしかった」と話しており、いつも日本のスケートファンへの感謝の言葉を口にしている。
フリーでは、今季なかなか決まっていなかった冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループを成功させた。着氷姿勢でリンクのボードにぶつかってしまったが、ダイナミックなジャンプが決まったことで喜んだファンも多かったことだろう。
「前回大会でのフリーはあまりよくなかったので、今回は前よりは進化していると思います。次の試合までに後半も修正していきたいなと思っています」と話し、韓国国内のランキング大会に向けて前向きな姿勢を見せた。
イ・ヘインとともにジュニアで活躍してきたウィ・ソヨンはNHK杯前に足首をケガし、不安を抱えての出場となったが、「出場するからにはベストを尽くしたいと思って頑張りました。すぐに国内の大会があるので、そこに向けて頑張りたいです」と笑顔を見せた。
男女シングルともにジュニアでもシニアでも成長著しい韓国。日本の選手たちと互いにリスペクトし合い、切磋琢磨し続けている。