11月26日に行なわれるGIジャパンC(東京・芝2400m)。残念ながら、今年のGI英セントレジャーの勝ち馬で、GI凱旋門賞でも5着に入ったコンティニュアス(牡3歳/アイルランド)の参戦は見送られた。だが、同レースの注目度の高さはまったく損なわれていない。

 それもそのはず、"世界ランキング1位"のイクイノックス(牡4歳)と、今年の牝馬三冠を達成したリバティアイランド(牝3歳)との直接対決が実現するからだ。このマッチアップは3年前の、アーモンドアイvsコントレイルvsデアリングタクトという三冠馬3頭による夢の競演に匹敵する、ファン待望の一戦と言える。

 しかも両者はこの秋、最高の滑り出しを飾った。イクイノックスはGI天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)を驚異のレコードタイムで圧勝。リバティアイランドもGI秋華賞(10月15日/京都・芝2000m)で盤石のレースを披露し、史上7頭目の三冠牝馬となった。

 それゆえ、この対決には日本だけにとどまらず、世界の競馬関係者、ファンからも熱い視線が注がれている。そこで、日本競馬にも明るい海外の競馬記者、ジャーナリスト3人に、イクイノックスとリバティアイランドのどちらがジャパンCを制覇するのか、それぞれの見解を聞いてみた――。


天皇賞・秋で驚異的な強さを見せたイクイノックス。photo by Yasuo Ito/AFLO

「イクイノックスとリバティアイランドはケタ違いのアスリートであり、ジャパンCでのこの2頭の激突は、今年の世界の競馬シーンのなかでも最大の出来事だと私は思っています」

 まずそう話すのは、イギリス出身で香港ジョッキークラブの公式ライターなどを務めるデイビッド・モーガン記者。彼は現在、アジア競馬の話題を中心としたメディア『Asian Racing Report』で活動し、来日経験も豊富だ。

「ぶっちゃけると、私はリバティアイランドが現役馬のなかでも"最推し"なんですよ。だから、このまま順調に成長を続けることができれば、彼女は世界の歴代名牝に並ぶ一頭になると信じています。

 そして今回、イクイノックスの斤量58kgに対して、3歳牝馬のリバティアイランドは斤量54kg。この恩恵は、リバティアイランドにとって大きな優位性となり、イクイノックスにとっては非常に難しいものになると思います。

 ですが、現段階のキャリアにおいては、イクイノックスがリバティアイランドの挑戦に応えながら、"世界一"の貫禄を見せてレースを制するだろう、と私は見ています。イクイノックスは、今や真のチャンピオンに成長。戦術的にも、どこからでも競馬ができる順応性があり、距離が2400mになる今回はより強くなると見込んでいます。

 もちろん競馬なので、絶対はありません。だとしても、2頭とも類まれな才能の持ち主。どちらかが勝てなかったとしても、その敗北が彼らの功績や評判を下げることがあってはならないでしょう」

 世界中のレースそのものだけでなく、それを取り巻くさまざまなシーンにもスポットを当てて取り上げることで、各方面から話題を集めている『World Horse Racing』のメンバーで、オーストラリアでコメンテーターを務めるアンドリュー・ホーキンス記者も興奮気味に語る。

「ドバイでも実際にその走りを見ましたが、天皇賞・秋の走りを見て、私もイクイノックスが勝つと思っています。無論、リバティアイランドも彼に劣らないだろうし、斤量面での恩恵や、前走からの間隔においてはアドバンテージもあると思いますが、イクイノックスは明らかに今が力のピークにあると見ます。

 もしリバティアイランドに一発があるとすれば、4コーナーの位置取りがカギになるのではないでしょうか」

 イギリス出身で、現在は『レーシングポスト』のフランス支局に在籍するスコット・バートン記者は、「まだ3歳世代のどの馬とも対戦していないイクイノックスにとって、リバティアイランドは新しく、強力なチャレンジャーとなるのは間違いないでしょう。トリプルティアラ(牝馬三冠)での活躍は目覚ましいものでした」と切り出し、こう続けた。

「しかし、リバティアイランドが勝利したGIオークス(5月21日/東京・芝2400m)も、秋華賞も、ハーパーとドゥーラがそれぞれ上位に来たように、基本的には同じ相手に勝ち続けているにすぎません。そう考えると、力は認めるものの、彼女がジャパンCを制するまでには至らないかもしれません。

 一方、GIドバイシーマクラシック(3月25日/UAE・芝2410m)、天皇賞・秋を勝ったイクイノックスは、地球上のどんなサラブレッドにも勝つと私は信じています。天皇賞・秋のひと叩きによって、彼のコンディションは一段と前進していることでしょう。

 また、イクイノックスにとっては、先行力が強力なタイトルホルダーがいることも(レースが流れるため)有利に働くと見ています。レース内容によっては、現時点での国際レーティング129をさらに上げて、世界一の座を確固たるものにするのではないでしょうか。

 今回、コンティニュアスが回避したことは本当に残念でした。出走していれば、上位に食い込んでも何ら不思議はなかったと思います。ただそうは言っても、イクイノックスやリバティアイランドを差し置いて、本命にすることはできなかったでしょうね」

 イクイノックスは、世界中が注目するドバイのレース、そして天皇賞・秋で、見る者に強烈なインパクトを与える走りを見せてきた。その分、同馬を優勢と見る向きは強い。だが、外国人記者のリバティアイランドに対する評価も相当なものだ。

 はたして"世紀の対決"の結末はどうなるのか――世界中がその行方に心を躍らせている。