日本代表は攻め続けても課題をクリアできず サイド攻撃が機能しない理由は?
ミャンマー戦の5−0という結果をどう見るか。ボール支配率は72対28で、シュート数は24対0だった。日本はほぼ攻め続け、ミャンマーは守り続けた。
ミャンマーの監督曰く、「10−0で敗れた前回のようなことがないように」と、5バックで守りを固めてきた。森保一監督は試合後、「予想どおりの展開になった」と述べた。引いて構える相手をどう崩すか。日本代表に突きつけられた課題は試合前からハッキリしていた。そうした視点でこの試合を見たとき、合格か失格かと言えば、後者になる。
課題の答えはハッキリしている。サイド攻撃だ。相手の5バックの両側(ウイングバック)から1枚1枚丹念に薄紙を剥ぐように崩していく。3人のセンターバックの両側をサイドにおびき出し、中央のマークを手薄にする。そうしたセオリーが追求されているようには見えなかった。
ミャンマーが引いて構えてきたことに面食らったわけではない。予想どおりの展開になったにもかかわらず、手順を誤った。定石を無視するような戦いをした。森保監督はJリーグの監督時代からそうしたサッカーを追求してこなかった。
5バックで守りを固める守備的なカウンターサッカーの信奉者だった。強者相手に5バックで守りを固めるアイディアは簡単に思いつくが、それとは反対の立場に立ったとき、つまり引いて構える相手と対峙した際はどうなるのか。常道を追求できるのか。それはこのミャンマー戦の大きな見どころのひとつだった。
ミャンマー戦に右ウイングとしてフル出場した堂安律 photo by Fujita Masato
右=毎熊晟矢、堂安律。左=中山雄太、相馬勇紀。
この日スタメンに名を連ねた左右のサイドアタッカーは、4人ともフルタイム出場した。21日にジッダ(サウジアラビア)で行なわれるシリア戦に、彼らはスタメン出場しないと考えるのが自然だ。ミャンマーとシリア。強敵度で勝るのはシリアなので、この日サイドアタッカーとして先発した4人は、今回招集されたメンバーの中ではBランクに当たる選手たちだと考えられる。サイド攻撃が追求できなかった原因はベンチにあるのか、選手にあるのか。
【縦勝負ができない堂安】
当初、予想されていたベストメンバーは、右が菅原由勢、伊東純也(久保建英)、左は伊東洋輝、三笘薫になる。右ウイングと左ウイングは日本のストロングポイントと言えるが、ミャンマー戦で見せた日本のサイド攻撃は、個人的な力によるものなのか、ベンチの指示のもとに成立するチームプレーとしての産物なのかと言われれば、個人的なものと言わざるを得ない。
この日出場した4人のなかで最もアピール度の高いプレーをしたのは相馬だ。その後方で構える中山も、前半は相馬とよく絡んでいた。前半に関しては、左サイドは及第点だった。
相馬はケガでメンバーを外れた中村敬斗の代役だ。浅野拓磨も左ウイングでプレーしているので、三笘を筆頭に順位は3番手以下になる。その順位を少しでも上げようと相馬は必死でプレーしている様子だった。縦にも積極的に勝負にいった。だが後半に入ると中山のサポートが減ったこともあり、頑張りがワンパターンになっていく。得点の近道である最深部のえぐりは3回程度に終わった。この数が多いか少ないか。通常なら及第点だが、相手は弱小ミャンマーである。
右サイドに至っては、最深部からの折り返しはほぼ0だった。そもそも堂安がサイドを縦に勝負に出るシーンがなかった。その平均的なポジションもかなり内寄りで、毎熊が古典的なSB然と、低い位置に単独で張る姿に、有機的なサイド攻撃が期待できそうなムードを抱くことはできなかった。
より心配になるのは堂安だ。縦勝負ができない。後半、1度だけトライしたが、1人をかわすのが精一杯だった。左足のインサイドにボールを置き、身体を開き気味に構えるので、内に行くにも進行方向が読まれやすい。右SBとのコンビネーションにも非積極的だ。
右ウイングは左よりライバル争いが熾烈だ。堂安の前に伊東、久保がいる。久保の進境は著しく、堂安が苦手とする縦に勝負するドリブルもマスターしている。ここ1年ほどで最深部を突く武器を備えるに至っている。左利きの右ウイングとして、堂安と久保との差は開いたように見える。
【旧態依然としたSBのスタイル】
堂安には左ウイングをこなす多機能性はないので、「23人枠」からはみ出す可能性も出てきた。森保ジャパンに何年も前から選ばれている割にフィットしていない選手と言える。
両SBが活躍できなかったことも問題だ。これはポジショニングが占める割合が多いので、選手の責任というよりベンチの責任になる。SBをどう活かすか。いいサッカーをしようとした時、肝となるポイントの追求が甘いのだ。
繰り返すが、右SB(毎熊)が単騎で、大外の低い位置に張り出すように構える姿はあまりにも古い。旧態依然としたスタイルと言われても仕方がない。ミャンマー相手に大外からプラスのクロスボールをドカンと放り込んではいけない。チームとしてSBを生かそうとする姿勢に欠けることが、そうした毎熊のプレーに端的に表れていたと言いたくなる。
内と外とをつなぐ、インサイドハーフ(南野拓実、鎌田大地)のバランス感覚もいまひとつだった。ボールが真ん中に集まるサッカーは危ない。現在のマンチェスター・シティとバルセロナの違いと言ったら伝わるだろうか。
森保監督は試合後「引いた相手からどのように点を奪っていくか、イメージは共有できていた」と語った。だが、それが具体的にどんなものだったのかは、わからずじまい。会見で出た言葉のなかでは「きれいに回すだけではないチャレンジングなパスの仕掛けを得点につなげていく」という抽象的な言葉ぐらいしか、該当するものを拾えなかった。
選手たちは監督、コーチからどんなアドバイスを受けて、試合に臨んだのか。どんな指示を受ければ、ミャンマー戦のような戦い方になるのか。森保監督はやはり攻撃面において具体的な策を持ち合わせていないのではないかと、怪しみたくなる一戦だった。