いじめで不登校→コスプレに目覚める→日本女性初のプロビキニ選手に! MIHARUが目指す「格闘系2次元キャラ」の理想の体とは?
MIHARU インタビュー後編(全3回)
日本人女性で初めて国際団体・IFBB(国際ボディビルディング・フィットネス連盟)のプロカードを取得した、プロビキニアスリートのMIHARU。なぜ彼女はボディメイクを始めたのか。後編では、強豪のバレーボール部、いじめや不登校、コスプレとさまざまな経験をへて、筋肉に目覚めた経緯を聞く。
2次元キャラクターの肉体を目指して筋トレを始めたというMIHARU
ーープロフィットネス選手だけでなく、コスプレイヤーとしての顔も持つMIHARUさん。しかし、コスプレと筋トレはなかなか結びつきません。
MIHARU(以下同) そんなことはないですよ。筋トレって体育会系のノリの人が多いように誤解されますが、ひとりで黙々とトレーニングする人がほとんどですし、トレーニングも食事もマニアックな知識をつけることが必要だったりします。
だから意外とオタク趣味とフィットネスって共通する部分があるんです。私自身、父親の影響で家にマンガがたくさん置いてあるような環境で、ひとりでいるのが好きなタイプだから、自分に合っているなと思います。
ーーコスプレと筋トレとの出会いについて教えてください。
私は、小学生からバレーボールを始めました。高校は全国大会に出るような強豪校へ推薦で入り、365日、バレーボールのことを考えていました。
それが高校3年の夏に部活を引退して、ちょっとした虚無感を覚えていたタイミングで一番仲のよかった友達にいじめに近いことをされたんです。それで人間不信になって、家から出られなくなってしまったんです。
ーー不登校という状態でしょうか?
そうですね。自殺未遂もありました。結局、卒業まで学校には行けなかったんですが、不登校になって1カ月くらい経った頃に、(SNSの)mixiでつながっていた校外のオタク友達にコスプレのイベントに誘われたんです。
コスプレなら外に出られるかもしれないと思って挑戦してみたんです。キャラになりきれるのがすごく楽しくて、不登校期間でも2週間に1回ほど、コスプレのイベントに参加していました。ちなみに初めて挑戦したコスプレは『銀魂』の土方十四郎です(笑)。
ーー居場所を見つけられてよかったですね。
バレーボールの推薦で大学に行く予定でしたが、そんな状態なので白紙になってしまって、進路をどうしようかと考えた時に、どうせだったらコスプレを極めてみようとヘアメイクの専門学校に進むことを決めました。
コスプレのクオリティを上げるためにと思ってヘアメイクの勉強を始めたんですけど、それだけじゃ足りない。2次元に近づけるために、体も鍛えなくちゃ!っていう理由からトレーニングに出会ったんです。
鍛え上げられた肉体を活かしたコスプレを行なう 写真/本人提供
ーーコスプレの完成度を高めるために筋トレを始めた、と。
部活をやってた時は食べても食べても太らなかったのに、専門学生時代はかなり太って筋肉もなにもないのに56キロくらいになってしまったんです。
それで専門1年の冬に週5〜6日、ウエイト1時間、有酸素運動30分というトレーニングを続けたら1カ月で8キロもやせた。それがあまりにもうれしくって、どうやったら体が変わるか、どうすれば2次元キャラみたいなメリハリのあるボディになれるかを真剣に考えて、トレーニングにのめりこみました。
インタビューに応じるMIHARU
筋トレを始める前、20代の頃のMIHARU
ーーコンテスト初出場は「ベストボディ・ジャパン2015」名古屋大会(ミス・ベストボディ部門)だそうですね。
ジムのスタッフの方に「そんなに一生懸命やっているなら何か目標があったほうがいいんじゃない?」と紹介してもらって大会に挑戦してみました。当時24歳でした。
結果は7人中3位と、一番とりたくなかった中途半端な順位でした。というのも、その時は「ベストボディ・ジャパン」が求める体というのがわかってなくて、私が出場したカテゴリーで7人中5人が芸能事務所に所属するモデルさんというなか、ひとり日焼けしてバキバキな体をつくっていってしまった(笑)。
筋肉が評価されるなら1位、規定外の体だったらビリのどちらかだと思っていたので悔しかったですね。
ーーその翌年に、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)に参戦。
「ベストボディ・ジャパン」の結果をツイッターで報告したら、JBBFのスポンサー企業の方から、「もし筋肉美に興味があるならJBBFのビキニフィットネスに挑戦してみないか」と連絡がありました。競技者の写真を見たら私の目指す2次元の体に近いと思い、やってみることにしたんです。
ーーその時期は専門学校を卒業してヘアメイクの仕事を?
2カ月に一度くらいの頻度で海外をまわりつつ、日本にいる時はヘアメイクの仕事をして海外旅行資金を貯めて、筋トレしたり、コスプレしたり......という生活ですね。
じつは在学中に優秀生徒に選ばれて、学校にヨーロッパへの周遊に行かせてもらった時にとても刺激を受けて。将来は旅人になりたい、海外でビジネスをしたい、と考えるようになっていたんです。
そのために在学中からできることはやっておこうと、ブライダル会社など取引先に自分のスキルをアピールしてたので学生の時から仕事がありましたし、そのおかげで就活せずに卒業後、すぐにフリーランスのヘアメイクとして働けたんです。
フリーのほうが自分の時間がつくりやすくて海外にも行きやすいじゃないですか。
ーーさらにJBBFに参戦した年に「オールジャパンフィットネスビキニ選手権」でカテゴリー優勝。とんでもないスピードで結果を出しました。
自分の知識だけでは追いつかないと思い、2016年1月から生まれて初めてパーソナルトレーニングを受けることにしました。先生は、木澤(大祐)さんを紹介してもらいました。
ーーボディビルシーンのレジェンドであるジュラシック木澤さんですね。
当時は木澤さんがどれほど偉大な方かも知らずに生意気な態度だったかもしれませんが、そんな私をしっかりと指導してくださいました。木澤さんからはトレーニング方法はもちろん、精神力、競技者としてのマインドを叩き込まれました。
「IFBBプロ」として国際大会にも出場している 写真/本人提供
ーー競技者としてのマインド......?
強い気持ちで追い込まないと体が変わるようなトレーニングにはならない、ということですね。今も私のトレーニング姿は「迫力がすごい」「怖い」と言われるんですが、それは間違いなく木澤さんゆずりです。最初は本当にキツくて、パーソナルに行きたくなかった......(苦笑)。
ーーその後、挫折しそうになったことはないのですか?
定期的に海外をめぐる生活をしていたので、パーソナルをコンスタントに受けられない時期があったんです。
たしか2016年のゴールデンウィークくらいかな。海外旅行のため2回連続でパーソナルを受けられないとなった時に木澤さんからひと言、「もう諦めたら?」と言われたんです。
そのひと言で火がついて、このままだと1位になれず中途半端に終わると危機感を覚えました。それからはパーソナルに支障がないように海外に行くようになったし、パーソナルの日数も増やしました。そうやって意識が変わったら、体も変わっていったんです。
ーーコスプレから目覚めたフィットネス人生。MIHARUさん自身が目指す理想の体、理想の2次元キャラクターはあるんですか?
2次元の体を目指し始めたきっかけは『ストリートファイター』シリーズのキャミィ・ホワイトです。強くてカッコいい、戦う女の子という体つきが理想です。
ーー迷彩柄レオタードがセクシーな金髪美女ですね。どのあたりが理想なのでしょうか?
ちゃんと肩が出ていてセパレートしているところ。それに、めちゃくちゃ細いウエストラインから出てくるたくましいお尻と脚。脚キャラだと春麗が出てくるけど、キャミィは脚を含めた体のバランスがすごくいい。
シリーズによってキャラクターデザインが違って、フィギュア限定衣装とかもちょこちょこコスプレをやったことがあるんですが、やっぱり初期がいいですね。迷彩柄レオタードが一番カッコいい。
でもどうあがいても3次元が2次元にはなれないので、理想を追い求めることは永遠に続くのでしょうけど(笑)。
終わり
前編<プロビキニのトップ選手が明かすフィットネス界のドーピング事情「絶対に使わないで。人生に必要か考えてほしい」>を読む
中編<「生まれ持ったものが違う」プロビキニ選手・MIHARUが感じた世界の壁 それでも表現したい「体を磨えることの幸せ」>を読む
【プロフィール】
MIHARU みはる
1990年、愛知県生まれ。不登校だった高校時代に、SNSで知り合った友人の誘いでコスプレを始め、2次元キャラクターの体を目指して筋力トレーニングもスタート。2016年に「オールジャパン フィットネス ビキニ選手権」でカテゴリー優勝し、翌2017年にはモンゴルで開催された「アジア ボディビル&フィットネス選手権大会」で総合優勝。同年、日本人初の、「IFBBプロ」となり、中国・香港にパーソナルトレーニングジムをオープン。コンテストの審査員、競技者へのポージングレッスンなどを行なう。