わけもなくイライラする…それ“秋バテ”かも 放っておくと免疫力低下によるリスクも【医師に伺いました】
夏の暑さが終わったと思いきや急に冷え込む昨今。やる気の低下や疲労感、食欲不振。イライラ…“夏バテ”とは違う体調の違和感は“秋バテ”の可能性も。「秋バテ」は気温や湿度の変化、日照時間の短縮による生体リズムの乱れに起因するといわれますが、具体的にどのような対処法を施せばよいのでしょうか。“秋バテ”になる背景や症状、さらに冬に向けての体調管理について医療法人社団藤和会あんどう内科クリニックの安藤大樹医師に話を伺いました。
【画像】当てはまる項目が秋になって症状が増悪したなら、秋バテの可能性が高いかも…『秋バテ』チェックリスト
■「『たかが秋バテ』と侮ってはいけない」医師が警鐘 そのワケとは?
――そもそも秋バテの症状について教えてください。
【安藤大樹医師】秋バテの症状を理解するためには、その原因からアプローチをすると分かりやすいと思います。原因は大きく分けて3つです。まず一つ目の原因は「自律神経の乱れ」です。今年の夏は記録的な猛暑でしたが、暑さでエネルギーが消費されるだけでなく、冷房や冷たい飲み物などで体を冷やし過ぎることで血の巡りが悪くなり、自律神経が乱れ、その不調が秋になってだるさや肩こり、食欲不振となって表れてきます。また、夏から秋にかけての急激な気温の変化に対して、自律神経が一生懸命に体中の器官をコントロールしようと頑張るのですが、このコントロールが追い付かずに自律神経が乱れるのも、秋バテの原因の一つです。二つ目の原因は「内耳の不調」です。9月の台風シーズンが終わると秋雨前線が発生し、各地で大雨を降らせますが、この不安定な気圧の影響が、耳の奥にあって体のバランスをとる働きをしている「内耳」に作用し、めまいや頭痛といったいわゆる「気象病」を起こしやすくなりますし、結果的に自律神経のバランスも乱してしまいます。そして三つ目の原因が「セロトニンの減少」です。昔から「秋の日は釣瓶落とし」言われるように、秋は急に日照時間が減少します。日照時間が短くなり、太陽の光に当たる時間が少なくなると、脳内の神経伝達物質の一つで幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌が減ってしまいます。これが減ることにより不安感や意欲の低下をきたし、体調不調につながります。
以上を踏まえて、秋バテでみられる症状のチェックリストを作ってみました。一つでも当てはまる方で、秋になって症状が増悪したという自覚のある方は、秋バテの可能性が高いと思います。
――今年は夏日が多く、秋を感じる前に、一気に冷え込む印象がありますが、そういう時こそ、どんな体調管理が重要でしょうか。
【安藤大樹医師】冷えは自律神経の乱れ、胃腸の働きの低下、免疫力の低下など様々な不調につながりますので、秋バテ対策で身体を温めることは非常に大切です。朝1杯の白湯を飲んだり、朝食に温かい野菜スープなどを飲むと、冷えて働きの落ちた胃腸に効果的です。38〜39℃のぬるめの湯船にゆっくり浸かるのもいいですし、足湯を併用するのもいいでしょう。お酒も冷たいビールや焼酎は控えて、常温のワインや熱燗などへの切り替えを考えてみてください(ただし、飲みすぎは注意です!)。朝晩に冷え込むことも増えてきますので、季節にあったパジャマや布団を利用してください。
寒さで落ちてしまった体の力を戻すためには、食事も非常に大切です。食材選びで大切なことは「旬の食べ物を食べる」ことにつきます。旬の野菜やフルーツには、その季節に身体が欲している成分が豊富に含まれています。例えば、さつまいもやきのこは、腸内環境を整える食物繊維や、秋バテの解消に大切な、身体を温める効果が期待できます。また、さんまやサバ、かつおなどには疲労回復のためのたんぱく質やビタミンB群、鉄などが多く含まれています。あと、今の時期はなんといってもかぼちゃです。秋バテの解消に大切な身体を温める糖質や、疲労回復に効果のある抗酸化ビタミン(ビタミンA・C・E)もバランスよく含まれていますので、ハロウィンの時期に是非とっておきたい食材です。
――秋バテを引きずりすぎると、どのようなことが懸念されますか。
【安藤大樹医師】最初にお話しした通り、秋バテの原因は「自律神経の乱れ」「内耳の不調」「セロトニンの減少」です。特に年配の方々は今年の猛暑に伴い食欲低下、めまい、だるさの持続、睡眠の質の低下を認めることが多くなっています。そのまま漠然とした不調をかかえて秋を迎えた結果、免疫力が低下して、感染症やがんに罹るリスクが高くなります。また、自律神経の乱れ、特に交感神経が刺激され続けると、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)と呼ばれる免疫細胞の働きが低下し、やはり感染症やがんに罹りやすくなります。「いつもの風邪に比べて治りが悪い」「微熱などの漠然とした症状が2週間以上続いている」「夏の体重減少が回復しない」といった症状を認める場合は、医療機関への受診をお勧めします。
一時的にセロトニンが低下することにより憂鬱な気分になることは、誰しも経験があると思いますが、憂鬱感や不安感が2週間以上続く場合は、うつ病や不安障害の可能性があります。これは、単に気持ちの問題ではなく、脳のエネルギーであるセロトニンが減少することによっておこる病気です。「気合が足りないからだ」「もっと頑張らなきゃダメだ」などと自己判断せず、一度医療機関を受診してみて下さい。
その他、持続する症状の中には、色々な病気が隠れている場合があります。「たかが秋バテ」などと侮ってはいけません。自己判断せず、不調や不安を感じた時は、是非お医者さんに相談してみて下さい。
<秋バテの主な症状>
疲労感: 秋になると日照時間が短くなり、人間の体内時計が狂いやすくなります。その結果、体が疲れやすくなるのです。
食欲不振: 温度の急な変動は、食欲に影響を及ぼし、特に暑さ寒さが激しい秋には食欲が低下しやすいです。
憂鬱・無気力: 日照時間の短縮や気圧の変化は、人の気分にも影響を及ぼします。特に無気力感や憂鬱感は、秋バテの代表的な症状とも言えます。
<秋バテの対策>
栄養バランスの良い食事: バランスの良い食事は体調管理に欠かせません。特にビタミンやミネラルが豊富な野菜や果物を積極的に摂取しましょう。
水分補給: 汗をかかないからと言って水分補給を忘れがちな秋。しかし、適切な水分補給は常に重要です。
適度な運動: 無理なく続けられる運動を習慣化し、新陳代謝を活発に保つことで、秋バテを予防することができます。
<冬に向けての体調管理>
秋バテから立ち直ると同時に、冬に備えての体調管理も忘れてはいけません。体を温める食事や十分な睡眠、免疫力を高める食事などに意識を向け、体調を整えていきましょう。
秋は冬に向けての体調を整える大切な時期です。この時期の体調管理に気を付け、健康的な生活を過ごしましょう。
体が冷やされると血管が急激に収縮するため、血圧が一気に上昇し、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性が増加します。寒暖差に注意して生活しましょう。
冬場は空気が乾燥しており、また暖房器具などの使用により室内の空気も乾燥しやすいことから、皮膚から多くの水分が奪われます。こまめな水分補給を意識しましょう。
さらに日照時間が減る時期に入りますので、セロトニンを増やすために朝日を浴びたり、ウォーキングやジョギングなどのリズミカルな運動が習慣づけましょう。
【監修者プロフィール】
安藤大樹(あんどうだいき)
医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック院長。藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)卒業後、同大学病院研修を経て、同大学病院総合診療内科所属。2011−2015年にかけて同院最優秀指導医賞受賞。岐阜市民病院総合内科を経て現職。岐阜大学総合病態内科学非常勤講師、藤田医科大学救急総合内科客員講師、岐阜市民病院研修管理委員会外部委員。
『医療よろず相談所』をクリニックのコンセプトに掲げ、医療に関わるあらゆる問題に向き合う生粋のプライマリケア医。「プライマリケアは日本の医療を救う」と信じ、若手医師の教育も積極的に行っている。
医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック
andoc-clinic.com
■「『たかが秋バテ』と侮ってはいけない」医師が警鐘 そのワケとは?
――そもそも秋バテの症状について教えてください。
【安藤大樹医師】秋バテの症状を理解するためには、その原因からアプローチをすると分かりやすいと思います。原因は大きく分けて3つです。まず一つ目の原因は「自律神経の乱れ」です。今年の夏は記録的な猛暑でしたが、暑さでエネルギーが消費されるだけでなく、冷房や冷たい飲み物などで体を冷やし過ぎることで血の巡りが悪くなり、自律神経が乱れ、その不調が秋になってだるさや肩こり、食欲不振となって表れてきます。また、夏から秋にかけての急激な気温の変化に対して、自律神経が一生懸命に体中の器官をコントロールしようと頑張るのですが、このコントロールが追い付かずに自律神経が乱れるのも、秋バテの原因の一つです。二つ目の原因は「内耳の不調」です。9月の台風シーズンが終わると秋雨前線が発生し、各地で大雨を降らせますが、この不安定な気圧の影響が、耳の奥にあって体のバランスをとる働きをしている「内耳」に作用し、めまいや頭痛といったいわゆる「気象病」を起こしやすくなりますし、結果的に自律神経のバランスも乱してしまいます。そして三つ目の原因が「セロトニンの減少」です。昔から「秋の日は釣瓶落とし」言われるように、秋は急に日照時間が減少します。日照時間が短くなり、太陽の光に当たる時間が少なくなると、脳内の神経伝達物質の一つで幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌が減ってしまいます。これが減ることにより不安感や意欲の低下をきたし、体調不調につながります。
以上を踏まえて、秋バテでみられる症状のチェックリストを作ってみました。一つでも当てはまる方で、秋になって症状が増悪したという自覚のある方は、秋バテの可能性が高いと思います。
――今年は夏日が多く、秋を感じる前に、一気に冷え込む印象がありますが、そういう時こそ、どんな体調管理が重要でしょうか。
【安藤大樹医師】冷えは自律神経の乱れ、胃腸の働きの低下、免疫力の低下など様々な不調につながりますので、秋バテ対策で身体を温めることは非常に大切です。朝1杯の白湯を飲んだり、朝食に温かい野菜スープなどを飲むと、冷えて働きの落ちた胃腸に効果的です。38〜39℃のぬるめの湯船にゆっくり浸かるのもいいですし、足湯を併用するのもいいでしょう。お酒も冷たいビールや焼酎は控えて、常温のワインや熱燗などへの切り替えを考えてみてください(ただし、飲みすぎは注意です!)。朝晩に冷え込むことも増えてきますので、季節にあったパジャマや布団を利用してください。
寒さで落ちてしまった体の力を戻すためには、食事も非常に大切です。食材選びで大切なことは「旬の食べ物を食べる」ことにつきます。旬の野菜やフルーツには、その季節に身体が欲している成分が豊富に含まれています。例えば、さつまいもやきのこは、腸内環境を整える食物繊維や、秋バテの解消に大切な、身体を温める効果が期待できます。また、さんまやサバ、かつおなどには疲労回復のためのたんぱく質やビタミンB群、鉄などが多く含まれています。あと、今の時期はなんといってもかぼちゃです。秋バテの解消に大切な身体を温める糖質や、疲労回復に効果のある抗酸化ビタミン(ビタミンA・C・E)もバランスよく含まれていますので、ハロウィンの時期に是非とっておきたい食材です。
――秋バテを引きずりすぎると、どのようなことが懸念されますか。
【安藤大樹医師】最初にお話しした通り、秋バテの原因は「自律神経の乱れ」「内耳の不調」「セロトニンの減少」です。特に年配の方々は今年の猛暑に伴い食欲低下、めまい、だるさの持続、睡眠の質の低下を認めることが多くなっています。そのまま漠然とした不調をかかえて秋を迎えた結果、免疫力が低下して、感染症やがんに罹るリスクが高くなります。また、自律神経の乱れ、特に交感神経が刺激され続けると、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)と呼ばれる免疫細胞の働きが低下し、やはり感染症やがんに罹りやすくなります。「いつもの風邪に比べて治りが悪い」「微熱などの漠然とした症状が2週間以上続いている」「夏の体重減少が回復しない」といった症状を認める場合は、医療機関への受診をお勧めします。
一時的にセロトニンが低下することにより憂鬱な気分になることは、誰しも経験があると思いますが、憂鬱感や不安感が2週間以上続く場合は、うつ病や不安障害の可能性があります。これは、単に気持ちの問題ではなく、脳のエネルギーであるセロトニンが減少することによっておこる病気です。「気合が足りないからだ」「もっと頑張らなきゃダメだ」などと自己判断せず、一度医療機関を受診してみて下さい。
その他、持続する症状の中には、色々な病気が隠れている場合があります。「たかが秋バテ」などと侮ってはいけません。自己判断せず、不調や不安を感じた時は、是非お医者さんに相談してみて下さい。
<秋バテの主な症状>
疲労感: 秋になると日照時間が短くなり、人間の体内時計が狂いやすくなります。その結果、体が疲れやすくなるのです。
食欲不振: 温度の急な変動は、食欲に影響を及ぼし、特に暑さ寒さが激しい秋には食欲が低下しやすいです。
憂鬱・無気力: 日照時間の短縮や気圧の変化は、人の気分にも影響を及ぼします。特に無気力感や憂鬱感は、秋バテの代表的な症状とも言えます。
<秋バテの対策>
栄養バランスの良い食事: バランスの良い食事は体調管理に欠かせません。特にビタミンやミネラルが豊富な野菜や果物を積極的に摂取しましょう。
水分補給: 汗をかかないからと言って水分補給を忘れがちな秋。しかし、適切な水分補給は常に重要です。
適度な運動: 無理なく続けられる運動を習慣化し、新陳代謝を活発に保つことで、秋バテを予防することができます。
<冬に向けての体調管理>
秋バテから立ち直ると同時に、冬に備えての体調管理も忘れてはいけません。体を温める食事や十分な睡眠、免疫力を高める食事などに意識を向け、体調を整えていきましょう。
秋は冬に向けての体調を整える大切な時期です。この時期の体調管理に気を付け、健康的な生活を過ごしましょう。
体が冷やされると血管が急激に収縮するため、血圧が一気に上昇し、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性が増加します。寒暖差に注意して生活しましょう。
冬場は空気が乾燥しており、また暖房器具などの使用により室内の空気も乾燥しやすいことから、皮膚から多くの水分が奪われます。こまめな水分補給を意識しましょう。
さらに日照時間が減る時期に入りますので、セロトニンを増やすために朝日を浴びたり、ウォーキングやジョギングなどのリズミカルな運動が習慣づけましょう。
【監修者プロフィール】
安藤大樹(あんどうだいき)
医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック院長。藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)卒業後、同大学病院研修を経て、同大学病院総合診療内科所属。2011−2015年にかけて同院最優秀指導医賞受賞。岐阜市民病院総合内科を経て現職。岐阜大学総合病態内科学非常勤講師、藤田医科大学救急総合内科客員講師、岐阜市民病院研修管理委員会外部委員。
『医療よろず相談所』をクリニックのコンセプトに掲げ、医療に関わるあらゆる問題に向き合う生粋のプライマリケア医。「プライマリケアは日本の医療を救う」と信じ、若手医師の教育も積極的に行っている。
医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック
andoc-clinic.com