「肩こり」の放置はリスク大? 長引く肩こりが招く症状と病気のサイン 【医師解説】
多くの人が一度は経験したことのある『肩こり』。身近な不調のひとつのため、つい「たいしたことない」とケアを怠る人もいますが、放置すると頭痛や吐き気、めまいなどの症状を引き起こすことも。また稀に、長期間痛みや不快感が続く場合は、重大な病気のサインというケースもあります。意外と知らない肩こりの実態と、生活習慣の見直しによる改善方法を湘南リウマチ膠原病内科・上原武晃院長が解説します。
【貴重画像】「これは読めないw」「ヤンキー用語?」発売当初のエレキバン
■肩こりが招くその他の健康トラブルとは
肩こりは、首から肩、背中にかけての筋肉が緊張や疲労から硬くこわばって、張ったり痛んだりする状態のこと。医学的な正式名称は「肩部筋群症候群」(Shoulder Myofascial Pain Syndrome)と呼ばれます。
現代ではよくある不調のひとつで、長時間のデスクワークや姿勢の悪さが主な原因となっていること、マッサージやストレッチによる改善方法が有効なことはよく知られていますが、“肩こり放置”によるリスクはあまり知られていません。肩の痛みは早期の段階で適切なケアをしないと、下記のような症状につながることがあります。
▼肩こりが進むと現れる症状
【症状1:頭痛】
首から頭部にかけての筋肉や神経が圧迫されることで、頭痛を引き起こす場合があります。肩こり由来の頭痛は、特に後頭部やこめかみ部分に痛みを感じます。
【症状2:吐き気やめまい】
首の筋肉や血管が圧迫されて、脳への血液の流れが悪くなると、吐き気やめまいを感じる場合があります。
【症状3:肩関節の可動域の低下】
肩周りの筋肉が硬くなると、肩関節の動きが制限されて、腕を上げたり回したりするのが困難になる場合があります。
【症状4:五十肩(肩関節周囲炎)】
肩関節の周囲にある腱などが炎症を起こして、肩の痛みや可動域の低下を引き起こす病気です。肩こりが長期間続くと、五十肩になるリスクが高まります。
また、肩こりは、単なる筋肉の疲労や血行不良によるものだけではありません。長期間続く場合は、次のような病気の症状として現れている可能性もあります。
■長引く場合は要注意! 肩こり症状がある病気
【病気1:頚椎疾患】
頚椎(首の骨)やその周囲の組織に異常がある場合、神経や血管が圧迫されて肩こりや頭痛、手足のしびれなどを引き起こすことがあります。代表的なものに頚椎椎間板ヘルニアや頚椎変形症などがあります。
【病気2:高血圧症】
血圧が高いと、血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉に酸素や栄養が届きにくくなります。
【病気3:眼疾患】
近視や乱視、老眼などの眼疾患は、目を酷使することで眼精疲労を引き起こし、それが首や肩にも影響します。また、眼圧が高いと頭部や首部に圧迫感を感じる場合もあります。
【病気4:耳鼻咽喉疾患】
耳鼻咽喉は首から上に位置するため、その部分に炎症や感染などがあると、首や肩にも影響します。代表的なものに副鼻腔炎や扁桃腺炎などがあります。
【病気5:心臓疾患】
頻繁な肩こりや背中の痛みは、心臓疾患の早期症状として現れることがあります。特に左腕に放射する痛みや圧迫感などが見られる場合、心臓への影響を疑う必要があります。
【病気6:リウマチ性疾患】
筋肉や関節に痛みやこわばりを引き起こすリウマチ性多発筋痛症や多発性筋炎といわれる、いくつかのリウマチ性疾患や自己免疫疾患は、「単なる肩こり」から診断となることも多い病気です。
【病気7:更年期】
40〜50代の女性の場合は女性ホルモンのバランスが変わってくることで、更年期症状の一つとして肩こりがでることがあります。
今回は、あまり知られていない『肩こり』の実態についてお話ししましたが、ほとんどの『肩こり』は姿勢や運動不足といった生活習慣によるものです。これらを改善することで予防、症状の緩和が期待できます。
まずは、デスクワーク中の姿勢に気をつけましょう。背筋を伸ばして肩甲骨を寄せるようにし、定期的に休憩を取って姿勢を変えることも大切です。また、パソコンやスマホは、画面の位置や明るさも調整して目の負担を減らしましょう。マッサージやストレッチで筋肉をほぐす、温めるか冷やしてコリをほぐすといった方法も有効です。その他にも日常生活で心がけたい5つの習慣をご紹介します。
■まずは姿勢の改善を、ポイントは「背筋をのばし肩甲骨を寄せる」こと
▼肩こりを予防・緩和する生活習慣
・適度な運動
運動は筋力や柔軟性を高めて血行を促進する効果があります。肩周りの筋肉を動かす運動、腕回しや肩甲骨回し、首回しのほか、ウォーキングなどを日常生活に取り入れましょう。
・ストレスを解消
ストレスは自律神経のバランスを崩して肩こりを悪化させます。ストレス解消する方法を見つけることが大切です。
・水分補給をする
水分不足は血液の流れを悪くして肩こりの原因になります。適度な水分補給を心がけましょう。
・栄養バランスの良い食事をする
栄養不足は筋肉の働きや免疫力を低下させて肩こりの原因になります。ビタミンB群やカルシウムなどのミネラルを積極的に摂取しましょう。
・冷え性対策をする
冷え性は血管収縮や筋肉硬化の原因になります。暖かい服装や入浴、温かい飲み物などを意識しましょう。
肩こりは一般的には軽度な症状であり、ほとんどの場合は姿勢の問題や筋肉の緊張によるものです。しかし、長期間にわたって放っておいたり、適切に対処されない場合、一部の症例では関連する疾患や病気の可能性も考えられます。そして、それは自分だけではなかなか気づくことができません。
肩こりが続く場合、または胸痛や息苦しさ、頭痛、めまい、手のしびれ、体重減少、食欲不振、発熱といった他の症状と合わせて現れる場合は、医師や医療専門家に相談することが大切です。適切な評価と診断を受けることで、放っておくと重症化してしまうような病気を早期発見できたり、適切な治療や対処法により、悩んでいた肩こりが意外と簡単に解決することもあるかもしれません。
記事監修/上原武晃
「湘南リウマチ膠原病内科」院長。日本リウマチ学会専門医・指導医・評議員。2000例を超えるリウマチ膠原病専門診療の経験を通し、更年期や女性特有の関節症状の鑑別、リウマチ膠原病疾患の早期発見早期治療、専門ケアに注力した診療を行う。
■肩こりが招くその他の健康トラブルとは
肩こりは、首から肩、背中にかけての筋肉が緊張や疲労から硬くこわばって、張ったり痛んだりする状態のこと。医学的な正式名称は「肩部筋群症候群」(Shoulder Myofascial Pain Syndrome)と呼ばれます。
現代ではよくある不調のひとつで、長時間のデスクワークや姿勢の悪さが主な原因となっていること、マッサージやストレッチによる改善方法が有効なことはよく知られていますが、“肩こり放置”によるリスクはあまり知られていません。肩の痛みは早期の段階で適切なケアをしないと、下記のような症状につながることがあります。
▼肩こりが進むと現れる症状
【症状1:頭痛】
首から頭部にかけての筋肉や神経が圧迫されることで、頭痛を引き起こす場合があります。肩こり由来の頭痛は、特に後頭部やこめかみ部分に痛みを感じます。
【症状2:吐き気やめまい】
首の筋肉や血管が圧迫されて、脳への血液の流れが悪くなると、吐き気やめまいを感じる場合があります。
【症状3:肩関節の可動域の低下】
肩周りの筋肉が硬くなると、肩関節の動きが制限されて、腕を上げたり回したりするのが困難になる場合があります。
【症状4:五十肩(肩関節周囲炎)】
肩関節の周囲にある腱などが炎症を起こして、肩の痛みや可動域の低下を引き起こす病気です。肩こりが長期間続くと、五十肩になるリスクが高まります。
また、肩こりは、単なる筋肉の疲労や血行不良によるものだけではありません。長期間続く場合は、次のような病気の症状として現れている可能性もあります。
■長引く場合は要注意! 肩こり症状がある病気
【病気1:頚椎疾患】
頚椎(首の骨)やその周囲の組織に異常がある場合、神経や血管が圧迫されて肩こりや頭痛、手足のしびれなどを引き起こすことがあります。代表的なものに頚椎椎間板ヘルニアや頚椎変形症などがあります。
【病気2:高血圧症】
血圧が高いと、血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉に酸素や栄養が届きにくくなります。
【病気3:眼疾患】
近視や乱視、老眼などの眼疾患は、目を酷使することで眼精疲労を引き起こし、それが首や肩にも影響します。また、眼圧が高いと頭部や首部に圧迫感を感じる場合もあります。
【病気4:耳鼻咽喉疾患】
耳鼻咽喉は首から上に位置するため、その部分に炎症や感染などがあると、首や肩にも影響します。代表的なものに副鼻腔炎や扁桃腺炎などがあります。
【病気5:心臓疾患】
頻繁な肩こりや背中の痛みは、心臓疾患の早期症状として現れることがあります。特に左腕に放射する痛みや圧迫感などが見られる場合、心臓への影響を疑う必要があります。
【病気6:リウマチ性疾患】
筋肉や関節に痛みやこわばりを引き起こすリウマチ性多発筋痛症や多発性筋炎といわれる、いくつかのリウマチ性疾患や自己免疫疾患は、「単なる肩こり」から診断となることも多い病気です。
【病気7:更年期】
40〜50代の女性の場合は女性ホルモンのバランスが変わってくることで、更年期症状の一つとして肩こりがでることがあります。
今回は、あまり知られていない『肩こり』の実態についてお話ししましたが、ほとんどの『肩こり』は姿勢や運動不足といった生活習慣によるものです。これらを改善することで予防、症状の緩和が期待できます。
まずは、デスクワーク中の姿勢に気をつけましょう。背筋を伸ばして肩甲骨を寄せるようにし、定期的に休憩を取って姿勢を変えることも大切です。また、パソコンやスマホは、画面の位置や明るさも調整して目の負担を減らしましょう。マッサージやストレッチで筋肉をほぐす、温めるか冷やしてコリをほぐすといった方法も有効です。その他にも日常生活で心がけたい5つの習慣をご紹介します。
■まずは姿勢の改善を、ポイントは「背筋をのばし肩甲骨を寄せる」こと
▼肩こりを予防・緩和する生活習慣
・適度な運動
運動は筋力や柔軟性を高めて血行を促進する効果があります。肩周りの筋肉を動かす運動、腕回しや肩甲骨回し、首回しのほか、ウォーキングなどを日常生活に取り入れましょう。
・ストレスを解消
ストレスは自律神経のバランスを崩して肩こりを悪化させます。ストレス解消する方法を見つけることが大切です。
・水分補給をする
水分不足は血液の流れを悪くして肩こりの原因になります。適度な水分補給を心がけましょう。
・栄養バランスの良い食事をする
栄養不足は筋肉の働きや免疫力を低下させて肩こりの原因になります。ビタミンB群やカルシウムなどのミネラルを積極的に摂取しましょう。
・冷え性対策をする
冷え性は血管収縮や筋肉硬化の原因になります。暖かい服装や入浴、温かい飲み物などを意識しましょう。
肩こりは一般的には軽度な症状であり、ほとんどの場合は姿勢の問題や筋肉の緊張によるものです。しかし、長期間にわたって放っておいたり、適切に対処されない場合、一部の症例では関連する疾患や病気の可能性も考えられます。そして、それは自分だけではなかなか気づくことができません。
肩こりが続く場合、または胸痛や息苦しさ、頭痛、めまい、手のしびれ、体重減少、食欲不振、発熱といった他の症状と合わせて現れる場合は、医師や医療専門家に相談することが大切です。適切な評価と診断を受けることで、放っておくと重症化してしまうような病気を早期発見できたり、適切な治療や対処法により、悩んでいた肩こりが意外と簡単に解決することもあるかもしれません。
記事監修/上原武晃
「湘南リウマチ膠原病内科」院長。日本リウマチ学会専門医・指導医・評議員。2000例を超えるリウマチ膠原病専門診療の経験を通し、更年期や女性特有の関節症状の鑑別、リウマチ膠原病疾患の早期発見早期治療、専門ケアに注力した診療を行う。