30歳の清楚系女子。欠点の見当たらない彼女が、アプリで出会った男性にスルーされる訳

2023年8月16日 5時2分

恋人や結婚相手を探す手段として浸透した「マッチングアプリ」。

接点のない人とオンラインで簡単につながることができる。

そう、出会うまでは早い。だけど…その先の恋愛までもが簡単になったわけじゃない。

私が、僕が、あの時NGを出したワケ。ここでこっそりと教えてあげる。

▶【Q】はこちら：彼氏未満の男性から、3度目のデート帰りに「もう少し一緒にいたい」と誘われ…。正しい対処法は？

Episode12【A】：佐藤俊（29）

『YURI：俊くん、昨日はありがとう。またゴハン行けたら嬉しいな！今日も仕事頑張ろうね』

― ……。

マッチングアプリで出会い、3回食事に行った百合。

彼女からのLINEに、僕は返信できずにいた。

「ねぇねぇ、朝ごはん食べに行く？私、ホテルのビュッフェがいいな～」

僕の自宅である、千駄ヶ谷のマンションの一室。

ベッドルームから甘ったれた声を出したのは、昨晩知り合ったばかりのマドカ。

「ホテルの朝食？どこがいいの」

本当は、もう帰ってほしい。

けれど、僕は昨日マドカに救われた。

飲み足りなくて、ひとりで飲み直そうとしたところ、声をかけてくれたのが彼女なのだ。

「う～ん、作りたてのオムレツが食べられるとこ！」

― そんなの、どこのラグジュアリーホテルにもあるだろ。

そう鼻で笑ないながら、21歳の女性の気楽さに安心しながら、バスルームの扉を閉めた。

清楚な彼女

「はじめまして、百合です」
「佐藤俊です。百合さん、よろしくお願いします」

百合に「いいね」をしたのは、僕が先だった。

黒髪にナチュラルメイク。白いワンピースが似合う清楚な雰囲気。

どこにでもいる、綺麗な普通の女性。そう言ってしまえばそれまでなのだが、僕はそういう人がタイプなのだ。

お姫様気質で、気の強い元カノと別れて1年。僕は自由に恋愛を楽しみたくて、マッチングアプリを始めた。

放任主義のかわいい彼女に癒やされたい。それが一番の願いだった。

百合の家が等々力なので、最初のデートは自由が丘の『イレールビス自由が丘』を選んだ。

百合は、お酒が好きらしく、ワインをおいしそうに飲む。

その無邪気な姿が、とてもかわいかった。

「俊くんは、アプリで何人くらい会った？」

百合が僕に聞いた。

「たぶん、10人くらいかな。昔から登録してたけど、最近また使い始めてさ。百合ちゃんは？」

本当のことを言おうか迷ったが、嘘をつく理由もないので正直に話した。

百合は、10人という数字に少し戸惑っていたようだが、すぐに笑顔に戻った。

「私は、俊くんが初めてだよ。会いたいと思う人ってあまりいなくて」

そんなふうに言われて、嬉しくない男がいるだろうか。

「え～？嬉しいけど、本当に？」
「うん、ほんと」

反応も素直だし、服装だけじゃなく仕草も女性らしい。

「百合ちゃん…って、呼んでいいかな。えっと、こんなに可愛いのにどうしてアプリ使ってるの？」

「う～んと、シンプルに日常で出会いが少ないから…かな。最近はアプリ婚も珍しくないし」

「そかそか、たしかにね」

僕は彼女ともっと仲良くなりたくて、その日のうちに次のデートの約束をすることにした。

「百合ちゃん、またゴハン行こうよ。いつ空いてる？」

二度目のデート

ワインが好きな百合のために、僕は神楽坂にあるお気に入りのスペイン料理店を予約した。

彼女は、自己主張が強いほうじゃないので、メニューは僕が決めた。

僕は食べたいものがはっきりしているので、そこは問題ないし、むしろ任せてくれるのは都合がよかった。

― このあとは、僕の家でゆっくりしたいな～。

そんなことを思っていたのだが、百合は目が覚めるような質問を僕に投げかけた。

「俊くんは、結婚願望とかってある？」

「う～ん、すぐにしたいわけじゃないけど、いずれはしたいよ」

僕はまだ29歳だ。本音をいうと、あと3年は遊んでいたい。

だけど、今ここでそれを話す意味はないだろう。

「うんうん。私も、いいひとがいたらしたいって感じかな。でも、もう30歳だし、結婚を意識できる人としか付き合いたくないかも」

「そっかぁ。まぁ、そのほうが効率いいよね。別れるのも体力いるし」

僕は、百合が求める答えから遠くなりすぎない返答をした。

◆

先日の神楽坂で百合を家に呼べなかったこともあり、僕は日を空けずに彼女を食事に誘った。

今回は、百合の要望も聞き、恵比寿のイタリアンで待ち合わせた。

ビールで乾杯をして、冷えた白ワインを飲む。

百合は今日も上品なワンピースを着ていて、まるでアナウンサーのようだ。

― 可憐で可愛いなぁ。

そう思いながら食事を楽しんでいると、百合の質問タイムが始まった。

「俊くん、私以外の人とも会ってる？」

「え？あ～。実を言うと、百合ちゃんと知り合う前に出会った人がいて、その人とはこの前食事したよ」

「…そうなんだ」

百合は、明らかに落ち込んでいる。

彼女も僕のことを気に入っているのは、間違いないようだ。

「うん。でもお互いに違うと思ったのか、その1回だけ」

そう言うと、百合はほっとした表情を浮かべた。

― 今日こそは、一歩先に進みたいな～。

そう思った。

「百合ちゃんは、どんな人がタイプなんだっけ」

「一緒にいて落ち着く人かなぁ。刺激よりも安心が欲しいから、誠実で真面目な人がいいかも」

やっぱり百合は結婚がしたい女性だという事実が胸に突き刺さる。

「そっかぁ、刺激より安心…結婚を意識してたら、その答えになるよね」

正直、少し気持ちが萎えてしまったが、ここで諦めるのももったいない。

「百合ちゃん、今日って何時まで平気？」

店を出てから百合に聞く。

「明日仕事だけど、まだ大丈夫だよ」

「じゃあ、もう少し一緒にいたいんだけど…いい？」

僕は、百合の手を握った。これで乗ってくれるかどうか、一か八かだ。

「…やっぱり、今日は帰ろうかな」
「そっか、わかった。また連絡するね」

― ダメか…。

百合は、結婚相手を探している。

未来が見える彼氏が欲しいのだろうと、話していてわかった。

だけど、僕はまだまだ遊びたい。

いろんな女の子と食事をしてお酒を飲んだり、一夜を共にしたり。そんな刺激が日常に欲しいのだ。

百合のどこが悪いとか、そういうことではなく、ただ、マッチングアプリの利用目的が違っただけ。

恵比寿西口の雑踏を歩いていると、ほろ酔いの若い女性に絡まれた。

「ねぇ、そこのおに～さん。私と飲みに行かない？友達と喧嘩して、ひとりになっちゃったし、飲み足りないの」

「……いいよ」
「えっ！いいの」

僕は、マドカというその女を連れて雑居ビルの適当なバーに入った。

そこから彼女がどうして自宅に来たのかは、よく覚えていない。

正直タイプではないし、百合のほうが断然かわいい。

だけど、ノリのいいマドカと一緒にいるのは楽しくて、飲みすぎてしまったことは記憶にある。そして、その後ベッドに誘ったことも。