広島3大祭りのひとつ“すみよしさん” 初挑戦の漕(こぎ)伝馬
およそ300年の伝統を持つ広島夏の風物詩「すみよしさん」。みこしを引き「漕伝馬船」が川を上る神事に密着。そこには、たくましくも幻想的な祭りの姿がありました。
中区 住吉神社で行われた広島三大祭りのひとつ「すみよしさん」。江戸時代ごろから続くこの祭り。周囲には屋台も並び多くの人でにぎわいます。
そんな「すみよしさん」のメインといえば神社横の川を使ったこの神事…
「漕伝馬船」がみこしを乗せた「御座船」を引っ張り川をのぼる水の安全祈願「広島管弦祭」です。音頭に合わせ人力で進む漕伝馬に今回初めて挑戦する人がいました…
(テロップ)
本番2日前の7月30日、行われていたのは提灯や色とりどりの布など漕伝馬船の飾りつけ。
ベテランに混ざって準備するのは今回漕ぎ手に初挑戦する佐々木大知さんです。宮城県出身の佐々木さんは刑務官として広島刑務所に赴任。住吉神社の近くで趣味の釣りに興じていた際、度々見かけた漕伝馬の練習に心を動かされ参加を志願しました。
今回初挑戦の佐々木大知さん(45)「掛け声をかけながら川を上っていくその姿を見て、僕も広島住んでいるんだったら吉島地区っていうところ住んでいるんだったらいつか乗ってみたいなと思っていた。めちゃくちゃうれしいです。祭り大好き人間としたらこれ以上の喜びはないです」
準備後祭り前、最後の練習がスタート。
「ソーレ! ソーレ!」太鼓の音と共に掛け声をかけ、船のオール=櫂を漕ぎます。本番は住吉神社を出発し、原爆ドームを越え戻るルート。
人力で進む漕伝馬では船の左右が同じ力で漕ぐ事が重要ですが…
「佐々木さん!櫂(=オール)が低いわ」
佐々木大知さん「ちょっと低いですね」
先輩「合わせるように」
佐々木大知さん「はい」
漕ぎすぎても控えすぎても、ダメ…これがなかなか難しい。
佐々木大知さん「ちょっと欲張って深く漕ごうとするとみんなからリズムが遅れてしまったり、ああやって後ろからベテランの漕ぎ手の人が見てアドバイスくれるんでそれに従うと」
手のひらには”練習の賜物”大きなマメの跡ができていました。
漕ぎ手の先輩「(佐々木さんの漕ぎは)力強いと思います。すごく姿勢よく頑張っているなと」
佐々木さん「ありがとうございます恐れ多い…超初心者なんで。平和公園はいろんな国の人が来るのでみんな手を振ってくれるのでそれがすごい励みにはなりますね」
この日の太田川には舟歌が遅くまで鳴り響いていました。
そして祭り当日。
佐々木大知さん「こんにちは。「きのうもちょっと夜見に来たんですけれど予想以上に人が多く、あの視線が集まるのかと思うとめちゃくちゃ緊張します」
午後6時、法被に着替えまずは安全祈願。みこしを「御座船」にのせ出発の準備完了。佐々木さん緊張を隠せません。
川岸に詰めかけた多くの観客に見守られながらいざ出港です。
「それそれ」18人が乗り込み息ぴったりの櫂さばき。佐々木さんも必死についていきます。出港から40分、日も暮れ始めたころ折り返し地点に到着。
ライトアップされた原爆ドームを背にした帰り道、ちょっと辛そうな佐々木さんですが声を張り上げ進みます。
出港から2時間、多くの人がまち受ける中、住吉神社に到着。
「今年もどうもありがとうございました」
佐々木大知さんも充実した表情です。「漕ぎ手とみている人たちの一体感。祭りの中で一心同体になるという言う感覚がまさに身をもって味わえたので、広島人の魂というものを体で感じることができました」
江戸時代から続く伝統の祭り「すみよしさん」。そこにはたくましい舟歌と共に世代を超え祭りを彩る人たちの姿がありました。