日本最大級のフィギュア即売会「ワンダーフェスティバル 2023[夏]」が、7月30日に千葉・幕張メッセ国際展示場にて開催された。

ワンダーフェスティバル 2023[夏]

ワコムと3D-GAN、Maxonは共同出展し、液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 27」の展示やデジタルスカルプトソフトウェア「ZBrush」の体験などのほか、特設スペースでの公開講座などを行った。

○ワンフェスで「Cintiq Pro 27」を体験

ワンダーフェスティバル(通称ワンフェス)は、海洋堂主催のガレージキットイベント。プロ・アマを問わず自作キットが一堂に会し、フィギュアやプラモデル好きが全国から集う一大イベントとなっている。

会場は全国から訪れた来場者でにぎわった

ワコムは3Dデータを活用する会・3D-GAN、Maxon Computerと共同出展し、液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 27」をはじめ、「Wacom Cintiq 16/22」「Wacom Intuos Pro」などを使って、デジタルスカルプトソフトウェア「ZBrush」の使用感を体験できるブースを展開した。

ワコム、3D-GAN、Maxon Computerの共同出展ブース

ブースでは高精細ディスプレイでハイスペックな「Wacom Cintiq Pro 27」が体験できるとあって盛況。板タブユーザーが液タブの使用感と比較するために来訪したり、「ZBrush」を使った3Dモデリングを体験したい人が訪れたりと、多くの人が足を止めていた。さらに、ブースに訪れた人で「ペンタブ未経験」と答えた人も少なくなかった。







Cintiq Pro 27をはじめ、各種ペンタブでZBrushでのモデリングが体験できるコーナーを展開

○3Dモデリングは「意外と簡単に始められる」

ブース隣の特設スペース「3D-GAN デジタル原型ステージ」では、初心者向けから経験者にも役立つ「ZBrush」講座を実施。中でもワコム主催の「ペンタブで始めよう!3Dフィギュア講座」では、初心者が3Dプリンタでフィギュアを作るにあたり、最低限必要なアイテムは何なのかなど、まったく初めての人に向けて解説した。

講師を務めた3D造形/デザイナーの吉本大輝氏

講師を務めたのは、「吉本アートファクトリー」など3つの会社を経営し、「玉骨標本」など3D造形/デザイナーとして活躍している吉本大輝。吉本氏は2022年のワンフェスで話題となった「成金おじさん」シリーズも手掛けており、今年は成金おじさんの靴を探す女性の新作「女中さん」などを出展している。

2022年のワンフェスで話題をさらった「成金おじさん」フィギュアに新作「女中さん」が登場

「成金おじさん」シリーズは和田邦坊『成金栄華時代』の初めてとなる公式フィギュア。新作の「女中さん」は、絵では後ろ姿で顔が描かれていないが、この絵を所有する香川県灸まん美術館による徹底監修で和田邦坊のタッチを再現し、女中さんの顔も描かれているという。その“秘めたお顔”は、来場者と購入者限定で見られるのだとか。





ブース内展示

このようにユニークなアイデアで人気の吉本氏によると、3Dモデリングを始めるのに必要な“三種の神器”は3つ。「パソコン」と「ソフトウェア」、そして「ペンタブレット」だ。

3Dモデリング“三種の神器”

このうち、「ソフトウェア」はプロも使用する「ZBrush」だ。「ZBrush」は、プロ用の「ZBrush」、機能制限版の「ZBrushCore」の有料版2種、そして超機能制限版ながら無料で使うことができる「ZBrushCoreMini」の計3種類。「ZBrushCoreMini」はエントリーモデルの基本的な機能だけを集約したものなので、今回はこちらを使って実際に使い方を紹介した。

3Dソフト「ZBrush」の製品体系

そして「パソコン」の求められるスペックも、ZBrushの動作環境から解説。特にRAMは4GB(6GB以上を推奨)となっているが、快適な操作のためには8GBや16GBなど、より大きなメモリを搭載することをお勧めしていた。

また、吉本氏はワコムのペンタブを推奨しているが、その理由としてZBrushの動作環境に「ペンタブレット:マウスおよび、ワコム社または、ワコム社と互換性のあるもの」と明記されているからだと話す。ワコムは「ZBrush」の開発会社とパートナーシップを締結していたこともあり、動作が間違いなく保証されていると説明した。

ワコムのペンタブはZBrushの動作環境に記載がある

一口にペンタブと言っても、板タブと液タブの2種類がある。吉本氏は両方を使い分けているとのことだったが、3Dモデリングの際には意外にも「板タブを使うことが多い」という。選び方の目安として、持ち運ぶ可能性があるならコンパクトなもの、持ち運ばないのであれば、画面サイズとペンタブの大きさがなるべく近い物の方が操作がしやすくなると補足した。

板タブで実演してみせる吉本氏

しかしながら、映像の3Dモデリングをする際には液タブを使うのだとか。映像の場合、イラストに近い書き込みや描写を多く行うので、高精細で色の再現性の高いものを使っているという。もし、これから3Dモデリングを始める人で映像系にも挑戦したい人には、解像度の高い液タブがオススメだと話した。

講座の後半では、実際に「ZBrushCoreMini」を使って3Dモデリングの実演も行われた。基本的な4種類のブラシの使い方や、覚えておくと便利なショートカットキーなどを開設しながら、夏らしく「クジラ」の3Dモデリングのデータを作成した。

「ZBrushCoreMini」での3Dモデリング実演

吉本氏は「パソコンをお持ちの方であれば、数千円の板タブさえ用意すれば、3Dモデリングは意外とすぐに始められます。3Dモデラ―が増えることはとっても嬉しいので、ぜひこの機会に始めてみてください」と呼びかけ、終了後にも観客からの質問に応じていた。