男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「誘われた時に『今月は忙しい』と言う心理は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:「飛行機代以外は俺が出すから、旅行しよう」そう口説いてきた48歳経営者の男に対して女は…




明宏と食事を終え、外に出る。お店の前のアスファルトからむわんとした空気が流れ、私を包み込む。

「絵里奈ちゃんまたご飯行こうよ。来週とかはどうかな?」

明宏に誘われ、私は笑顔で返す。

「いいですね。ただ今月は忙しくて…また予定が見えたら連絡しますね」

ここで帰ろうとしているのに、明宏は引き下がらない。大通りまで歩かされた挙げ句、別れを渋っている。

「この後どうしようか。本当に帰る?」
「はい。帰ります。ありがとうございました」

― この人、何なの!?

好きとか嫌いとかの問題ではない。久しぶりに“最悪の食事”だった。


A1:ただの仕事相手でしかない。


明宏に出会ったのは、知り合いが呼んでくれたホムパだった。

六本木にある素敵な広いお家で開催されたホムパはシェフが来ていて、私たちは会話や食事を楽しんでいた。

すると家主の方から明宏を紹介されたのだ。




「絵里奈ちゃん、こちら僕の経営者仲間の明宏さん。お世話になっている先輩で。ちなみに、明宏さんの会社は僕の会社とは比べものにならないくらい大きくて業績もかなりいいから、仲良くしていて損はないよ〜(笑)」

優しそうな雰囲気だけれど、背格好は普通で顔はどちらかというと微妙。でもお金は持っているらしい。

「初めまして、絵里奈です」
「初めまして。絵里奈ちゃんは、何をしている人なの?」
「私は外資の保険会社に勤めています」

保険会社の営業という仕事柄、どこで誰が顧客になってくれるかわからない。

「明宏さんは?」
「僕はざっくり言うと金融かな」
「じゃあ少し業界が近いのかな…?って感じですね」

誰に対しても…特に潜在的にクライアントになりそうな人には、丁寧に接しようと心がけていた。だから色々と質問をしていると、なぜか私の顔をじっと見つめてきた明宏。

「…どうされましたか?私の顔に何かついていますか?」
「いや、全然。綺麗だなと思って」
「え…」

一瞬言葉に詰まる。どう対応すれば良いのかわからないけれど、嫌なことを言われているわけではない。

「そんな嬉しいことを。ありがとうございます」

そしてなぜか私は気に入られたようで、明宏はその後もいろいろと話してくれ、真剣に聞き入っていると急に明宏が誘ってきてくれた。

「よければ、今度もう少しゆっくり話さない?」
「はい、お願いします!明宏さんのお話は面白いし勉強になるので、もっと色々とお伺いしたいです♡ただ、もしよければ私の友達も連れて行ってもいいですか?」

二人で行く理由はまったくない。

でも仕事のヒントになるかもしれないと思ったので、私は友人を誘って明宏と食事へ行くことにした。




「私の友人の茜です」
「初めまして。こちらは僕の友人の山田さんで…」

お互いの友人を連れてきたので、それぞれの自己紹介が進んでいく。しかし私はその際にふと目の前に座る明宏の年齢が気になった。

― この人、結構年齢いってそうだな…。

「そういえば、明宏さんっておいくつなんですか?」
「僕?何歳に見える?」
「えーっと…45歳くらいですか?」
「本当?僕は今年、48歳になるよ〜」

― もっと上に見えるな。

そう思いながらも、そんなことを言えるわけもないので適当にお世辞を言う。

「そうなんですか。見えないですね」
「絵里奈ちゃんは何歳だっけ?」
「私と茜は、今年で33歳になります」
「そうなんだ。いい年齢だね」

しかも結局、この日は仕事の話は一切せずに終わってしまった。

― 顧客になるかもと思って来たけれど…。今回はダメかな。

ただまた明宏から「話し足りなかったので、再来週あたりもう一度お食事いかがですか?」と誘われたので、もう一度会うことにした。

しかしこの決断を、私は心から後悔することになる。


A2:社交辞令で言っただけ。決して本心ではない。


明宏が予約してくれていたお店はすごく素敵だったけれど、着いた途端に私は「クライアントになるかも」と思って欲を出した自分を殴りたくなった。

「絵里奈ちゃん、今彼氏は?」
「今はいないんですよ〜」
「そうなんだ。どういう人がタイプなの?」
「優しくて、大人な人ですかね」

最初からぐいぐいと来る明宏。今日は仕事の話をしに来たはずなのに、そんな会話はひとつも出てこない。

「普段、お仕事以外は何をしているの?」
「仕事以外ですか?そうですね…ゴルフへ行ったり、こうやって美味しいご飯を食べたり」
「僕と一緒じゃん!今度、ゴルフに行こうよ」
「明宏さんもゴルフされるんですか?」
「うん。この前の食事のメンバーで行ってもいいしね」
「いいですね!」

― そこまで長時間一緒にいるのは辛いな…。

そう思っているのは私だけなのだろうか。




「ただ私、夏は暑いのでゴルフをしなくて…。涼しくなってからでもいいですか?」
「そっちタイプか〜。じゃあ9月とか?」
「そうですね」

適当に流そうと思っていると、明宏が急にこんなことを言い始めた。

「あ…。ごめん、8月は出張と旅行で日本にいないかも…今月はハワイで、再来月はヨーロッパにいるんだ」

― え…死ぬほどどうでもいいんだけど。

そんな先の予定なんて聞いていないうえに、海外に行くことをさりげなく自慢してくる。

でも明宏はどうやら勘違いモードに入っているようだ。

「絵里奈ちゃんとハワイに行けたら楽しいだろうなぁ。良ければ、来ちゃう?」

― 行くわけないじゃん!!

何をどうやったら、私が明宏との旅行をOKすると思えるのだろうか。しかもやんわりと否定しても、まったく気がつく様子はない明宏。

「明宏さん、お仕事で行かれるんですよね?」
「一応、ね。でも部屋もあるし飛行機代だけ自分で出してもらえれば、現地に行ってからは全部こっちで手配するから考えておいて」
「え〜、すごいですね」




宿泊費を出してもらったところで、興味のない人となんて旅行はしない。

そもそも二人でいることろを見られたら、変な誤解をされそうだ。

明宏と一緒にいる自分を考えると、恥ずかしくなってきた。

自分のことしか考えていない。人の話も聞いていない48歳の男性…。

― 私もバカだったな。これからはちゃんと人を見極めよう。

そう反省しながら、とにかく一刻も早くこの場を離れて、明宏と一緒にいるところを誰にも見られないようにと切に願った。

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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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女が告白に対してOKと言えなかったワケ