松屋やマクドナルドで平成メニューの復活キャンペーンが行なわれた(写真はいずれも公式ホームページより)

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松屋やマクドナルドで平成メニューの復活キャンペーンが行なわれた(写真はいずれも公式ホームページより)

飲食チェーンでの復活メニューが話題になっている今、食のプロが復活を熱望する平成時代の熱狂メシを聞いた! ファストフードからコンビニまで、あの懐かしのメニューがここにそろう!

【写真】復活してほしい“平成チェーンメシ”の数々

■あんなメシいいなこんなメシいいな

有名飲食チェーンが相次いで、平成時代のメニューを復活させるキャンペーンを行なって話題になっている。平成レトロなんて言葉も出てきた今、飲食のプロたちに「このメニューこそ復活してほしい!」という平成のチェーンメシを聞いた。「懐かしい!」や「こんなのあった?」などさまざまな思いを巡らせながら、タイムスリップしてほしい!

まずは、平成バーガー復活で話題となったマクドナルドの商品から。紹介してくれたのは、『全国飲食チェーン本店巡礼〜ルーツをめぐる旅〜』(大和書房)の著者で飲食チェーン店研究家のBUBBLE−B(バブル・ビー)氏。

「2013年に1日限定、1個1000円で販売という猛烈に攻めた『クォーターパウンダー ブラックダイヤモンド』が印象的。3弾構成で、第1弾が『クォーターパウンダー ゴールドリング』という名のパイナップルがサンドされたもので、第2弾がこの『ブラックダイヤモンド』。

上品な手提げ袋とアップル社製品のような白い箱に入って運ばれてきたバーガーはマッシュルームを中心に黒トリュフをミックスした具にフォン・ド・ボーソースというフレンチテイストを大胆に導入したもの。プレミアムな体験をもう一度味わいたいです。


マクドナルド「クォーターパウンダーブラックダイヤモンド」2013年


1日限定、1000円というプレミアスタイルで話題となった

ほかに復活を望む印象的なバーガーは『イカスミバーガー』。黒ゴマが練り込まれた黒いバンズに、黒いイカスミソース。ただ、見た目ほどクセはなく、独特の生臭さをほとんど感じずに食べることができたのは、さすがマクドナルドの技術」


マクドナルド「イカスミバーガー」2014年。黒いバンズにイカスミソース。ただそれほどクセはなく美味だった

ほかのファストフードチェーンでは、ロッテリアが平成に多くの名作を生み出したという。

「2009年、2014年に登場した『絶妙ハンバーガー』。とにかく味にこだわり、そのストレートなメニュー名にも自信がうかがえた。『おいしくなければ全額返金いたします』というシステムも話題になりました。

攻めたものでは、つけ麺の元祖と名高い『大勝軒』とのコラボを実現させた『つけ麺バーガー』も懐かしい。バンズの間に麺がサンドされていて、これを特製のつけ汁に浸して食べる。異次元のアイデアが平成末期には乱れ飛んでいましたね」


ロッテリア「つけ麺バーガー」2014年「大勝軒」とのコラボが実現


つけ汁にバーガーをつける斬新スタイル

本誌連載『激ウマ!! バカレシピ研究所』でおなじみ、B級フード研究家の野島慎一郎氏はロッテリアのこのメニューの復活を願う。

「1991年に発売された『ティラミスシェーキ』。青春時代にアホほど飲んでいた記憶があります。2017年に復刻していたので人気もあったのでしょう。新聞の折り込みチラシのクーポンを握りしめてよく買いに行ってました。食べ物を飲料にしちゃうむちゃな発想も平成ナイズされていてよかったですね」


ロッテリア「ティラミスシェーキ」1991年、2017年。食べ物を飲み物にするという画期的なアイデア。一度復活した

続いては、「チキン定食」などの平成レトロメニュー復活キャンペーンを行なって話題になった定食チェーン松屋の復活してほしいメニュー。紹介してくれたのは、サラリーマンの食事情に詳しい今柊二(こん・とうじ)氏。

「2003年夏に発売された『レバー焼定食』。スライスされた豚レバーとタマネギを醤油系のタレで炒めたもので、これに味噌汁と生野菜がついて490円。安い。レバーと野菜でヘルシーアンドパワーをチャージできる素晴らしい定食でした」


松屋「レバー焼定食」2003年。ガッツリスタミナ満点のレバーを甘辛タレで炒めた定食

BUBBLE−B氏は松屋のこのメニューを推す。

「松屋は麻婆(マーボー)豆腐研究に相当額を費やしているに違いないと思えるほど、その変遷がスゴイ。2012年の『マーボ豆腐定食』は松屋麻婆豆腐史では初期のもので、調理工程が簡略化されていることがすぐにわかってしまうようなチープさはあったが、このチープさを味わいたくなる。


松屋「マーボ豆腐定食」2012年。松屋の麻婆豆腐初期スタイル。この未成熟な味をもう一度食べたい

そして、画期的だったのが、2019年の『四川風麻婆鍋膳』。日本に到来したシビ辛ブームにより、痺(しび)れと辛さの大いなる底上げが行なわれました。本格的な刺激をぜひもう一度体感したいです」


松屋「四川風麻婆鍋膳」2019年1月。ナスも入って、シビ辛の本格スタイルに。病みつきになった

同じ牛丼・定食チェーンの吉野家で復活してほしいメニューを語ってくれたのは今氏。

「2015年に朝食として発売された『豆腐ぶっかけ飯』が懐かしい。具は豆腐と揚げ玉にかつお節と青ネギがのり、鯛だしがかかったヘルシーかつ潔いメニュー。これに味噌汁と玉子焼きがついて並盛で290円でした」

長崎ちゃんぽんの有名チェーン、リンガーハットにも復活熱望メニューが! BUBBLE−B氏が語る。

「ちゃんぽんは豚骨風味のスープでおなじみですが、2012年頃に販売されていた『つけちゃんぽん』は赤味噌らしきテイストが加えられ、ドロッと濃厚になっていました。リンガーハットであってリンガーハットでないような不思議な味でもう一度食してみたいです」


リンガーハット「つけちゃんぽん」2012年頃。ちゃんぽんをつけ麺スタイルでという独創的なメニュー

続いては、みんな大好き"カツ"の復活してほしいメニュー。カレーチェーンのCoCo壱番屋の逸品をBUBBLE−B氏が続けて紹介してくれた。

「2013年、長崎のテーマパーク、ハウステンボスとのコラボで生まれた『とろ〜りチーズのミートローフカツカレー』が印象的です。ミートローフとはミンチにした肉やタマネギをオーブンで焼いたもので、ヨーロッパの古い伝統料理。オランダをテーマにするハウステンボスならではの監修が光っていて、とても美味でした」


CoCo壱番屋「とろ〜りチーズのミートローフカツカレー」2013年。ハウステンボスとコラボ。ミートローフはヨーロッパの伝統料理

今氏は、イタリアンチェーンのサイゼリヤの懐かし"カツ"メニューを紹介。

「『牛挽肉のチーズカツレツ』に復活してほしいですね。カツの上にチーズとトマトソースがかかっていて、さらに醤油ベースの特製ソースも添えられていました。ノンフライらしく、確かにあっさりヘルシー。それでいて、カツを食べたという満足感が得られるのもよかったです」


サイゼリヤ「牛挽肉のチーズカツレツ」販売開始年不明〜2016年。揚げないメンチカツのような感じで、ヘルシーで重くなかった

次は、平成の居酒屋ブームを牽引(けんいん)した、和民のこんなメニュー。イチ押ししてくれたのは飲食トレンドリサーチャーの山口えりこ氏。

「和民1号店開店当初からの大人気メニュー『ポテトもち』の復活を心から希望します。100%店舗で手作りしていた逸品で、ふかしたジャガイモを丸い型で抜き、餅を包んで油で揚げ、甘辛ダレにとろけたバターが合わさることで完成する究極メニュー。

お酒とバッチリ合う!とか白米が進む!というわけではないのに、メニュー写真を見るとテーブルに置きたくなる最適な大きさとボリュームが魅力的でした。聞くところによると、売れすぎてしまい、手間がかかるためにお店で作る限界を迎えて終売となったそうです」


和民「ポテトもち」1992年〜2004年。一店一店お店で手作り。平成の居酒屋ブームを支えた逸品

■コンビニにもあるぞ!

コンビニでも復活してほしいメニューはたくさんある!というわけで、コンビニ研究家の田矢信二氏に話を聞いた。

「過去最高に感動したおにぎりは2014年にセブン−イレブンで発売された『金のおむすび』シリーズ。今はコンビニ高級おにぎりのほとんどがのりは直巻きですが、こちらは手巻きでパリパリ。米・のり・具材も最高品質。

ほかに復活してほしいおにぎりは、同じくセブン−イレブンの『おにぎった!親子丼』。具だくさんおにぎりのはしりで、卵、鶏肉、ダシのバランスが抜群。ぜひもう一度食べたい逸品です」


セブン‐イレブン「金のおむすび」シリーズ2014年。のりにこだわった、高級おむすびのはしり。具も大きくおいしかった


セブン‐イレブン「おにぎった!親子丼」2016年。ワンハンドメシの先駆け。卵、鶏肉、ご飯が絶妙にマッチ

ファミリーマートの懐かしメニューを語ってくれたのは野島氏。

「『冷凍焼肉ピラフ』です。1990年代後半、高校生の頃にこれもアホほど食べていました。レジ前に食品サンプルが置かれていて、レジで注文するとレンチンしてくれる。

甘辛いカルビのタレがうまいんですが、ちょっと偏りがあって、煮詰まっている部分があったり、肉がちょっと焦げている部分があったり、当時の冷凍食品らしいジャンクさが最高でした。これとカップ麺をセットにしても500円くらいだった気がします。今、この価格で満腹になれるメシは少ないですよね。懐かしい」


ファミリーマート「冷凍焼肉ピラフ」販売年不明。レジで注文して温めてもらうスタイル。当時は冷凍の弁当が画期的だった

そして、野島氏が「チェーンメシではないですが......」と前置きしつつ、ぜひ復活してほしいと訴えたいものがあるという。

「日清のカップうどん『ごんぶと』です。生タイプのカップうどんで、冷凍うどんなどコシ至上主義だった当時はそこまでおいしく感じず、どん兵衛でいいやとなっていましたが、年齢を重ねて柔らかいうどんのおいしさがわかるようになった今こそ食べてみたい。これは復活というか令和の技術を注ぎ込んでさらにおいしく作ってほしいですね」

以上が、食のプロが復活を願う平成チェーンメシ。皆さんも共感できるもの、ありましたか?

写真/時事通信社 イラスト/福田嗣朗