日焼け止め、本当に落ちている?

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 日差しが強くなってくると、紫外線や汗、クーラーによる乾燥など、肌への負担によるスキントラブルが悩みの種。さまざまなケア製品や美容法があふれている今、何をどう使うのが適切なのか。今さら聞けないスキンケアについて形成外科医・美容皮膚科医の柳下悠先生が解説してくれた。

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■“飲む日焼け止め”だけでは日差しは防げない「サポート役的存在であることを理解したうえで使用して」

 紫外線対策といえば、まず、誰もが真っ先に思いつくのが日焼け止めだろう。シミやそばかす、肌の老化から守ってくれる頼もしい味方として、近年は1年を通して使用している人も増えている。その一方で、「正しい落とし方がわからない」という声も。洗い残しがあると、肌への負担が増し、肌荒れを起こす原因にもなると聞くが、1日に何度も塗り直すこの季節、どうやって落とすのが正解なのか。

「製品によって落ちにくさは違いますが、特別、落とし方について記載のない日焼け止めは、残りがあってもある程度ターンオーバーで落ちますので、一般的なボディソープや洗顔料で洗うだけでいいでしょう。ウォータープルーフや石鹸では落ちないという記載のある商品、また、普通のボディソープや洗顔料で洗っても落ちきらず、毛穴につまってしまう場合は、メイク落としを使うといいでしょう」

 ちなみに洗顔料については、「季節や生活パターンによって変えるのがおススメ」だという。

「お肌の状態によりますが、洗顔料は肌の乾燥具合や皮脂の量、汚れ方によって変える必要があります。海や山へ行くとか、屋外でスポーツをしたときなどは、洗浄力の強いものを使用するのが理想的です」

 日焼け止め製品では、近年、飲むタイプの日焼け止めも人気を集めている。紫外線による肌のダメージを内側からケアするサプリメントで、美容皮膚科やクリニックで処方してもらえるほか、薬局やインターネットでも購入できることから、日焼け止めを塗り直すことが難しい小さい子どもを持つ親たちからの注目も高まっているが、さまざまな商品が揃う中、どれを選んだらいいのか。

「我々医療者が使用する飲む日焼け止めは、主にシダ由来成分のファーンブロック配合か、グレープフルーツとローズマリー由来の成分の合剤のニュートロックスサン配合です。私のクリニックでは、それぞれ成分の違うものを1社ずつ取り扱いしています。扱う製品はクリニックによって違いますので、受診したクリニックで説明を受けるといいでしょう」

 ただし、「飲む日焼け止めは、塗る日焼け止めの代わりにはならない」と断言する。

「飲む日焼け止めだけでは、紫外線による影響を回避することはできません。飲む日焼け止めは、あくまで紫外線によるダメージをできるだけ抑えることが目的の、サポート役的存在であることを理解したうえで使用していただきたいと思います」

■ビタミンC誘導体、レチノール…SNSで話題の成分にも落とし穴が

 日焼け対策として今も主流なのは、ビタミンCのサプリメント。ビタミンCにはシミやシワの要因となるメラニンの生成を抑える効果があることから、体の内側から紫外線対策できるとして知られている。そして近年、サプリメント以上に注目を集めているのが、“ビタミンC誘導体”だ。飲むのではなく、塗ることによって肌表面からビタミンCを取り入れることができるが、すでにできているシミまで薄める効果はないという。

「医療でビタミンCを塗るときは、シミを“なくす”ためではなく、日々の生活で紫外線にあたっても、できるだけシミやシワができにくいように、また、肌全体のトーンアップや皮脂や赤みのコントロールの目的で使います。シミを薄くするために使いたいという声を聞きますが、肝斑や雀卵斑であれば多少薄くなる可能性がありますが、効果はマイルドです。老人性色素斑であれば多少薄くなることはあっても、なくなることはありません。またADM(後天性真皮メラノサイトーシス)といった大人になってからできるアザには効果はありません。ただし、何かの色素沈着であればなくなる可能性もあります」

 ビタミンC誘導体は市販の化粧水や美容液にも用いられているが、同じように、スキンケアアイテムに使用されている成分として、最近、よく目にするのがレチノールだ。シワの改善に効果があるとして厚生省に認可された成分だが、「使用にあたっては注意が必要」と先生はアドバイスする。

「レチノールは効果のある良い成分ですが、多く使い過ぎると赤みがでたり、皮がむけたりしますし、異様にテカテカした質感になってしまうこともあるので、注意が必要です。私自身の考えでは、初めてレチノール化粧品をお使いの場合は、まず、美容皮膚科で診察を受けて、化粧品を選んでもらい、定期的に通院して、どのくらいの量が適切であるかをみてもらうといいでしょう。市販のレチノール化粧品はたくさんありますが、メーカーが違えば同じ1%と記載があっても強さは異なるためです。市販のレチノールで自分にとってちょうどいい強さを自分で知ることは難しいので、まずは医師の判断のもとで医療専売のレチノールを使用して、それと比較することで、自分にとってちょうどいい量を判断できるようになれば、市販品もうまく使えるのではないかと思います」

PROFILE/柳下悠

2005年東京医科大学を卒業。関東中央病院にて研修医として勤務をし、東京医科大学形成外科へ入局。様々な美容クリニックで経験を積み、2021年2月東京都赤坂にて赤坂ステラクリニックを開業。現在、DMMオンラインサロンにて「医師が教えるホントの美容塾」を運営中