米国の債務上限問題が大筋で基本合意に達し、下院を通過した。為替市場はやや落ち着いたものの、依然として1ドル=140円前後の高値圏で推移している。外為オンライン・アナリストの佐藤正和さんに6月相場の見通しを伺った。

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 米国の債務上限問題が大筋で基本合意に達し、下院を通過した。為替市場はやや落ち着いたものの、依然として1ドル=140円前後の高値圏で推移している。今後の議会審議でどんな展開になるのか……、いまだ不透明感も残っており予断を許さない状況ではある。そんな中で為替はどう動くのか……。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和さんに6月の為替相場の見通しを伺った。

――債務上限問題が今度は議会でくすぶっていますが……?

 債務上限問題をめぐる議会での法案採決に不透明感が出ています。共和党強硬派議員のグループは、デフォルト回避を目指したホワイトハウス当局と合意したマッカーシー下院議長に対して「報復」するとまで言及しています。共和党保守強硬派の下院議員連盟である「フリーダム・コーカス」のメンバーらも揃ってマッカーシー議長を非難しています。

 こうした状態で無事に法案が下院を通過したものの、上院も通過できるのか。いまだに不透明感が残っていると言わざるをえません。これまで米国債が債務不履行(デフォルト)に陥ったことはなく、万一デフォルトになれば世界経済全体に深刻なダメージを与えることになります。

 とは言え、期限と言われている6月5日までに議会で法案が通らなくても、即デフォルトと言うわけではなく、最初はパスポート発給といった政府機関の閉鎖や連邦職員の自宅待機等の回避策が段階的にとられてからのことになると思われます。最終的に法案は上院でも可決されると思いますが、最後まで予断を許しません。そういう意味では、まだ少し時間があると考えていいでしょう。

――ドルが強い傾向が目立ちますが、6月もこの傾向は続くのでしようか……?

 5月はあっという間に1ドル=140円台を突破するなど、ドル高円安が目立ちましたが、その背景には米国の金利高があります。6月13日−14日には「FOMC(米連邦公開市場委員会)」の開催が予定されていますが、いまのところ「0.25%」の利上げが予想されています。つまり、米国の金利はいまだに上昇を続ける可能性が高いということです。

 さらに、日本銀行の植田和男総裁は金融緩和政策継続発言以降も、市場が想定していたよりもハト派的な姿勢が目立ち、円安に拍車がかかっているという状況です。5月30日には財務省、金融庁、日銀が3者会合を開いて、急速に進む円安にどう対応するかが話し合われた、と報道されています。しかし、そのニュースで円高に揺れたのも一時的なものでした。以前のように、為替介入まで踏み込むかどうかは不透明ですが、私はその可能性は低いとみています。

 安易に為替介入を繰り返すと効果がなくなるだけではなく、「為替操作国」というレッテルを張られてしまうことは避けたいはずです。とはいえ、米国のインフレはまだ続いており、FOMCの金利引上げも6月で打ち止めになるかどうかは、今後の経済統計の行方を見る必要があります。最終段階に近づいてはいるものの、まだ利上げはあるかもしれない、ということです。

――金利上昇打ち止めのサインとは?

 とりあえず、定期的に発表される経済統計には常に注目する必要があります。たとえば、6月2日には米国の雇用統計が発表されますが、同統計のサプライズには要注意です。非農業部門の雇用者数では予想が19万5000人(4月は25万3000人)増、失業率の予想は3.5%(同3.4%)となっています。

 仮に、雇用者数が10万人を下回るような数字になれば、FOMCの金融政策にも影響をもたらしてきます。景気の悪化が顕著になれば、金利を上げて引締めをする理由がなくなりますが、逆に予想を大きく上回る雇用者数や求人件数が出てくれば、金利引き上げは7月以降も継続する可能性が出てきます。