プレイヤーが黒人奴隷を売買して富を蓄積して奴隷制の廃止を防ぐシミュレーションゲーム「Slavery Simulator」が、人種差別だという批判を受けてGoogleのアプリストア・Google Playから削除されました。約1カ月ほどアプリストア上で人種差別的なゲームが配信されていたことについて、ブラジルの議員が連邦検察庁にGoogleを告訴しました。

Google removes "Slavery Simulator" game from store following a wave of criticism in Brazil | CNN

https://edition.cnn.com/2023/05/25/americas/brazil-slavery-simulator-game-google-intl-latam/index.html



Google withdraws 'Slavery Simulator' game app after Brazil outcry

https://www.france24.com/en/live-news/20230526-google-withdraws-slavery-simulator-game-app-after-brazil-outcry

Brazil investigates 'Slavery Simulator' game pulled from Google Play - The Washington Post

https://www.washingtonpost.com/nation/2023/05/26/slavery-simulator-game-brazil-google/

2023年4月20日にGoogle Playで配信が開始されたシミュレーションゲーム「Slavery Simulator」は、プレイヤーが「裕福な奴隷所有者」になるか「奴隷制を廃止させる解放者」になるかを選択し、いずれかのルートをシミュレーションするというもの。

奴隷所有者を選択した場合、黒人奴隷における主要な中継地点であった17世紀の南米を舞台として、プレイヤーは黒人奴隷を売買しつつ奴隷制の廃止を阻止する活動を行い、富を蓄積していくそうです。ゲーム内ではプレイヤーが得られる利益に応じて、奴隷に「Slave level(奴隷レベル)」というランクが付けられており、奴隷の管理に警備員を雇う必要があったとのこと。

ポルトガル語で配信された「Slavery Simulator」は1000回以上ダウンロードされていましたが、ブラジルのソーシャルメディア上で「人種差別的だ」という批判の声が高まり、5月24日にGoogle Playから削除されました。



ゲームのレビューは削除された時点で5段階中の「星4」であり、プレイヤーからゲームに寄せられたレビューには人種差別的なものが多く含まれていました。あるプレイヤーは「実生活でやりたいことをうまく再現しています」とコメントしたほか、「もっと多くの拷問オプションがあった方がいい」というコメントもあったとのこと。

ブラジルでは1888年に奴隷制が廃止されましたが、記事作成時点では人口の56%以上がアフリカ系であり、いまだに人種差別問題は根強く残り続けています。5月には、レアル・マドリードに所属するサッカーブラジル代表のビニシウス・ジュニオール氏が敵チームのサポーターから人種差別的な言葉や歌を浴びせられたとして、ブラジル政府がスペイン政府とスポーツ当局に抗議する国際問題に発展しました。

ブラジル連邦議員のOrlando Silva de Jesus Junior氏は、議会で「Slavery Simulator」の問題を取り上げて「人種差別が犯罪である国、奴隷制度の傷跡を生き延びてきた国で、デジタルプラットフォームがこのようなぞっとするほど野蛮なゲームを作るというのは信じられません。最も多くゲームをプレイするのは10代の若者で、このような事態は受け入れがたいことです」と述べました。

そしてSilva de Jesus Junior氏は人権擁護団体のUnegroなどと協力し、ブラジルの連邦検察庁にGoogleを告訴しました。告訴状の中では、Googleが「人種・肌の色・民族・宗教・国籍による差別や偏見を実践・誘発・扇動すること」を禁止するブラジルの法律に違反していると主張されており、Silva de Jesus Junior氏は可能であれば責任者の逮捕を追求すると述べています。



また、Silva de Jesus Junior氏以外の複数の議員も独自の告訴状を提出しているほか、検察庁も5月24日に調査を開始すると発表しました。検察庁はGoogleに対し、「すべての文書の完全なコピーと開発者による承認要求の内部管理手順」を含むゲームに関する情報を提出するよう求めているとのこと。

Googleの広報担当者は海外メディアのワシントン・ポストに対し、「Googleはユーザーの安全を守ることを目的として、すべての開発者が従わなくてはならない強固なポリシーを定めています。人種や民族に基づく個人およびグループに対する暴力を助長したり、憎悪をあおったりするアプリや、暴力その他の危険な行為を描写または助長するアプリは許可しません」と述べ、ユーザーはポリシー違反のアプリを見つけたら通報することができると説明しました。