20年前に流行したあの携帯電話も! “デザインとアートの境界”に迫る展覧会

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日常にすっかり馴染んだデザインとアートという言葉。でも、そもそもその違いとは何で、その境界って一体どこにあるのか? そんな素朴な疑問の答えを探すべく、約100点に及ぶ戦後日本の多彩な作品を時系列で追いながら、デザインとアートの重なりについて発見してゆくのが「開館1周年記念展 デザインに恋したアートアートに嫉妬したデザイン」だ。

デザインとアート、2つの“境界と重なり”について注目した展覧会。

開館1周年を迎えた大阪中之島美術館の活動の両輪であるアートとデザイン。今回はこの2つを併せて紹介する同館初の展覧会となった。

会場には1950年代から2010年代まで、総勢70名を超えるアーティストの作品が登場。イサム・ノグチをはじめ村上隆や佐藤可士和、柳宗理、三宅一生、草間彌生、奈良美智などジャンルを問わず、いずれも日本を代表する作家の名作ぞろい。

注目は話題の“デザインとアートの境界”についてわかりやすく紹介している点。例えば、デザインが話題となった携帯電話や家具を、様々なジャンルのアート作品と一緒に展示。それらを同じ空間で鑑賞した時、個々で見ていた時とは異なる印象を抱くかもしれない。その心の動きを来場者に体験してもらい、「これはデザイン?」「こっちはアート?」という問いの答えを自分なりに導くことができる仕掛けになっている。

戦後と比べると今やその領域を大きく広げているデザイン、また従来の美術からの枠組みを超えてきた現代のアート。歴史に残る作品を用いて、デザインとアートの関係を改めて考えさせる本展は、鑑賞だけにとどまらず、美術界全体の新時代についても考える契機になりそうだ。

森村泰昌《肖像(ファン・ゴッホ)》 1985年 大阪中之島美術館蔵 ©Yasumasa Morimuraゴッホに扮する「セルフポートレート」は美術家・森村泰昌の代表作のひとつ。

村上隆《Red Rope》 2001年 高松市美術館蔵 ©2001 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.アニメやフィギュアなど日本のオタク文化に近接したアートで有名な村上隆の初期作。

ヤノベケンジ《アトムカー(黒)》 1998年 国立国際美術館蔵 ©Copyright KENJI YANOBEチェルノブイリ原発事故をきっかけに発案されたガイガーカウンターを搭載した車・アトムカー。今も現役で動く。

深澤直人《INFOBAR》 2003年 KDDI株式会社蔵 ©KDDI CORPORATION20年前に流行したこの携帯電話はMoMAに所蔵されるなど世界で評価された。

奈良美智《どんまいQちゃん》 1993年 和歌山県立近代美術館蔵 ©Yoshitomo Nara「受験に落ちたQちゃんを元気づけるために作った」という奈良美智の立体作品。

「開館1周年記念展 デザインに恋したアートアートに嫉妬したデザイン」 大阪中之島美術館 4階展示室 大阪府大阪市北区中之島4‐3‐1 開催中〜6月18日(日)10時〜17時(入場は閉館の30分前まで) 月曜(5/1は開館)休 一般1600円ほか TEL:06・4301・7285(大阪市総合コールセンター)

※『anan』2023年4月26日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)