「菊池病」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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菊池病とは、首のリンパ節の腫れが起こるリンパ節炎です。

あまり馴染みのない病気ということもあり、リンパ節の腫れと聞くと悪性のリンパ腫などを思い浮かべる方もいるでしょう。

しかし、この病気は良性のリンパ節炎であり治すことも不可能ではありません。ご自分がかかった時に備えるためにも、正確な病気の情報を把握しておくことが大変重要です。

そこで本記事では、菊池病の症状とはどのようなものかを解説します。原因・受診する科・治療方法・完治するのか・再発するのかも詳しく解説するので、参考にしてください。

菊池病とは

菊池病はどのような病気ですか?

菊池病とは、希少な良性リンパ節炎の一種です。組織球性壊死性リンパ節炎とも呼ばれており、東洋人に多い病気です。
主に20~30代の女性に多くみられ、治療の有無に関係なく2~3カ月程度で自然治癒するケースが多いですが、稀に再発する点が特徴に挙げられます。

症状を教えてください。

この病気の主な症状としては、次のようなものが挙げられます。

リンパ節の腫れや痛み

発熱

食欲不振

嘔吐

体重減少

発疹

症状の1つがリンパ節の腫れや痛みです。ほとんどのケースで、頸部のリンパ節が腫れて痛みが伴います。片側だけが腫れる場合が多いです。
また、発熱も主な症状に挙げられます。個人差もありますが、38度以上の高熱が数週間以上続くこともあるため身体への負担が大きいです。
さらに、食欲不振嘔吐などの症状が現れる場合もあります。食欲がなくなり吐き気などが伴うため、さらに食べ物の摂取が困難になってしまうのです。
その結果、体重減少を発症するケースもあります。発疹も主な症状の1つです。非常に稀ではありますが、腫れたリンパ節が気管支などを圧迫することで呼吸がしづらいなどの症状を引き起こすケースもあります。

原因を教えてください。

菊池病の原因は、まだはっきりと分かってはいません。しかし、いくつかのウイルス感染症や免疫の異常によって引き起こされていると考えられています。
代表的なウイルスとしては、以下のものが挙げられます。

EBV

HIV

HTLV-1

EBVとは、エプスタインバールウイルスのことで、ほとんどの方が一生の間に感染するといわれているウイルスです。HIVはヒト免疫不全ウイルスのことで、免疫細胞に感染してエイズなどを引き起こします。HTLV-1とはヒトT細胞白血病ウイルスであり、白血球の1つであるT細胞に感染するウイルスです。
いずれのウイルスも免疫を司る細胞に感染する点や、感染後に細胞の腫れとリンパ節の腫れを引き起こす点が共通しています。
また、免疫異常が原因の場合は、免疫機能が正常に働かないことによって体内の炎症が抑えられないためにリンパ節が腫れるメカニズムです。しかし、これらの原因はあくまでも過去の症例に基づいて考えられているものであり厳密には明確になっていません。

菊池病の治療

何科を受診すれば良いでしょうか?

菊池病を患った場合には症状によっても異なりますが、形成外科・耳鼻咽喉科・血液内科・呼吸器科などが挙げられます。また、大きな総合病院であれば、複数の診療科目が連携して治療にあたってくれるケースもあります。
しかし、治療に専門的な知識や経験が必要なため、すぐに専門医が見つからないかもしれません。その場合は、まずはかかりつけ医に相談して、専門医へ紹介してもらうとスムーズに見つけられるでしょう。

どのような検査を行いますか?

この病気の検査は、次のような方法が挙げられます。

血液検査

超音波検査

生検

1つ目の検査方法が血液検査です。血液検査では、白血球の減少量・LDHの上昇量・異形リンパ球を確認します。
LDHとはブドウ糖をエネルギーに変化させる時に使われる酵素のことで、異形リンパ球とは病原体に反応する物質です。これらの変化を確認して良性リンパ腫であるかを確認します。
また、超音波検査も良性リンパ腫かどうかを見分けるために行います。しかし、血液検査と超音波検査の療法を行っても悪性リンパ腫といいきれない場合には、生検の実施が必要です。
生検では、リンパ腫の一部を採取して検査を行い、良性か悪性化を確定させます。

治療方法を教えてください。

菊池病は、ほとんどの場合自然に治癒します。しかし、症状が重い場合や再発などの際には、以下のような対症療法が必要です。

ステロイド薬による治療

免疫抑制剤による治療

この病気は、ステロイド薬による治療が一般的です。そのため、軽度な症状であってもステロイド薬を使った治療を積極的に使う場合があります。薬の効果には炎症を抑える効果があり、腫れの軽減効果が期待できます。ステロイド薬の使用量については、患者様の症状の度合いなど状況に合わせて調整するため、医師と相談しながら治療を進めましょう。
その他の治療方法としては、免疫抑制剤による治療が挙げられます。この薬は、ステロイド薬だけでは効果が見られない場合やステロイド薬の副作用が強すぎる場合などに使用します。
ほとんどのケースで薬が効かないということはないため、手術が検討されることは非常に少ないです。

ステロイドが効果があると聞きましたが…。

この病気には、ステロイド薬が効果があります。過去の症例でも、ほとんどのケースでステロイド薬が使われて症状が改善されてきました。ステロイドの一種であるグルココルチコイドなどは特に治療に良く反応し回復を早めた実績があります。
一方ステロイドには副作用もあるため注意が必要です。例えば、高血圧・糖尿病・脳卒中のリスクを高めてしまうなどの副作用が挙げられます。
またステロイド薬にはリンパ球の数や形態を変化させる効果があり、悪性リンパ腫や他の疾患との鑑別を困難にしてしまうケースがあります。そのため、ステロイドを使用するタイミングにも注意が必要です。
患者様の状態に合わせて適切な量を使用すれば高い効果が期待できますが、副作用や使用上の注意点などもあるため、きちんとリスクを把握した上で使用しましょう。ステロイド薬を使用する際は、医師と相談しながら正確な情報を理解した上で進めるのが非常に大切です。

菊池病の予後

菊池病は完治するのでしょうか?

菊池病の完治は不可能ではありません。この病気は無治療でも自然に治ることが多く、1カ月~1年程度で改善するといわれています。
しかし、発熱や痛みが伴うケースが多いため、その症状を緩和するために対症療法を行います。ただし、ごく稀に重症化しているケースがあり、その場合は無治療では治らない可能性もあります。完治しない場合は、症状を管理するために薬を使って悪化を止めたり手術によって進行を防いだりする治療が進められるでしょう。
どのような治療方法が行われるかは、症状や病気の進行度合いに応じて医師によって決められるため、症状などを詳しく相談しながら対応を進めましょう。

菊池病はうつる病気でしょうか?

この病気はうつる病気ではないと考えられています。現在、人から人への感染は確認されていません。しかし、遺伝的な要素はあると考えられています。

菊池病は再発しますか?

この病気は、稀ですが再発する可能性があります。改善した方の5%程度の割合で、治療を終えて数カ月~数年後に再発した症例が報告されています。
そのため、症状が一時的に改善した後でも、定期的な検診を受けて経過観察しましょう。再発後の治療方法は、症状の度合いなどによっても異なるため医師の指示を仰ぎましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

この病気は、東洋人に多く若い年代の女性がかかりやすい病気です。自然に治る病気ではありますが、症状が長く続く場合があるため早めに治療を受けましょう。
また、決して完治が難しい病気ではありませんが、稀に再発する場合もあります。それぞれのケースや症状に合わせて適切な対症療法があるので、医師と連携を取りながら治療を進めましょう。

編集部まとめ


菊池病は稀な病気であり、いまだ原因も詳しく分かっていない病気です。過去の症例はありますが、根本的な治療方法も分かっていません。

しかし、効果が期待できるステロイド薬による治療などはわかっているため、医師の指示に従って治療を行えばほとんどの場合治ります。

正しい治療を進めて完治させるためにも、病気についての正確な情報を把握しましょう。また、万が一症状が現れた場合にはすぐに専門の医療機関を受診しましょう。

参考文献

菊池病の2例

菊池病69例の臨床的検討