ロッテ戦に先発した西武・平良海馬【写真:宮脇広久】

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“本塁打厳禁”を自分に課すも2試合連続で被弾

■西武 8ー3 ロッテ(11日・ベルーナドーム)

 今季から先発に転向している西武・平良海馬投手は11日、本拠地・ベルーナドームで行われたロッテ戦で6回1安打8奪三振2失点に抑え、初勝利を挙げた。絶対的セットアッパーの転身は、順調に成功へ向かっているのだろうか。

 思い描いた通りにはいかなかった。前回登板が初先発の2日オリックス戦で、7回5安打1失点に抑えたものの勝敗は付かず。この日は日程の関係で長めの中8日を空け、初めて先発ローテ投手としてのコンディション調整を経て登板した。立ち上がりから制球に苦しみ、初回1死から藤岡裕大内野手に四球、続く中村奨吾内野手に左翼席へ先制2ランを許した。

「狙ったコースに投げられなかった。高めを狙ったストレートが指に引っかかり、結果的に低めのいいコースに決まった球もあって、違和感がずっとありました。ホームランは、高めを狙ったストレートが真ん中に入ってしまい、中村選手に逃さず打たれました」と振り返り、「(先発投手としての)コンディション調整は難しい。いろいろ試しながらやっていきたい」と吐露した。

 4回からはリズムを取り戻し、2イニング連続で3者凡退。結局6イニングで104球を投げて、許したヒットは中村の2ラン1本。松井稼頭央監督は「先発投手には調子のいい時も、今日のようにそうでない時もあるが、その中で2失点に抑え、チームを勝ちに導く投球をしてくれた」と称えた。

 それでも本人に満足感はない。特に、前回登板でオリックスの新外国人マーウィン・ゴンザレス内野手にソロ、今回も中村に2ランを浴びた点が納得いかない。昨年まで一発長打が勝敗を左右する場面で投げてきただけに、“本塁打厳禁”を自分に強く課している。「打ち取り方も大事で、外野フライは打球の方向が違えばホームランになる可能性がある。三振か、ゴロを打たせる投球をしていきたい」と語る。

球団側の反対押し切り転向した理由「チームに貢献できていることに…」

 配球では、ストレートの割合を減らした。この日は104球中、ストレートは約30.8%の32球に過ぎず、以下カットボールが22球、スライダーが19球、スプリットが13球、昨年まで試合で使っていなかったカーブも11球、新球のツーシームも7球駆使した。

「常に全部投げる(完投する)つもりでいきたい。そのために、球数をなるべく節約したい。ツーシームやカットボールで、早いカウントで打たせることが大事になると思います」と意図を明かす。驚くべきことに、最速160キロを誇る剛速球を、本人は自分の持ち味だと思っていない。「相手に“速い”という意識づけをすることはできると思いますが、ほとんどファウルにしかなっていないので、投げても球数がかさむだけ。あまり投げる意味がないかな、と思っています」と言うほど。“速すぎる変化球投手”として、特異なスタイルに磨きをかけていくことになりそうである。

 昨季オフ、球団側の反対を押し切る形で先発に転向。本人には「新しい可能性を探したいですし、シーズンが終わった時、長いイニングを投げて失点が少なければ、中継ぎの時よりもチームに貢献できていることになる。それが“チームを勝たせる投手”だと思います」という考えがある。

 年間の投球回数を増やし、失点は低いままに抑えたい。昨年は61試合(57回2/3)に登板し、15失点(自責点10)で防御率1.56。キャリアハイの一昨年は62試合(60回)で6失点(自責点6)、防御率0.90。今年は規定投球回(143回)以上が目安になりそうだ。仮に規定投球回をクリアして防御率1点台なら、最優秀防御率のタイトルも視野に入る。セットアッパーとして突出した存在だっただけに、そのあたりが先発転向の成否を分けるボーダーラインとなるのではないだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)