「視神経炎」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
視神経炎とは、名前の通り視神経に炎症が起こることで、視覚や視力の低下がみられる病気です。
これといった原因が見当たらず突発的に発症することが多いため、症状に不安をおぼえる方も少なくないでしょう。
この記事では視神経炎の主な症状や原因と考えられているもの、治療方法・入院期間について詳しく解説していきます。
治療後の後遺症についても触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
視神経炎の症状と原因
視神経炎はどのような病気でしょうか?
視神経は眼球を覆うようにある網膜に集まった光の情報を脳へ送り込む神経を指します。視神経炎とは、視神経になんらかの原因で炎症・障害を起こす病気です。視神経炎は主に下記の2つに分かれます。視神経系乳頭炎
球後視神経炎
視神経系乳頭炎は眼底検査ですぐに見つけることができます。
反対に、眼球の裏側で炎症が起こる球後視神経炎は初見では分からないこともあるため視力検査だけでなく、CTやMRI検査が用いられるケースもあります。視神経炎が繰り返される場合は、多発性硬化症という難病である可能性も否定できません。
症状を教えてください。
視神経炎の主な症状は、視力の低下・視野が欠ける(狭くなる)・視界にモヤがかかったように白く霞んで見えるなどです。テレビの文字や人の顔など、これまで見えていたものが急に見えにくくなるなど、比較的わかりやすい症状が現れます。そのため、症状が似ている眼精疲労と間違えられることも多いです。十分な休息や睡眠をとっても改善がみられない場合には、視神経炎が考えられるでしょう。他にも赤や緑が霞んで見えるようになる色覚異常や、目の奥に傷みを生じるケースもあります。このような症状が突然現れた際は、自己判断をせずに一度眼科を受診するようにしましょう。
初期症状を教えてください。
視神経炎の主な症状について前述しましたが、視力の低下や視界の霞みが自覚できる初期症状といえます。普段と見え方が異なる・視界にモヤがかかっている感じが治まらないなど違和感をおぼえた際は、ただの疲れと軽視せずに視神経炎を疑いましょう。
発症の原因は何でしょうか?
現時点では「これが原因です」と言い切れるものはありません…。自己免疫性の病気とされる多発性硬化症や視神経脊髄炎といった難病が原因で引き起こされることもあれば、免疫システムの異常で元々体の中に存在している抗体が自身の視神経を攻撃して炎症を起こすケースも考えられています。他にも、感染症・副鼻腔炎・薬物・外傷などが原因とされることもありますが、原因不明の突発性であることがほとんどです。
視神経炎の治療
どのような検査で診断されますか?
視神経炎の診断には下記の検査が行われます。視野検査
蛍光眼底造影(眼底検査)
血液検査
CT・MRIなどの画像検査
視野検査は、視野が欠けたり狭くなったりしていないか、ものが霞みがかって見えていないかなどの検査を行います。眼底検査では、視神経に腫れがないかの確認や色に異常がないかの確認が可能です。
血液検査では、視神経炎を引き起こす原因となる細菌などに感染していないかを調べます。
CTやMRIといった画像検査は炎症の症状が著しく激しい痛みを生じる場合など、別の病気が疑われる場合に用いられます。適切な治療を行うためには正確な診断が必要になるため、さまざまな検査が行われるのです。
治療方法を教えてください。
主な治療方法はステロイドパルス療法です。大量のステロイドを点滴投与することで炎症を鎮める効果を期待できます。1クール(3日間点滴・4日間休薬)を1~3回行うことで、視力回復が期待できるとされています。治療後1~2ヵ月程度で、罹患以前と同等の回復が見込めるケースがほとんどです。ただし、小児や症状が軽度の場合には自然寛解を目指すことも多く、必ずしもステロイド治療が有効であるとは限りません。また、抗体など炎症を引き起こす疑いのある物質を取り除く血漿浄化療法や免疫システムの異常の正常化をはかる免疫グロブリン療法など、症状や想定できる原因によっては異なる治療方法が用いられることもあります。
入院期間について教えてください。
入院期間は治療方法や程度にもよりますが、1週間程度であることがほとんどです。ただし副作用がある場合には早めの対処が必要となるため、この限りではないことをおぼえておきましょう。視神経炎の後遺症
後遺症はありますか?
炎症の程度にもよりますが、予後は比較的良好とされています。ただし、治療に用いられるステロイドによって副作用が引き起こされることもあります。考えられる副作用は下記の通りです。白内障・緑内障・網膜の障害
にきびや湿疹など皮膚の炎症
高血圧
体重増加や高血糖など内分泌代謝の異常
骨粗しょう症
不眠・精神失調
ステロイドは他のお薬との併用にも注意が必要です。効果が弱かったり副作用が強く現れたりする原因にもなるため、併用薬がある場合は必ずお薬手帳を提示するようにしましょう。また、免疫機能が低下するケースもあるため感染症にかかりやすくなるともいわれています。
治療中にウイルス性の感染症にかかってしまうと最悪の場合、死につながることもあるため注意が必要です。ほとんど報告例のないケースではありますが、ステロイドによる治療を受ける際は手洗い・うがい・マスクの着用など、基本的な注意が欠かせません。
失明することはあるのでしょうか?
失明することはほとんどないといえるでしょう。視神経炎は原因不明の突発性であるケースがほとんどです。軽症のことも多く自然寛解が見込まれるなど、予後も良好といえます。炎症が再発するケースもあるため引き続き注意は必要になりますが、失明につながることはほとんどないでしょう。ただし、別の病気が原因で視神経炎が引き起こされている場合はこの限りではありません。レーベル遺伝視神経症という難病の症状として、視力低下や視野欠損といった視神経の炎症が報告されています。この病気が原因の視神経炎だった場合、非常に稀ですが失明につながることもあります。
レーベル遺伝視神経症は、名前の通り遺伝性の病気です。女性からの遺伝であり、男性から受け継ぐことはまずありません。女性親族にこの病気の方がいる場合にはその旨を眼科医師に伝え、さまざまなケースを想定して診てもらいましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
視神経炎は視力低下・視野の欠損・視界が白くモヤがかかったようになるなど、眼精疲労と症状が似ていることが多く軽視されやすい病気です。休息・睡眠を十分にとっても治らない場合は視神経炎が疑われます。軽度であれば自然寛解ができ、治療方法も確立されており比較的予後は良好です。しかし、発見が遅れた場合は治療が長引いたり再発しやすくなったりすることもあります。日常生活に支障をきたすことになりかねないため、大切な視力を守るためにも早期発見は非常に重要です。
失明につながることはほとんどありませんが、著しい視力低下がみられる場合や親族に遺伝性の視神経炎を患っている方がいる場合は、その旨を医師に必ず伝えるようにしてください。
編集部まとめ
視神経炎は視神経(網膜に取り込んだ情報を脳に送り込む神経)になんらかの原因で炎症が起こる病気です。
軽度であることが多く自然治癒も望めますが、ステロイドによる治療を行った際の副作用や症状の悪化が著しい場合には注意してください。
どの病気にも共通して言えることですが、視神経炎も早期発見・早期対応が大切です。
見え方に違和感がある・色が霞む・視界が狭くなるなどの症状が現れた際は、自己判断せずに早めに眼科を受診しましょう。
参考文献
視神経炎(日本小児眼科学会)
レーベル遺伝性視神経症(難病情報センター)