<博多刺殺事件>元交際相手を数十か所刺した寺内進容疑者。「仲間の万引きをたしなめるほどマジメ」だった男を凶暴化させた「2つのトリガー」と「1杯1万円ぼったくりバー」営業の過去

1月16日、福岡市のJR博多駅近くの路上で38歳の女性が刃物で刺されて死亡した事件で、警察は元交際相手だった寺内進容疑者を殺人の疑いで逮捕した。交際相手をめった刺しにするような凶暴性を発揮する一方で、「正義感があってマジメ」との声も聞かれる寺内容疑者だが、はたしてどちらが本性なのか?

「面白くていいヤツだと思っていただけにびっくり」

福岡市在住の川野美樹さん(38)がJR博多駅付近の路上で元交際相手だった寺内進容疑者(31)に突然、刃物で刺され死亡したのは1月16日午後6時過ぎのこと。

「刺し傷は上半身を中心に数十か所。遺体には刃物で何度も刺されたためか、骨折の跡も確認されたほど。寺内容疑者の強い殺意が感じられます」(全国紙社会部記者)

事件からは寺内容疑者の凶暴性が見てとれる。だが、一方で博多の夜の街では、飲食店の客からこんな声もあがっていたという。

「ふだんは明るくて、関西出身者らしく関西ノリで場を盛り上げるような人でした」

「バーテンダーをしていた時に知り合ったんだけど、面白くていいヤツだなと思っていただけに、犯行を知ったときはびっくりしました」

寺内進容疑者

寺内容疑者の中学時代の同級生もこう絶句する。

「けっこうまじめ。仲間が万引きをすると、『やめとけ』とたしなめるような少年でした。進があんな事件を起こしたなんて、今でも信じられません」

交際相手をめった刺しにするような凶暴性を発揮する一方で、同級生に万引きをやめろと忠告する正義感も併せ持つ――。

いったい、どちらが寺内容疑者の本性なのか? 取材を進めるうちに、寺内容疑者の暴力性を引き出すいくつかのキーワードが見えてきた。

ひとつはアルコールだ。博多の飲食店の客からはこんな声が上がっていた。

「超イケメン。1回だけ話したことがあるんですけど、その時はふつうに優しそうな感じでした」

「働きぶりはまじめ。事件前日の15日も朝までいつも通りに勤務していました」

こうした証言の寺内容疑者はごくごくふつうの人物に思えるが、アルコールを飲むと一変、にわかに狂暴性を帯びたという。

アルコールが入ると急に強気に

「寺内は、酒が入ると客とのトラブルが多々ありました、二面性というか、お酒を飲むと変わってしまうんです。ふだんは目上の人にペコペコするのに、アルコールが入ると急に強気になる。そしてアルコール中毒なのではと思ってしまうほど飲み続けて、ほとんどしらふの時を見たことがない。しかも、悪酔いすると暴力的な言葉づかいになって、関西弁で『おら~!』と周囲に凄むこともしばしばでした」(寺内容疑者の知人男性)

「酒が入ると急に強気になる」と言われていた寺内容疑者

寺内容疑者は2019年頃から大阪府内でいかついと評判の知人と飲食店を営んでいたが、その営業ぶりはアルコールの勢いもあってか、とんでもないものだったという。当時を知る大阪府内の飲食店員がこう証言する。

「寺内の店に遊びに行ったのですが、1杯、2杯しか飲んでないのに会計が1万円。高いと文句を言うと逆ギレされ、請求額を5万円に上乗せされる始末。あの人とはもう2度と関わりたくありません。店はコロナが流行る少し前、わずか1か月で潰れました」

もうひとつ、寺内容疑者の凶暴性を引き出すトリガーとなっていた可能性があるのが、異様なまでの女性への束縛癖だ。刺殺された川野さんに対してもスマホに位置情報アプリをインストールすることを強制し、常にその所在を監視・把握していたという。

「女性関係となると、とにかく周りが見えなくなると多くの仲間が証言しています。ふだんは明るくていい人なのに、メールで交際相手に暴言を吐いたり、家の前などで待ち伏せしたりとか。ふつうでは考えられないくらいの束縛ぶりで、そんな異常な行動を繰り返してしまうことに自分でもかなり悩んでいる様子だったようです」(前出・社会部記者)

川野さんからの相談を受け、警察は昨年11月26日、寺内容疑者にストーカー規制法に基づいて接近を禁じる「禁止命令」を出していた。川野さんを束縛したくてもできない渇望感が犯行の呼び水となったのか?

「ほんま俺はクズやわ。ほんまにがんばろう!」

寺内容疑者がかつて住んでいた大阪府内の自宅

寺内容疑者を知る前出の同級生がこう語る。

「思いつめたあげく、勝手に自分を追いつめて犯行に及んだという感じでしょうか。『オレはこんなにも尽くしてあげたのに』と逆恨みして……」

過去に寺内容疑者はSNSでこう発信している。

「自分変えるために東京に来たのに。変えないとアカンな! ほんま俺はクズやわ。ほんまにがんばろう!」(2013年3月16日)

出身の大阪では「一番ケンカが強かった。高校時代地元の番長的な存在だった」とも報じられている寺内容疑者。

2013年のSNSでの決意表明のように、「クズな自分」をがんばって克服していれば、10年後の凶行は起こらなかったかもしれない。

犯行現場にはたくさんの献花が

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班