高速道路の保全管理について担い手不足を解消するため、さまざまな技術が開発されています。実証試験中の技術の一部が、NEXCO中日本の管理施設で公開されました。

各事務所での実証実験の「代表」揃う

 人口減少で土木技術の担い手確保が難しくなっている中、NEXCO中日本はデジタル技術を駆使して道路管理を効率化する「i-MOVEMENT」の取り組みを進めています。管内24か所の事務所でそれぞれテーマを持って、技術検証が進められているところ。その実証試験中の技術の一部が、2022年10月27日に神奈川県伊勢原市の伊勢原保全・サービスセンターで公開されました。


新型路面清掃車(乗りものニュース編集部撮影)。

●路面性状測定車「ロードタイガー」

 舗装の凹凸やひび割れを、最高速度100km/hで走りながら測定することができる車です。前方に取り付けたレーザーとラインセンサーにより高速で測定。後方のカメラも高速運転中の高画質撮影が可能で、アスファルトの骨材もはっきり映るほどの精細度で、ひび割れを検知します。

 ロードタイガー導入までは、点検のたびに交通規制をして、人力で点検を行っていたといいます。

●橋梁伸縮装置点検車「ROAD CAT」
 
 高架の橋げたと橋げたのつなぎ目には、一般的に“噛み合わせ”のような構造の「橋梁伸縮装置」があります。猛暑時に桁が伸びた場合などに備え、噛み合わせ部にはある程度の隙間が設けられていますが、その隙間が大きすぎても、垂直方向のズレが生じても、自動車の走行には支障となります。これを点検するのが「ROAD CAT」です。

 この車にはレーザー変位計と小型マイクロフォンが搭載され、通過時の異常な揺れと異常な音から、橋梁伸縮装置の変異を検知します。人間の耳には同じ「ゴツン」といった音でも、波形を解析するとその音が橋梁伸縮装置の変異によるものなのか、解析できるといいます。

 こちらも最高速度80km/hで点検できるため、交通規制は必要ありません。

●新型路面清掃車

 路上のゴミを発見次第、人が車から降りて拾っていましたが、危険防止や労力削減のため導入されたのが、この車です。

 キャビンの上からゾウの鼻のように伸びる大きなノズルが設置されており、真空吸引によりゴミを回収します。ペットボトルも、700ml程度の中身があっても吸引可能とのこと。

 ノズルは運転席のレバーで上下左右に動かせ、路上から路側まで対応可。作業前にスイッチを「ウサギマーク」から「カメマーク」へ切り替え、低速走行モードにします。管内で操縦できるスタッフは5人いて、それぞれメーカーの指導のもと、週2回、累計約80時間の訓練を受けたそうです。ただ訓練当初はうまくゴミが吸えず苦労したとも。拾ったペットボトルが紫外線で劣化し、吸引時に穴があく場合もあるといい、ゴミ回収のたびに回収ドラム内を洗浄しているとのこと。

点検ガジェットに現場の安全対策も

●誤進入車両感知システム・侵入車両AI検知システム

 現場の安全対策の効率化を図るもので、カラーコーン上部にレーザーを設置し、コーンとコーンの間を割って入ってきた車があると、警報が鳴ります。さらに、作業者に取りつけたカメラの映像に車が進入すると検知し警報が鳴るシステムも。カメラの画角内にペンで範囲を描画して「工事範囲」を指定することも可能で、進入したのが車か作業員かは、AIの画像解析が見分けます。


小径間点検ロボット(乗りものニュース編集部撮影)。

●小径間点検ロボット

 排水管の点検で、人が入るのが難しい場所を、ロボットが担当します。全方向カメラと高画質カメラで、ひび割れを検知します。

●鋼鈑桁狭小部点検ロボット(ケーブルカム)

 検査路が設置しにくい鋼桁内部を遠隔操縦で点検します。先に小型ドローンが2本のケーブルを渡し、そこを伝ってロボットが進み、可動カメラなどで観測します。高所作業車が不要になり、時間短縮にも効果があるといいます。

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 NEXCO中日本はこれらをはじめとする技術の投入により「道路管理の手間を4割削減する」という究極目標を掲げ、省力化をすすめるとともに、道路管理者として現場の異変をいち早く検知する「前線監視」も追求していきたいとしています。

 今後さらにこの技術やシステムの実証を進め、将来的には他の道路管理者などへ販売していくことも計画していると、担当者は話していました。