「首都高にしかありません」ちょっとニッチな激レア点検車が集結! 世界に3台の車両も
首都高速道路が学生向けの「点検・補修デモ」を3年ぶりに開催。ふだん見ない施設の点検車も集まりました。それぞれ、際立った機能・性能を持っています。
施設点検「クルマ」で効率化 その驚くべき世界
首都高速道路が2022年10月28日、「首都高点検・補修デモ2022」を湾岸線高架下の辰巳補修基地で開催。次世代を担う大学生へ、最新の点検・補修技術や道路の安全を守る取り組みを披露しました。
このデモは土木工学などを専攻する大学生を対象に、2008年から毎年実施していたもの。コロナ禍を経て、今回は3年ぶり13回目の開催となりました。様々な技術のデモだけでなく、業務用の特殊車両や、パトロールカーなども勢ぞろいしました。
ジェットファン点検車の説明動画より(中島洋平撮影)。
子会社の首都高機械メンテナンスは、黄色に塗られたトラック改造の特殊車両を披露。それぞれレアなだけでなく、キラリと光る工夫がありました。
●ジェットファン点検車
大型トラックの荷台が最大で地上6.7mまで持ち上がる、荷台昇降式の作業車です。その名の通り、トンネルの天井から吊り下がった大きなジェットファンを、取り外すことなく、設置位置まで容易に“上がって”効率的に点検できる作業車です。
荷台(作業床)は左右方向に自動拡張し、作業スペースを拡大できるほか、強調されたのが「アウトリガー」、つまり、車体からアームを張り出して接地させ、高所作業時に車体を安定させる装置の性能です。
このアウトリガー、8.7%という急勾配でも自動張り出しが可能で、作業床を水平に保つことができるとのこと。このスペックは「目の前の1台だけ!」といいます。都市の様々な地下障害物を避けるためにウネウネした線形のトンネルを有する首都高ならではの工夫です。
首都高だけ、世界に3台の車両とは?
他にも特殊な点検車両が披露されました。
●環境配慮型多電源標識車
工事個所に駐車させ、荷台から立ち上がる標識を掲示することで後続車に注意を促す標識車ですが、普通の標識車ではありません。
通常、こうした車両の電源はエンジンを稼働させてクルマのバッテリーから得ていますが、この車両はエンジンオフでも稼働。プラスチック製のドラムを内部から光らせて、抜群に明るい「提灯ドラム」も機能します。
電源は、荷台に積んだ大容量バッテリーや発電機などを使っており、特許技術のハイブリッド電源システムで最適な電源を自動判断するのだとか。アイドリングによる騒音と排気ガスを出すことなく稼働できるため、夜間の住宅街などで、静かな工事環境を作り出せるといいます。
3種類の特殊車両(中島洋平撮影)。
●軸重試験車
日本の道路会社でも首都高だけ、世界に3台しかないであろうという車両が、この軸重試験車です。過積載車両の進入を防ぐため、料金所の路面に設置されている「軸重計」を自動で点検する車両です。
その構造をかんたんにいうと、大型トラックの荷台に、前後に動くウエイト(おもり)が積まれています。デモでは、これを全て後輪側に15トン分スライドさせると、車体の後部がグッと沈み込みました。前輪と後輪にそれぞれ規定の荷重をかけ、走行しながら軸重計の精度を確認するための車両です。
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このほかにも、設備の点検や補修の課題を解決するための様々な車両や道具が披露されました。道路を守るために必要なメンテナンスをただ行うのではなく、その業務をラクにするための工夫で、技術が進歩していくことを実感しました。